「大人計画番外&野外公演」!? 『ジヌよさらば~かむろば村へ~』

映画

2015/4/11

 松尾スズキの創作意欲が高まっている。演劇活動はもちろんのこと、10年ぶりとなる長編小説『私はテレビに出たかった』を先頃完成させ、エッセイストとしての最高傑作『現代、野蛮人入門』も上梓した。そしてこの春、およそ8年ぶりに監督&脚本を手掛けた映画『ジヌよさらば~かむろば村へ~』が公開される。原作は、『ぼのぼの』で知られるマンガ家・いがらしみきおの隠れた傑作『かむろば村へ』だ。都会で銀行員として働いていたものの、お金アレルギーになってリストラされた主人公が、「限界集落」認定スレスレの田舎に移住してくる。ジヌ(銭)は使わず生きる! 気高い理想とは裏腹に、現実では周囲に助けられてばかり。そのかわり、彼なりに、できることをする。ジヌが介在しなくなったぶん、他者との間の思いの貸し借りがダイレクトに感じられるのだ。

 松尾は監督デビュー作『恋の門』で白羽の矢を立てた、松田龍平を再び主演に招いた。ちょいムカつくけれど憎めない主人公を、硬軟入り混ぜた演技で見事に演じ切っている。脇を固めるのは、松尾が主宰する劇団「大人計画」の面々だ。これまでの映画作品は、演劇から離れようという意思があったのではないか? 今回は、「大人計画番外&野外公演」の趣がある。面白ければ、映画だって演劇だってどっちだっていいじゃないか。その開き直りっぷりに、50代を迎えた松尾スズキのブレイクスルーを感じた。

文=吉田大助/『ダ・ヴィンチ』5月号「出版ニュースクリップ」より