Facebookをやったら周囲にイラッとされるのはどっち? 紫式部と清少納言、平安の才女ふたりが現代を生きたら… <作者インタビュー後編>

文芸・カルチャー

2015/4/9

本日もいとをかし!! 枕草子』(KADOKAWA)で愛すべき才女、清少納言=ナゴンの魅力が、新刊『人生はあはれなり… 紫式部日記』(同)では紫式部=シキブの繊細であるがゆえのマイナス思考が、それぞれをひも解かれた。著者であるイラストレーターの小迎裕美子さん、監修の赤間恵都子さん(十文字学園女子大学文芸文学科教授)の話を聞けば聞くほど、1000年以上前に生きたふたりの女性への共感が止まらない!

>>前編を読む 「紫式部はネガティブ・マインドなネクラ女子だった!? 『人生はあはれなり… 紫式部日記』が描く等身大の姿に超共感」

――ナゴンを見ていると、バブル期を謳歌した世代の女性を連想します。自己肯定感が強く社交的で、怖いもの知らず。対してシキブは、その後の世代の女性たち。自意識は強いのに自己肯定感は低く、内向的で、〈こじらせ〉ている……という傾向が共通しているように見えました。下の世代が、バブル期の女性を見て「自信満々でいいなぁ」と思うのと同じく、シキブもナゴンをうらやんでいる部分はあったのではないかと感じるのですが。

小迎裕美子さん(以下、小)「ナゴンが去り、その評判だけが残っていた宮中にシキブは勤めていたわけですから、余計に意識しちゃうところはあったでしょうね。ふたりとも早くから文学の才能を開花させていましたが、それぞれの親の対応はまったく正反対でした」

「こうした境遇を考えるとシキブの自己評価の低さも納得ですし、天真爛漫に才能をオープンにするナゴンにイラッとくる気持ちもわかります。たとえば、ナゴンっていまでいうとFacebookに気の利いたことを書いて、〈いいね!〉があってもなくてもケロッとして気にしないタイプですよね」

――それ、たしかにイラッとしますね(笑)。

「見る側のコンディションもあるのかな。私はどうしてもシキブ・マインドで見てしまうんで、友人が何気なくタイムラインに載せたものを『これって自慢だよね……』と見ちゃうんですけど、自分もポジティブな気持ちでいるときはそんなふうにはならない。でも、他人が〈ひけらかし〉と受け取るかもしれない、イラッとするかもしれないと考えると、何もアップできなくなりますよね。シキブもそういう性格だったと思うんです。だからシキブがいまの時代に生きてSNSをやるとしたら、鍵をかけてひっそりと……いえ、裏アカウントを作ってネガティブな胸の内を書きこんでいそう。そのわりに、人からの評価をかなり気にして、しょっちゅうエゴサーチしちゃったり」

――これだけ才覚のある女性が、いまの時代を生きていたら……という想像は楽しいですね。シキブが現代の日本女性たちを見たらどう感じると思われますか?

赤間恵都子さん(以下、赤)「まず、なんといっても女性の地位向上に衝撃を受け、現代に生まれたかったと思うでしょう。女性が自立し、家や世間体にとらわれる必要もほとんどない自由な時代が来るなど、当時は想像もつかなかったでしょうから。同時に、平安時代より現代の女性たちの方が、さまざまな人生に直面するぶん悩みが複雑になっていることにも驚くかもしれません。そして、せっかく女性が自分で自分の人生を選び、変えることが可能な時代に生まれたのだから、がんばって生きてほしいと願うのではないでしょうか」

「一方で、昔もいまも変わらないと思わされることも多いですよね。ナゴンみたいな女子もいれば、シキブみたいな女子もいる」

「たしかに源氏物語でシキブが描いた、光源氏はじめ登場人物たちの恋愛や親子の情愛、愛する者との死別……。人間として、人生で経験する苦しみは昔もいまも変わらないですね。シキブもそう感じるだろうと思います」

――シキブ自身も人生のなかでたくさんの離別、死別を経験しています。彼女の人生は幸せだったといえるのでしょうか?

「そうした別離も含め、人間関係に悩み、人一倍生きづらさを抱えていたシキブは精神的にとても大変だったと思います。それでも、当時の身分社会で、中流とはいえ貴族の家に生まれ、相当な教養を身につけて宮中にも出仕し、好きな物語を思うぞんぶん執筆して人生をまっとうした点では、彼女なりに悔いはなかったのではないかと思っています」

――シキブやナゴンにとどまらず、この時代を生きた魅力的な女性は、本書にも登場します。和泉式部、赤染衛門……次はどんな女性を描いてみたいですか?

「和泉式部は恋に生きた女性なので、私にはむずかしいかもしれませんね。藤原道綱母も『蜻蛉日記』を見ると男女の愛憎劇という側面が強いし。その藤原道綱母の姪にあたる文学少女、菅原孝標女は『更級日記』を残していますが……。次が誰になるかは、まだ私にもわかりません(笑)」

>>前編を読む 「紫式部はネガティブ・マインドなネクラ女子だった!? 『人生はあはれなり… 紫式部日記』が描く等身大の姿に超共感」

取材・文=三浦ゆえ