男性はなぜ風俗へ行く? 『男しか行けない場所に女が行ってきました』田房永子さんに聞く【インタビュー前編】

社会

更新日:2017/4/10

 “男しか行けない場所”と聞いて、なにを思い浮かべるだろうか? いかがわしいお店? いかがわしいって、つまり風俗? そう。風俗だ。でも風俗という場所について、 「(男たちが)そこで何をしているのか。女たちはあまり知らない。教えられることなく、『男がそういう場所に行くのは当たり前』『それを許すのが賢い女』と思いこまされる。本当にそうなのだろうか。今こそ知って、考えたい」(男しか行けない場所に女が行ってきました

 この本のタイトルを初めて見たとき、好奇心旺盛な女性が風俗に潜入して「キャー!こんなエッチなことしてるのー!? おちんちん丸出しなのー!? イヤー!」と目を手で覆いつつ指と指の間からガン見、というのを想像した。しかし著者の田房永子さんは、24歳の頃から男性向けのエロ本で、風俗店などを取材してレポートを描いてきた漫画家。男たちの男たちによる男たちのための風俗現場を、ある種冷ややかな目で観察している。そんな田房永子さんに話を聞いてきた。

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>>後編を読む「『男しか行けない場所に女が行ってきました』の根底にある根深い社会問題」

――今年2月の発売から2カ月半が経ちますが、反響はいかがですか?

 男性は、「女性からこういう風に見られているんだと、初めて知った」という声が多いです。桃山商事の清田さんが、「自分の後姿を鏡で見せられているような気持ち」と言っていました。「目からうろこ」という感想がとても多いです。

――女性は共感する方が多いみたいですね。

 「怒りが触発された」という人もいるし、「こんなに風俗の種類があるって知らなかった」という人もいるし、この本のテーマである「社会は男性中心に作られている」という点に気づいたとか共感してくれる声が多いです。

――本書の中には様々な風俗店が出てきます。オナニークラブ、ドール専門風俗店、富裕層スワッピングパーティー……。中でも一番、反響があったのは?

 「密着型理髪店」です。普通の理髪店なんですけど、店員さんが全員女性で、タイトなミニスカートにピチピチの白シャツでお客さんに密着するんですよ。あくまで理髪店なので、お触りは禁止です。顔におっぱいが当たりそうで当たらない、というドキドキを楽しめる。でもそれって、女性からしたら意味不明なんですよね。射精するだけなら風俗へ行く意味も分かるんですけど、そうじゃないから。

男性はなぜ風俗へ行く?

――“男たちは何を求めて風俗へ行くのか?”というところだと、「おっぱいパブ」が男同士のコミュニケーションの場所として機能している、というのが衝撃的でした。そういう発想はなかったです。

 おっぱいパブは厳しくて取材に入れなかったんですが、特徴として、仕事相手の人たちと、2軒目、3軒目のカラオケ感覚で入店できることなんです。おっぱいを触るだけで射精サービスがないので、仕事相手とも行きやすいみたいです。

――私は「おっぱいパブ」潜入取材したことがあるんですけど、ヘンな空間でした。もっと艶めかしいやり取りがあるのかと思ってたんですが、女の子は普通にさっと上半身を脱いで、男性はおっぱいを揉む、みたいな事務的な感じで。風俗で働く女性は、心に闇を抱えていたり、葛藤があるのかと思いきや、そのとき話を聞いた子は「べつになんとも思わないです」とあっけらかんとしていました。

 いきなり「おっぱいパブ」で働くっていうのは意外と少ない、って話を聞きました。最初はキャバクラで働いてて、「もっと稼げる店があるよ」って言われて、おっぱい出すと時給がプラス数千円となって、その次は風俗に誘われるという流れがあるらしいです。それで風俗で知らないおじさんのチンコ触ったりするのいやだからすぐおっぱいパブに戻ったんだけど、今度はAVに誘われて、同じチンコでも男優ならいい、とAVに出てる、という女の子が、本の中にも出てきます。

 生の風俗現場を見てきた田房さんの本に、“風俗がどういう場所かよく知らない”女性読者が共感するのはなぜだろうか? 後編は本書の根底に潜む「男性主導の性」について迫る。

>>後編を読む「『男しか行けない場所に女が行ってきました』の根底にある根深い社会問題」

取材・文=尾崎ムギ子