連れ去られた女性はどのように生きていくのか? 「アラ・カチュー キルギスの誘拐結婚」

文芸・カルチャー

2015/4/17

  • キルギスの誘拐結婚

「婚活」という言葉を多く耳にする昨今の日本。出会い系サイトやお見合いサイトが多数存在し、言ってしまえば、自分の足を使わずに結婚相手を探すことができる。それが良いのか悪いのかは別として、便利な国には違いない。そんな日本に住んでいる身としては、キルギスの誘拐結婚「アラ・カチュー」という文化は驚きだ。その「アラ・カチュー」に真摯に向き合い、カメラに収める写真家がいる。「ニュースにならない人々の物語」にフォーカスし、国内外で幅広い活動を展開する林典子。彼女の写真展「アラ・カチュー キルギスの誘拐結婚 林典子写真展」が2015年6月24日(水)まで開催されている。

 キルギス語「アラ・カチュー」を直訳すると、“持って去る”という意味である。しかし近年、この言葉が“誘拐結婚”という意味に変わっている。キルギスの人口の7割を占めるクルグズ人。現地の人権団体によれば、クルグズ人の3割の女性が誘拐によって結婚させられていると発表している。“誘拐結婚”は、現在のキルギスでは違法とされているのだが、家族間の問題とされ、犯罪として扱われることはほとんどないという。

“誘拐結婚”がなくならないのは何故か?
どのように行われているのか?
誘拐された上に結婚を受けいれた女性達の心境は?
結婚後、彼女たちはどういった日常を過ごしていくのか?

 林典子はこの現実に向き合い、女性達の“物語”を生々しく写し出す。人生の不条理に折り合いをつけながら、たくましくもしなやかに生きる女性の生きる力を予感させる作品として世界に発表している。写真展では、これらの写真をドキュメンタリーとしてではなく、運命を切り拓く力を持つ、未来への希望、人としての尊厳の証として、見る者に訴えかけている。2014年にはナショナルジオグラフィックより写真集『キルギスの誘拐結婚』を刊行している。

アラ・カチュー
キルギスで行われている婚姻形態の一つで、誘拐婚の一種。男性が求婚する女性を誘拐し、処女を喪失させる、もしくは女性が処女を喪失したと周囲に認識させることで、事実婚としてしまうものである。その歴史は古く、12世紀にイスラム教が伝わったことや、民族間で馬や女性を奪い合う文化に基づいて生まれたとされる。もとは地方の風習であったが、2007年に公開された映画「盗まれた花嫁」の影響で、都市部でも増加傾向にあるという。

林典子プロフィール
Panos Picture(英国のフォト・エージェンシー)所属写真家。国際関係学、紛争・平和構築学を学んでいた大学時代の2006年から2007年にかけ、西アフリカを訪れたことをきっかけに、ガンビア共和国の現地新聞社「The Point」の紙面を飾るドキュメンタリー作家としてキャリアをスタートさせる。

エスパス・クウ■「アラ・カチュー キルギスの誘拐結婚 林典子写真展
会期:2015年4月1日(水)~2015年6月24日(水)
時間:10:00~19:00
入場料:無料
会場:ESPACE KUU 空(エスパス・クウ)大正大学5号館1階
住所:東京都豊島区西巣鴨3-20-1

文=リーズ