女が男の指を見るのは「生殖能力の品定め」…動物行動学が導く、色気・魅力・相性の正体とは!?

科学

2015/4/4

 女を何十年とやっていると、その間に必ず耳にする、女についての慣用句的なものがある。そのひとつが「女は男の指を見る」というものだ。自分自身の経験や仲の良い“こじらせ女子”との恋バナを思い出すと…確かに「あの人の手がセクシーなのよ」と言い放つオンナ友達は複数いる。しかしそれはなぜ? 根拠はあるのだろうか。

 そう思って本屋で探してみると、その名もズバリ『女は男の指を見る』(竹内久美子/新潮社)を発見した。何でも、数々の実験や最新データをもとに動物行動学で読み解いているらしいので、信ぴょう性が高そうである。読んでみると、ほかにも興味深い(恋バナのネタになりそうな!)内容がたくさんあるではないか。今回は本著の中から筆者が特に面白かったものをいくつか紹介したい。

人間は、遺伝子が自らのコピーを増やすために作った生存装置

 本著は、動物行動学者であるリチャード・ドーキンスが唱えて物議を醸した「我々は、遺伝子が世代を超えて乗り継いで行くための乗り物である」という考え方を軸として展開されている。この考え方によるならば、「人間の行動は遺伝子に操られており、生物の自己や存在意義などはどうでも良い」と極論することも出来るわけで、そうなるとやはり提唱された当時も、自尊心が強かったり強烈な自我を持つ人、また宗教家などからは批判されたらしい。しかし著者は生物の歴史を考えると、そう考えれば説明がつくことがとても多いと語っている。

女が男の顔よりも指を見るのは「生殖能力の品定め」

 本著で紹介されている「女性が気になる男性のパーツ」ランキングを見てみよう。1位はやはり「手(指を含む)」。2位「目」、3位「腕、二の腕」と続く。別のアンケートでも、「指」は「服を着ている状態で見えるパーツ」の1位だったという。

 ここで著者は、どうしてそう感じるのか…という疑問に答えるため、イギリスの心理学者、ジョン・T・マニングの論文を引き合いに出している。いわく、受精卵が細胞分裂を繰り返して体の各部を作っていく際、その指示を出す「HOX遺伝子」というものがあるのだが、指と生殖器は同じHOX遺伝子によって形作られるため、女性は指を見て生殖器の出来上がり具合、ひいては生殖能力を品定めしているのだろう、というのである。特に関係深いのが薬指の長さで、薬指が長いほど男性器が長く精子が多い、というデータもあるそうだ。

 一方、男性はというと、「男性が気になる女性のパーツ」の1位は「胸」、2位「目」、3位「お尻」、4位「脚」…と続く。しかし4位の「脚」に、9位「ふくらはぎ」と13位「足首」、18位「ふともも」の得票数を足し、「足全体」で見てみると、2位に躍り出るという。そして実は、赤ちゃんが大好きな母乳は、胸ではなくふとももやお尻の脂肪から作られるというから、男性も足を見て“子どもを産んだらよく乳を出してくれそうか”という観点で、女性を無意識のうちに品定めしているのかも知れない。

「ハゲ」の男性は、胃がん・結核に強く、気管支がん・肺気腫になりにくい

 ダイレクトな呼び方で失礼するが、ハゲの男性は昔から「エロそう」「絶倫」などのイメージを持たれることが多い。そしてそうした評価は、男性がハゲる原因のひとつに男性ホルモンの代表格であるテストステロンが多いことが挙げられるので、大方間違いではない、と本著には書かれている(ちなみにフランスでは、あまりにハゲる男性が多いためか、「生え際の後退はハゲではない」と認識されているそうだ)。

 さて、見た目からして“非モテ”だ、と悲観されがちなハゲだが、ここで朗報がある。実はハゲの人は、現代日本人の死亡原因上位に君臨する「胃がん」に強いことが、ある大学の研究によって分かったというのだ。これは、女性ホルモンであるエストロゲンに胃がんについての発がん性があり、テストステロン・レベルが高い(=ハゲやすい)人ほど、エストロゲン・レべルが低いことに由来しているのだとか。さらにハゲの効用はこれだけにとどまらない。結核に強く、気管支がんや肺気腫にもなりにくいことが分かっているというのだ。ただし、てっぺんハゲの人は、心臓病になりやすいそうなのでご注意あれ。

女性は自分と違う免疫の型の男性を、「良い匂い」と感じている

 本著には、異性に魅力を感じる要因として、遺伝子6つの組み合わせからなる免疫の型「HLA」が関係しているのではないかと書かれている。HLAは、臓器移植で「型が合うかどうか」という際によく出てくるものだ。HLAの遺伝子がなぜ6つあるのか、そしてそれらがどんな役割をしているのかはまだ解明されていないものの、ある人間のHLAの遺伝子は両親からそれぞれ1セットずつ受け取ることがわかっているのだそうだ。そして、そのバリエーションを多く持っているほど免疫機能が高まり、ひいては子孫を残せる可能性が高まるというわけである。

 そこで女性は、自分とはなるべく違う型のHLA型を「匂いで嗅ぎ分け」、選び出そうとしているという。スイス、ベルン大学の研究によると、「自分が持つHLA型とかけ離れた型を持っているほど、良い匂いである」ことが分かったそうだ。そのため、自分にとっては良い匂いでも、他の人にとっては良くない場合もあるのだとか(ただしこの匂いは、香水などとは種類が違い、どちらかと言うと「クサくない」というレベルのものということなので、あしからず)。

 本著にはほかにも、まさに“遺伝子の企み”とも言うべき事例が多数収録されており、とても興味深い。もし、本著に書かれているように私たちが「遺伝子に操られている」としても、まったくの無意識で操られるより、せめて本著の内容を頭の片隅に置いて時々は自分の行動を振り返ってみることをオススメしたい。

文=増田美栄子