生後3カ月の赤ちゃんでも美人を見分けられる! 人間が感じる「美しさ」のナゾ

科学

公開日:2015/4/5

 「赤ちゃんも美人が好きらしい」。そう確信したのは、会社の同僚で5~6人の若い女性が集まるランチパーティーに、うち一人が3歳になる子どもを連れてきたときだ。

 和食のおしゃれランチが一段落して雑談に花が咲いている間、好奇心旺盛なその男の子は母親の元を離れて、お姉さんたちに可愛がられるままキャッキャしながら部屋中を歩き回っていたのだが、特に一人の女性ばかりに近寄っていく。でもその女性は子どもが苦手だったはず。案の定、笑ってはいるけれども、女の子をあやす手つきがどことなくぎこちない。しかし、その女性というのは元秘書室勤務の社内でも有名な美人。アーモンド形の大きな目が特徴的で、目鼻立ちが実によく整っていた。ほかの場所でも、別の子がその場で一番の美人に寄っていく姿を何度も見ていて、残念ながら美人ではない私は「ははーん」と思った。

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 『「美しい」って何だろう―あなたは何を美しいと感じますか』(中嶋尚志/風詠社)では、美を感じる心とは何かを、脳科学、神経科学、心理学、医学、さらには歴史学などさまざまな分野の研究書から、楽しくわかりやすく探求する。

 本書によると、やはり赤ちゃんも美人、美男というものがわかるらしい。アメリカ人女性心理学者のジュディス・ラングロワがこんなおもしろい実験を行っているという。

「人々の顔を映したスライドを数百枚用意し、まずは大人たちにそれぞれの魅力の度合いを評価してもらった。つづいて彼女は同じ写真を生後三か月と六か月の乳児たちに見せた。すると彼らは大人が高い評価をつけた顔を、より長いあいだ見つめた」

 ラングロワは、この実験結果から乳幼児は美しさを感知できるのではないかと結論づけている。生まれてそれほど日の経っていない赤ちゃんが大人と同じように認識するということは、美しさとは「こういうものが美しい」と学んで理解していくような後天的なものではないということだろう。例えば、平安時代に下膨れの顔がもてはやされたように、かつて中国で纏足が盛んに施されたように、その時々によって美人の条件はあるけれど、社会や時代に左右されない普遍的な美しさというものがあるようだ。では、人は何をもって普遍的な美しさを感じとっているのだろうか。

 同書に紹介された発達心理学・神経心理学の永江誠司氏によると、生物が美しさを感じ取るのは生存に関わっているためという考え方があるそうだ。どういうことかというと、生物は、自ら生存し、子孫を残すための重要な情報を見つけ出そうとする。それというのが動物の身体の色、匂い、声などで、個々の特徴をアピールするために発情期になるとそれらが変化する。こうした変化を「美しい」と感じるのだという。

 人間は五感の中でも視覚が最も発達し、すべての感覚情報の中で約7割を占めているという。だから、人間にとって“形”は重要なのだろう。大人になるにつれて“形”が整い、アピール性の高い美しいと思われるものに変化していくというわけだ。

 赤ちゃんに気遣いや遠慮はない。素直に美しいものに突進していく。そこで図らずも始まってしまう美人選びで傷つきたくなければ、流行に左右されない美しさを心がけて出かけることが賢明かも。

文=佐藤来未(Office Ti+)