「おじさまとお付き合いすることが多い」 ―真のロリィタに迫る!

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/20

「ロリィタは“まがい物”を嫌うんですよ」。ロリィタ趣味の筆者の知人は言う。原宿でよく見かけるような、レースをたっぷりあしらった服。傍目から見ると、どれも同じに見えてしまうが、ロリィタたちの中には明確に「有り」「無し」があるらしい。だが、一冊まるごとロリィタの好む服、アクセサリー、店を詰め込んだ『ロリィタの聖地巡礼手帖in東京 お買い物&観光&デェト』(東京ロリィタ倶楽部:監修/実業之日本社)を読んでみても、彼女たちの守りたい世界観の基準がどうも分からない。そこで、ロリィタの生の声を聞いてみた。

――ロリィタというと、メイド服のようなものがまず頭に浮かぶのですが、『ロリィタの聖地巡礼手帖』を見ると、もっと甘めな色合いや柄物が多くて、イメージが変わりました。

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ロリィタT子さん「むしろ、私はロリィタとしてメイド服を着ることはないです。コスプレイヤーとロリィタは違います」

――コスプレ=まがい物っぽいから嫌、ということなのでしょうか。

ロリィタT子さん「ブランドで言えば、BABY,THE STARS SHINE BRIGHT、Angelic Pretty、Innocent World、metamorphose temps de filleあたりが特に人気かと思います。名前を出すのは控えますが、安っぽくて嫌がられるブランドもあります。実際にリーズナブルではあるんですが、あれをロリ服とは認めたくないです」

――お金持ちじゃないと踏み入れられない世界なのですか?

ロリィタT子さん「全然そんなことないですよ! 服につぎ込む比率がおかしいだけです(笑)。レースやフリルを買ってきて自作する人もいますし」

――『ロリィタの聖地巡礼手帖』に、サンリオ系の施設やメリーゴーランドが掲載されていますが、こういうのも“ロリィタジャンル”に入るのは意外でした。

ロリィタT子さん「サンリオもメリーゴーランドも、ロリィタはたいていどっちも大好きだと思います! サンリオならどれでもいいわけじゃないですが、私はキキララ、マイメロ、シナモロールあたりの、お菓子が似合いそうなパステルカラーのキャラクターに弱い傾向があります。メリーゴーランドに関しては、可愛さや美しさの中に、妖しさを感じるものが好きだからでしょうか。ほかには、螺旋階段、時計(懐中時計)、歯車……、なぜかぐるぐる回るものばかりですね(笑)。グルーミーや球体関節人形などの、毒、残虐性、異様さ、異常さを感じるものも人気です。

ロリィタのジャンルごとに好まれるモチーフをまとめると、だいたいこんな感じかなと思います。

・甘ロリ:王冠、鍵、リボン、トランプ、アリス、ティーセット、ハート、時計、うさぎ、くま、お菓子、お城、本、月、薔薇、音符
・ゴスロリ:プラスで十字架、血、包帯、眼帯など、黒猫、コルセット、手錠
・クラロリ:よりクラシックなものを好む

ちなみに、甘ロリは“陽のふりした陰”、ゴスロリは“陰を前面に押し出した陰”というイメージです」

――お出かけスポットとして、喫茶店が多く挙げられていますが、どのように過ごすのでしょう?

ロリィタT子さん「ロリィタたちで集まって、お茶会とかしますよ。あと、紅茶やハーブティー、ケーキを楽しんだり。ちなみに、本に載っていた中で、執事喫茶は唯一微妙かなと私は思いました。本物の執事には憧れても、執事喫茶にいるようなコスプレ執事にはときめかないです」

――ごっこ遊びのイケメン執事よりも、本職のおじさま執事、ということですね。

ロリィタT子さん「実際に、ロリィタはおじさまとお付き合いすることも多いです。ロリィタは“姫扱い”を求めているところがあるので、優しく包み込んでくれるおじさまに惹かれがちなんだと思います」

とにかく本物に対する執着心、これがロリィタの一つのキーワードであることは間違いないようだ。本書に出てくるロリィタ服を着こなしているモデルは、じっと前を見据えたすまし顔で、皆それこそ本物の人形のよう。“大人ロリィタ”代表としてコメントを寄せている宝野アリカさんは、こう語っている。「自分だけは汚れぬ少女でありたい、と思ったことのあるロリィタのあなたには、俗世の醜さはもうよくわかっていることでしょう」。

T子さんの証言から見えてきたロリィタの輪郭、そして、『ロリィタの聖地巡礼手帖』の1ページ1ページから感じ取れるもの、これらを合わせて、勝手な解釈をするならば、ロリィタたちは俗世に絶望し、自らを現実から限りなく離して“作品化”したいのかもしれない。

取材・文=朝井麻由美