渡辺麻友&稲森いずみ主演ドラマで話題! 原作『書店ガール』最新刊は新たな方向へ展開!

文芸・カルチャー

更新日:2015/5/12

「悔しかったら、私を納得させるPOPを書くことね」
「本を売ることのどこがいけないのでしょうか!?」

 猪突猛進お嬢様・北村亜紀と、アラフォー独身の副店長・西岡理子。2人の書店員が仕事に、恋に戦うドラマ『戦う! 書店ガール』(関西テレビ・フジテレビ系列全国ネット 毎週火曜22:00~)が面白い。空気が読めず空回りしがちだが、本への愛は人一倍深い亜紀を演じるのは、ゴールデン・プライムタイム(19:00~23:00)のドラマ初主演の渡辺麻友(AKB48)。もう一人の主演の稲森いずみも頼れる上司でありながら、恋には不器用な理子を好演している。さらに千葉雄大、大東駿介、田辺誠一といった文系イケメンも続々登場。千葉雄大演じるメガネ書店男子が理子に“でこドン”するなど、女子の心をキュンとさせるシーンも盛り込まれている。

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 原作は、碧野圭の小説「書店ガール」シリーズ。現在3巻まで発売され、ベストセラーとなっている。ドラマとは展開が異なるが、亜紀と理子が時にぶつかり、時に共闘する姿は爽快そのもの。出版不況、相次ぐ書店の閉店、東日本大震災後の書店の役割など、書店の“リアル”に踏み込んだストーリーは、書店員ならずとも胸に刺さるはずだ。

 累計50万部突破の大ヒットシリーズ最新刊が5月12日に発売を迎える。その名も『書店ガール4 パンと就活』。一風変わったサブタイトルに「?」と首をひねるが、ページをめくってさらに「!?」。なんと4巻では亜紀&理子が主役を降り、若手コンビにバトンタッチしているのだ。そう、このたび主人公を務めるのは、新興堂書店の学生アルバイトの高梨愛奈と駅ビル内書店の契約社員・宮崎彩加。成長した亜紀&理子コンビから、20代前半の新たな“書店ガール”へと世代交代を遂げている。

 主人公のひとり、高梨愛奈は亜紀&理子の下で働く学生バイト。友達が就職活動に奔走する中、志望業界を決められず、ひとり遅れを取っている。「書店の仕事は好きだけど、このまま本屋に就職していいのだろうか」という彼女の悩みは、リアルかつ切実。好きな業界だけど、高給も土日休も望めない仕事を選んでよいものか。興味は薄いけれど、しっかり休めて安定した職業に就くべきか。書店業界志望者に限らず、すべての就活生の悩みを代弁する存在とも言えるだろう。

 一方、愛奈と仲良しの宮崎彩加は、駅ビル内書店に勤める契約社員。ある時彼女は、正社員になり、駅構内の小さな新店舗の店長にならないかと打診される。時を同じくして、故郷で書店を営む伯母からも店舗改装について相談を受け、彼女は愛奈とともに伯母が待つ沼津へ。そして伯母宅の隣にオープンしたパン屋の店主と出会い、2人はその真摯でありながら軽やかな生き方に魅了される……。

 就職難、出版不況、地域格差。様々な問題に直面しながらも、2人は自分らしい働き方を模索する。クライマックスでは愛奈が「就活を考える」フェアを企画するのだが、これがもう圧巻! 朝井リョウ『何者』、有川浩『フリーター、家を買う。』、向田邦子『夜中の薔薇』、沢木耕太郎『深夜特急』、松浦弥太郎『センス入門』――。実際のフェアさながらに40冊以上もの書名を挙げ、“働くこと”の意味を見つめ直す機会を与えてくれる。

 正直、今の世の中は愛奈たちのような若者たちにとって生きやすいとは言えないだろう。それでも彼女たちは未来をしっかり見据え、不確かな足取りながらも自分たちの道を歩きはじめる。就職活動に悩む人、働く意味を見失った人、新しいことを始めたい人、本を、書店を愛する人。愛奈と彩加の潔くも清々しい姿は、そんな人たちの背中をそっと優しく押してくれるはずだ。

文=野本由起

書店ガール 4 パンと就活』(碧野圭/PHP研究所)