アート?ワイセツ? ろくでなし子氏が「女性器アート」を始めた理由とは?

文芸・カルチャー

2015/4/15

2014年7月、3Dプリンターで自分の女性器の造形を出力できるデータを配布したとして、「わいせつ電磁的記録記録媒体頒布」の疑いで逮捕・勾留された、漫画家のろくでなし子氏。「自称芸術家」などと報じられても、彼女の活動を知らない者からすれば、その実態は見えにくいものだったに違いない。ろくでなし子氏はどうしてこのようなアート活動に励み、逮捕されるに至ったのだろう。

ろくでなし子氏は著書『ワイセツって何ですか』(金曜日)では、今までの活動や逮捕から釈放までの2週間あまりの出来事を描き出している。彼女は、ずっと「ま●このアート」を作っている(伏せ字にするのは彼女のポリシーに反する行為であり、大変心苦しいが、掲載の都合上、どうかお許しいただきたい)。1,型取り材を練る、2,女性器にあてる、3,石膏に固める、4,色をぬったり、デコレーションをする、ことで「デコまん」というアート作品を作っているのである。ろくでなし子さん曰く、女性器は赤ちゃんが出てくる大事な場所であるのにも関わらず、「性器」というだけでいやらしいイメージを持たれるのはオカシイ。彼女は、女性器をポップで明るく楽しいものとするために活動してきたのだ。

元々、このような活動を始めたのは、漫画家として仕事が行き詰まっていた時だった。「小陰唇縮小手術」という、ま●こを整形する手術を受けることで、誰も経験したことのないことを漫画にしていたろくでなし子氏だったが、次第に描くネタもなくなってきた。そこで、「美しくなったま●この型でもとってみるか」というノリで性器の型を取ってみたのだのだが、この活動に目をつけたコラムニストが「デコまんワークショップをしてほしい」と言ってきたのだ。本人もまさかノリではじめたことを他人に教えることになるとは思わなかったという。しかし、ろくでなし子氏は自分の性器と向き合うことができるこのワークショップを「明るい気分になれる」という参加者の声を聞くうちに「ま●こを通じて人を楽しませるアーティストになろう!」と決意したのだという。

さらなる表現を追求するろくでなし子氏にとって、3Dプリンターの技術は魅力的だった。しかし、3D技術にはお金がかかる。そこで、インターネットによって資金を募り、プロジェクトを支援してもらう仕組み「クラウドファンディング」によって、「わたしのまん中を3Dスキャンして世界初の夢のまんボートを作る計画に支援を!」として、支援を呼びかけたのである。その結果、100万円もの募金が集まり、世界初の「まんボート」を多摩川に漕ぎ出すことに成功。このプロジェクトに3000円以上出資してくれた人たちへの御礼として、3Dスキャンした性器のデータをダウンロードできるURL(7日間限定)をプレゼントした。それは、ダウンロードした人に、そのデータで新たなアート作品を創ってほしいという願いをこめたものだった。

しかし、それから9カ月後の7月12日。彼女は逮捕されることとなる。アートとは何なのか。性器を扱っているというだけでワイセツとなるのか。1951年、文学作品『チャタレー夫人の恋人』が芸術といえるのか、ワイセツなのかが問われた事件が今回の裁判の前例となるようだ。40年前にできた基準で裁かれようとしているということに彼女が違和感を覚えるのも無理はないだろう。

また、「クラウドファンディングに出資してくれた人」にデータを送ったことは確かだが、「クラウドファンディング」を理解しない警察や検事は「不特定多数に送った」という認識でろくでなし子氏を取り調べていく。若者であれば一般的なはずのものに疎い警察や検事の対応には、ろくでなし子氏でなくとも、強い不安を覚えるだろう。

今回のろくでなし子氏の逮捕・起訴は、3Dプリンターの「再現性」に着目して立件されている。3Dプリンターは近い将来、より精巧に現物を複製できるようなものが開発されるだろう。こうした将来をみこし、警察・検察はろくでなし子氏の作品を合法化すると、将来可能になるであろうより精巧な作品もまた合法化してしまうことを危惧しているのである。

アートなのか、ワイセツなのか。今後裁判によりどのような結論が出されるのだろうか。今の時代にあった基準で、正しい結論が出されることを願うばかりである。

文=アサトーミナミ