ラストではボロ泣き!『NARUTO』歴代担当編集が選ぶ名シーン

マンガ

更新日:2015/4/7

 15年にわたり続いた、『NARUTOーナルトー』の大連載。その偉業を陰で支え続けたのが、『週刊少年ジャンプ』編集部の、歴代担当編集者たちだ。『ダ・ヴィンチ』5月号の『NARUTO』特集では担当座談会を開催。『NARUTO』の歴史を振り返っている。

●座談会メンバー
初代担当編集 矢作康介さん 
3代目担当編集 本田佑行さん
4代目・現担当編集 大槻 譲さん

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――『NARUTO』前半で特に印象に残っているエピソードを教えてください。

【矢作】 「波の国編」の、再不斬(ザブザ)と白(ハク)ですね。橋の上で白っていうキャラクターが、再不斬をかばって死んでいくんですよ。そのことに対してナルトが、再不斬に詰め寄るんです。そのシーンがもう、僕的にはものすごくグッときたし、読者からも猛烈な反響がきたんですね。「あっ、これでまだ連載続けられる」と思った瞬間なので、印象に残っています。

【大槻】 僕は前半だと、「死の森」で大蛇丸と会ったサスケがビビって、大事な巻物を渡そうとしちゃうところ。そこでナルトが渡すなと言って体を張って止めて、サスケにかつて言われたセリフを言うんですよ。「ケガはねーかよ、ビビリ君」。前にサスケがそのセリフを言った時は、ナルトをバカにして言ってるんですけど、ここでは違うんです。ナルトがサスケを奮い立たせるための言葉になっているんですよ。同じセリフなのに、意味がまったく違う。特別な快感がありましたね。

【矢作】 いいマンガって、前に振ってあったりするんですよね、ちゃんとね。それって長くやってるからこそできることでもあるんですよ。登場人物それぞれがちゃんと自分の人生を生きているからこそ、過去にした言動がちゃんと伏線になるんです。

【本田】 前半でいうと僕は……さっき岸本さんにマンガの作り方を教えていただいたって言いましたけれども。実は岸本さんが、自分のプロットの作り方をまとめているノートがあるんですね。担当が代わった時に、そのノートを開いて直々にレクチャーしてもらったのが、綱手(ツナデ)のエピソードでした。「これが欠落者で、これが代弁者で、これが否定者で……」と。その後で家に帰って「綱手編」を読み直したら、「そういうことだったのか! すごいすごい!!」となったんです。

【矢作】 あのエピソードはまさに、「もう誰に担当が代わっても大丈夫だ」と思ったところですね。あれを描き切った時に、もうこの人は素晴らしい作家になったんだと思ったんです。特にね、最後のシーンがすごい。ぜひたくさんの人に読んでもらいたいエピソードです。

――『NARUTO』後半で印象に残っているといえば……やはり、ラストの対決シーンですよね。

【大槻】 サスケが最後に言う「○○○○○○○」ってセリフは、『NARUTO』を最初から読んできた人なら、格別な感慨があると思います。担当的にも、溜めて溜めてようやくサスケが……というシーンで、もう下書きがFAXで送られてきた時点でボロ泣きしました。深夜一人の編集部で、締切がヤバ過ぎる…というのも忘れて(笑)。

【本田】 ラストの「血液の握手」には、ナルトとサスケの関係性の終着駅が見えて……今思い出しても震えますね。言葉を使いながらも、言葉じゃないところで登場人物たちの思いを伝えていくっていう演出は、マンガとして一番面白いところだと思うんですよ。すごいものを見たなって思いました。

【矢作】 僕ね、『NARUTO』の連載が始まる時に、『ジャンプ』っぽい「終わらないキャラクター」を描くんじゃなく、「人生を最期まで生き切る」キャラクターを描いてほしいって話をしたんですよ。本人も「すべてを描き切りたい」と言っていて。その言葉通りに、まっとうしましたよね。しかも戦いが終わった後で、その戦いの先にね、子どもたちが出てくるっていうのは岸本先生らしいですよ。優しい話じゃないですか。次の世代に思いが受け継がれていく、希望の話になっている。このマンガ家にしか描けない、完璧なエンディングだったと思います。

NARUTO―ナルトー(全72巻)岸本斉史 集英社ジャンプC 390~429円(税別)
五大国の一つに数えられる「火の国」に存在する、忍たちが暮らす「木ノ葉隠れの里」。
忍術学校(アカデミー)の問題児、ナルトは、里の長「火影(ほかげ)」の名を受け継いで、先代を超える忍者になることを夢見ていた。だが、そんな彼の出生には大きな秘密が……。
1999年から2014年まで15年間、全700話の連載で世界中の少年少女とマンガファンたちを熱狂の渦に巻き込んだ、全世界累計2億部突破の伝説的少年マンガ。

取材・文=吉田大助/『ダ・ヴィンチ』5月号 “愛”と“継承”の物語『NARUTO―ナルト―』特集より一部抜粋

ダ・ヴィンチ

『ダ・ヴィンチ』2015年5月号

KADOKAWA メディアファクトリー
定価650円(税込)

・第1特集 “愛”と“継承”の物語『NARUTO―ナルト―』
岸本斉史描き下ろしイラスト
岸本斉史×堀越耕平
竹内順子、杉山紀彰、中村千絵
・第2特集 男 アラーキーの裸ノ顔
北野武×荒木経惟