『進撃』巨人から出るガスは刺激臭? アリエッティの声は高音のマライア・キャリー? 空想科学で理科を学ぶ!

科学

更新日:2015/4/15

 あなたは「自分は文系だ」と決めつけて、理科系の学問に苦手意識を抱いていないだろうか。しかし授業の題材が、『進撃の巨人』や『ONE PIECE』、ジブリ作品といった人気の漫画・アニメ・映画だったなら、興味深く・楽しく学べる(学べた)はずだ。

 『空想科学「理科」読本~学校では教えてくれない!』(柳田理科雄/大和書房)は、1995年に刊行され60万部を売り上げた「空想科学読本」シリーズの、言わば兄弟本。本著では特に「中1理科」の全範囲がまとめられており、漫画・アニメ・映画のなかの現象を科学的に謎解きする内容となっており、既刊のシリーズよりもぐっと参考書度が高くなっている。すべての内容が人気のヒーロー・ヒロインを題材にしているのでとっつきやすく、時には読みながら爆笑してしまうことも…。これから理科を学ぶ子どもはもちろん、“理科アレルギー”の大人にもぜひ読んでほしい1冊だ。

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巨人は「死ぬと毒ガスを発生する植物」!?

 本著の中で、筆者が読みながら想像して思わず爆笑してしまったのが、『進撃の巨人』に登場する巨人に関するものだ。身長3~60メートルという巨体で、人間をパキパキと喰らう凶暴な巨人たち。ヤツらは大砲で頭を吹き飛ばしても2分ほどで再生する。唯一の退治法は「うなじの肉をそぎ落とす」ことで、そうするとたちまち蒸気となって消えるのである。これらをヒントに、本著では科学的に巨人の正体を解き明かしていく。

まず、蒸気について。同著によると、気体は1種類の原子でできた物質(単体)と、2種類以上の原子でできた物質(化合物)に分けられるが、単体の気体が発生するのは光合成などごくわずかしかないので、巨人の場合も化合物の気体が発生していると考えられるという。そして巨人が生物ならその体は有機物なので、消滅する時に発生する気体はアンモニアか二酸化硫黄か硫化水素のどれかだろうと推察されるとのこと。どれも刺激臭のある有毒な気体である。作品中で、人間は高さ50メートルの壁に囲まれて暮らしている。もし二酸化硫黄か硫化水素なら、空気より重いので、扉を開放しないと街中に毒ガスが充満してヤバイ!

また著者は、巨人がうなじを弱点としていることから、そこに植物の双子葉類の茎に見られる維管束(水や養分を吸い上げる管)と同様にものがあるのではないか、と推測している。つまり、巨人はああ見えて植物なのか!?

アリエッティの声は、人間の少女より4オクターブ高い

 ジブリ作品『借りぐらしのアリエッティ』は、身長10センチ程度の少女・アリエッティが、病弱な人間の少年・翔(しょう)と出合い、心を通わせる物語だった。映画の中では、翔の手の上で話すアリエッティは可愛らしい女の子の声をしていたが、「科学的に考えれば、体がここまで小さいと、声の高さもわれわれとは違うはずだ」と本著。それはどんな声なのか?

 音は振動によって伝わる。人間の声は、声帯を震わせ、のどや鼻の空間で響くことで発せられる。そして波長が大きければ低く、小さければ高くなるという。アリエッティの身長は、人間の少女が160センチとするとその16分の1程度しかないので、声帯の大きさものどや鼻の空間も16分の1程度となり、振動数は16倍になると予想されるという。また、音の振動数が2倍になると1オクターブ高くなることから、アリエッティの声は人間の少女より4オクターブ高いと予想されるそうだ。MISIAやマライア・キャリー、フレディ・マーキュリーの音域が5オクターブと言われているので、シャウトしているあたりの声の高さで話しているワケである。

 同著では他にも、『ONE PIECE』の主人公・ルフィの“ゴムゴムの銃”で「フックの法則」(ばねの伸び)を学んだり、ゴジラ、ウルトラマン、仮面ライダー、トランスフォーマーなどを題材に科学の世界へと無理なく入っていくことができる。同著のような本に出合うといつも、「自分が学生の頃にこの本を読んでいたら、人生が変わっていたかも」と思う。だからこそ今、理科に対して苦手意識を持っている子どもたちに、本著をオススメしたい。

文=増田美栄子