ナルトvsサスケに見る「仲間」とは? 岸本斉史インタビュー

アニメ・マンガ

2015/4/7

 連載デビュー作の『NARUTO―ナルトー』が全世界累計2億部の歴史的ヒットとなり、今や日本を代表するマンガ家として世界中にその名を轟かせる、岸本斉史。老若男女の心に訴えかける『NARUTO』の面白さは、一体どこから来るのか。『ダ・ヴィンチ』5月号の『NARUTO』特集では、岸本斉史にインタビュー。「仲間」の表現に潜む『NARUTO』の革新性に迫った。

「忍者なのに、陰に潜むという感じじゃなくって明るくて、金髪だし派手なオレンジ色の服を着ている。“こんなの忍者じゃないじゃん!”とか、“ナルトって名前、ラーメンの具じゃん!”とみんなにツッコまれましたよ。でもね、その時点で、ちょっと気になっちゃってるってことだと思うんです。その人の中に、すでにちょっと“キャラが入ってる”状態だと思うんです」

 長い助走と準備期間を経た1999年秋、24歳の終わりに、岸本は初めての連載『NARUTO』をスタートさせた。もし続いたとしても、全部で20巻ぐらい。「まさかその3.6倍描くことになるとは思わなかったです」と苦笑する。

「最初の頃はとにかく、体力的にきつくって。編集者さんには、こんなにきついなら最初から言っといてよっていうふうに思いましたね。言ってたのに、真に受けてなかったからなんですけどね(笑)。多少体が慣れてきてからも、みなさんもご存じかもしれませんが、『ジャンプ』には読者の人気投票があって、人気がないとすぐ打ち切られる。死神がね、でっかい鎌を僕の首に当てている感じが常にあるんです。最後の最後まで、生き残るために必死でした」

 今でこそ『NARUTO』は、『ジャンプ』の王道とされている。『ONE PIECE』と並ぶ二枚看板として、読者から絶大な支持を集めてきたのは誰もが知るところだ。だが、当時はあまりに新鮮で、あまりに画期的だった。少年マンガの新たな可能性を切り拓き、新たな王道を生み出してみせた作品だった。

 そのひとつが、「仲間」の表現だ。『NARUTO』の世界では、忍者学校の「クラスメイト」が、「仲間」でもある。このにぎやかなチーム感は、いったいどんな発想から生まれたのだろう?

「まず最初に主人公がいて、敵が出てきて、戦った後に仲良くなって、敵が仲間になる。そうやってどんどん仲間が増えていくのが『ジャンプ』の法則だったと思うんです。“強敵”と書いて“友”と呼ぶのが『ジャンプ』じゃないですか。『ジャンプ』ならではの、そういった仲間の感覚が好きだったんですよね。だったら、仲間が増えてる段階からやったらいいんじゃないかと思ったんです。僕自身がね、待ってられなかったんですよ。早くそのシーンを描きたいと思っちゃった。それでクラスメイトは仲間だってことにして、最初からいっぱい仲間を出したつもりだったのに、初代の担当さんが〝もっと増やせ〞と言い出して。中忍試験以降はもう、キャラクターだらけで大変なことになりましたよ、おもに作画が(苦笑)」

 キャラクターも抜群に魅力的だったが、緻密な伏線が張り巡らされたストーリー展開にワクワクさせられ、「忍び五大国」の世界観は探究心をあおられる。驚きなのは、連載開始時は8話までしかストーリーが決まっていなかったことだ。ただし、ラストシーンをどうするかだけは最初から決めていた。ナルトVSサスケのバトルだ。この部分にも、「仲間」の表現の革新性が宿っていた。

「もともとは仲間だったやつが、途中で敵になってしまう。そいつと最後に戦うっていう展開は、少年マンガではあまりないんじゃないかと思ったんです」

 その展開から逆算して、まずはふたりの絆が深まる様子を描き、やがて決別の瞬間を記録する(26巻)。そして、どうしようもないほど心の距離を隔てたふたりが、ついに再会し拳を交える姿を最後に描く――。

「離れていたぶん、やっと元に戻った時に、ふたりの間に特別な感情が生まれるはず。そこは初めから描きたいと思っていたんです」

きしもと・まさし●1974年、岡山県生まれ。1996年、第132回2月期ホップ☆ステップ賞にて佳作を受賞し、デビュー。1999年から2014年11月まで『NARUTO –ナルト–』を『週刊少年ジャンプ』で連載、世界各国でテレビアニメ化され、空前の大ヒットとなった。

NARUTO―ナルトー(全72巻)』岸本斉史 集英社ジャンプC 390~429円(税別)
五大国の一つに数えられる「火の国」に存在する、忍たちが暮らす「木ノ葉隠れの里」。
忍術学校(アカデミー)の問題児、ナルトは、里の長「火影(ほかげ)」の名を受け継いで、先代を超える忍者になることを夢見ていた。だが、そんな彼の出生には大きな秘密が……。
1999年から2014年まで15年間、全700話の連載で世界中の少年少女とマンガファンたちを熱狂の渦に巻き込んだ、全世界累計2億部突破の伝説的少年マンガ。

取材・文=吉田大助/『ダ・ヴィンチ』5月号 “愛”と“継承”の物語『NARUTO―ナルト―』特集より一部抜粋

ダ・ヴィンチ

『ダ・ヴィンチ』2015年5月号

KADOKAWA メディアファクトリー
定価650円(税込)

・第1特集 “愛”と“継承”の物語『NARUTO―ナルト―』
岸本斉史描き下ろしイラスト
岸本斉史×堀越耕平
竹内順子、杉山紀彰、中村千絵
・第2特集 男 アラーキーの裸ノ顔
北野武×荒木経惟