スカウト、風俗、キャバクラ…歌舞伎町の暗部を描く ―綾野剛×沢尻エリカ×園子温で『新宿スワン』が実写化!

映画

2015/5/6

 眠らない街、新宿歌舞伎町。あなたはこの街に対して、どんなイメージを抱いているだろうか。おそらく大半が、「怖い」「危ない」「近寄りたくない」といったネガティブなもののはず。かくいうぼくも、人生でたった2回した訪れたことがないが、通りにたむろするスーツ姿の男たちの目線がやけに怖かったことを覚えている。

 そう、彼らはスカウトマン。といっても、芸能プロダクションのスカウトではなく、キャバクラや風俗、AVなんかで働く女の子を探すための人間だ。そんな彼らにスポットをあてたマンガが『新宿スワン』(和久井健/講談社)。このたび、綾野剛主演で実写化されるとあり、にわかに話題になっている作品だ。

 本作のモチーフとなっているのは、まさに“スカウトマン“という職業のすべて。お金も仕事もないド底辺の生活をしていた主人公・白鳥龍彦が、なんの因果かスカウトマンになり、自分の信念とともに少しずつ這い上がっていくさまが描かれている。

 そもそもスカウトマンという仕事は、どのようにして稼いでいるのか。彼らは自分がスカウトした女の子の働きに応じて、キャバクラや風俗の店側からバックをもらう。バック率はその子の容姿や働きぶりによって異なるが、たとえば10%だった場合、女の子が毎月100万円稼げば、その10%にあたる10万円が彼らの懐に入ってくるのだ。しかも、女の子が店を辞めない限り永久に。だからこそ彼らは躍起になって、“金になりそうな”女の子のスカウトに精を出す。

 ここまで読むと、「女の子がかわいそう…」と思われるかもしれない。もちろん、なかには借金の返済に追われて、仕方なく夜の仕事を選ぶ子たちもいる。しかし、それだけを見て、同情するのは間違っている。彼女たちを見て「かわいそう」と感じるのならば、実際に助けてあげられるのか。守ってあげられるのか。手を差し伸べてあげられるのか。作中でも、お金のために風俗で働き始めた女の子を見た白鳥が、「やっぱりオレは(スカウトに)向いてない」と弱音をこぼすシーンがある。まさに読者の心情の代弁だろう。しかし、そんな白鳥(と、ぼくら読者)の想いは、次のセリフで打ち砕かれる。「もし、あの子に借金があってイヤイヤ働いているとして、お前が助けてやるのか?お前にその覚悟があんのか?」。そう、一時の感情から生まれた同情心は、生きることに必死な者の前ではなんの意味もなさないのだ。

 それから覚悟を決めた白鳥は、夜の世界の暗部に触れていくこととなる。ヤクザに売られていった未成年の子、ライバルであるスカウト会社との縄張り争い、闇金融を営む同僚との激しい抗争…。いずれも、普通に生活をしていたら触れられないようなことばかり。ともすれば、次第にその世界に染まり、スレていきそうだが、白鳥はその名の通り、ある種の白さを失わない。その信念は、第1巻で白鳥が言う、「人として正義の味方でいたい」というセリフに集約されているだろう。果たして、白鳥は歌舞伎町でどこまで自分の想いを貫いていけるのか…。

 映画の公開は5月30日(土)。綾野剛さんのほか、沢尻エリカさんや伊勢谷友介さん、山田孝之さんら実力派の役者陣が名を連ねる。それを束ねるのは、園子温監督。もうこの字面だけで、迫力満点の『新宿スワン』が観られそうで期待が高まる! さて、まずはマンガで、“夜の世界”の予習をしておきますか。

文=前田レゴ