ビジネス書に振り回されていませんか? ビジネス書の正しい選び方

ビジネス

公開日:2015/5/1

『読書で賢く生きる』(中川淳一郎、漆原直行、山本一郎/ベストセラーズ)

 9割本、マンガでわかる本、アドラー本など、どんどん世に出るビジネス書。しかし、タイトルも中身もどこか似たり寄ったりの印象を受ける。これだけ似たような内容のものが出続けるのは、中身を読んでも役に立っている人が少ないということを表わしているようにも思える。

 先日発売された『読書で賢く生きる』(中川淳一郎、漆原直行、山本一郎/ベストセラーズ)は、ビジネス書に振り回され続けている人へ向けて賢い読書とはどういったものかを提案する内容になっている。本書から、読書を通して賢く生きる方法を探ってみよう。

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ビジネス書のカモにされている人が多い現実

 本書は阿佐ヶ谷ロフトAで行われたトークイベント「ビジネス書ぶった斬りナイト」のプレイバックと、中川氏、漆原氏、山本氏の読書についての考えで構成されている。
 本書の「ビジネス書ぶった斬りナイト」のプレイバックで漆原氏は「本も一応、商材みたいなもんだから、もちろん売るためのテクニックやマーケティングの仕掛けはあって当然なんです。ただ、ビジネス書で金儲けしようとしている人たちは、真摯じゃないというか。お客さんをカモにしようとしているんですよ」と話し、自分のセミナーや講演会に人を呼ぶためのセルフブランディングとして本を出す著者や、人生に迷っているような読者の足下をみて、同じような内容の自己啓発本をリリースする版元も多いと昨今のビジネス書業界に警鐘を鳴らす。このようなビジネス書にうっかりカモにされない読書術とは一体、どのようなものだろう。

カモにされないために心がけること

 まず、本書でオススメするのは多作なビジネス書作家の初期作品を選ぶことだ。どんな著者でも初期の作品には自分の思いが詰まっているが、何冊も出すうちに出版社や担当編集者も「この人の本は売れるから、なんでもいいから書いておけ」というような発想になりクオリティーは下がるという。また、ビジネス書は実務経験から来るものが多いため、実務から離れて講演や著述業にどっぷりはまってしまうと劣化は避けられないと話す。
 また「書評ブログより同僚のオススメ本」が大事だとも言う。ビジネス書作家、ビジネス書編集者、ビジネス書評ブログと言ったビジネス書界隈の人々は、横で繋がっており友達や知り合いといったパターンが多い。特に「相手を否定したり、ネガティブなことを言わないようにしましょう」といったことが謳われる自己啓発本の世界では、知り合いの本に対してネガティブなことを言わない場合もあるという。

結局は古典が良い

 そして、本書では古典のビジネス書の良さにも言及している。自己啓発本や経営者本など、現在出されているビジネス書の多くが過去に出された本がベースになっている。
 意図的に真似しているかはさておき、似たものも多く、著者も何かしらの影響を受けている場合がほとんどだとも言う。長く読まれ続けていること自体に何かしらの理由があり、価値があるとも書かれており、新しいものを読むなら古典のようにクラシックなものを読むほうが良いという話は、本書の中で何度か出てくる。

 本書では昨今のビジネス書界界隈の問題点や、それに向けて読者がどう解決していくかが書かれている。その内容はどれもこれもがリアルでビジネス書の現場を知っているからこそ語られる本音ばかり。
 最近、ビジネス書に振り回されていると感じている方はぜひ手にとってみてはいかがだろう。賢くビジネス書を読み、仕事に活かす方法が見つかるかもしれない。

文=舟崎泉美