夜寝たければ、人と話そう―精神科医がすすめる爆睡術とは

健康

更新日:2015/7/6

 日中は忙しく、気がつくと夜更かししている。早起きしたいけれども、朝はつらい。寝つけない。あまり寝た気がしない。寝不足が続いてしまう…などなど。現代人は、眠りに悩みを抱える人が多い。そうした悩み解消には「爆睡術」が役に立つ。

 爆睡、つまり夜ストンと熟睡して、朝スッキリ目覚める。身も心も健やかになれそうだが、むしろ心身を整えることこそが爆睡のカギのようだ。爆睡を誘うのは、体内リズムを整え、夜リラックスすること。現役の医師でもある『爆睡術 「いい眠り」には法則がある』(三笠書房)の著者・西多昌規氏は、指南する。

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そうは言っても眠れない?

 不眠気味の人は、ベッドであれこれ考えすぎて脳を覚醒させている場合が多い。そういう人には「刺激制御法」が勧められるという。要は、「眠れないなら寝なくてもいい」と諦める。具体的には、20分ベッドで眠れなかったら寝室を出て、眠くなってきたら寝室に戻る。これを繰り返すのだとか。ベッドが眠れない場所として意識づけられているので、リラックスしてからベッドに入るようにする。

睡眠不足になったら日中の仮眠で補う。夜眠れなくても気にしない。仮眠時間は15〜30分。それ以上は逆にリズムが崩れてしまうそう。言うまでもないが、自分ではどうしようもないときは専門医に診てもらうのがよい。

禁断の技!? 寝ている場合じゃない時の非常手段

 不眠などではなく、仕事や都合などで短眠を余儀なくされる場合もある。そんな時、役立つのが「アンカースリープ」という睡眠法。船を泊めるときに使用するアンカー(錨)が由来で、ある時間帯にアンカーを下ろすように眠ることで、体内リズムが“漂流”することを防ぐ。

 ある時間帯とは、体温が最も低くなる0時から4時の間。このときに3時間ほど眠るのが効果的なのだそうだ。数十分や1時間などぶつ切り睡眠では意味がない。もちろん、徹夜は思考力も集中力も落ち、かえって非効率的。身体だけでなく精神的にもマイナス要素が大きいと警告する。
アンカースリープなら体内リズムをぎりぎり維持できるのだ。ただし、あくまで非常手段なので、長期間に続けないように。

そもそも昼夜逆転している人に朗報?

 最新の睡眠常識によれば、「朝型と夜型はある程度生まれながらに決まっているという説が有力」だそうだ。しかも、言うなれば夜型の人はムリに朝型にせずとも、毎日それで自分のバイオリズムが合わせられるのなら構わない。仕事をする時間帯も、夜じっくりと考えられる人は、それが集中できる時間帯なのだからそのままでいい。著者は「もっと夜型生活が評価されてもいい」とまで語っている。

 とはいえ、ほとんどの人が実際は、「朝型」と「夜型」のどちらにでも合わせられる「中間型」の可能性が高いそう。必要がなければ無理に朝型にしなくてもよいかもしれないが、夜型と思い込んでいる人も、朝型にシフトできる人は少なくなさそうだ。さらに言うと、30代後半くらいからは、睡眠も“老化”するので、朝型にする方が得策なんだとか。放っておいても老人になれば朝型にはなっていくそうだが…。

現代の生活に原因あり。爆睡を促進するヒントとは

 すでに常識になりつつあるが、やはり寝る前のパソコンやスマホはNG。また、運動不足や人と話さないことも体内リズムを崩す元になるそう。ITが進化して、デスクワークが増え、チャットなどネットでコミュニケーションをする機会が増えていることと、不眠は無関係ではないようだ。

 夜にきちんと寝るようにするには、寝る前にブルーライトを浴びない。ジョギングなどの有酸素運動を日常的に取り入れる。そして、人とお喋りをする。人間は社会的生き物。コミュニケーションを直接とることは、体内時計の調整にプラスに働く。

 ストレス社会の現代で爆睡するには、いかに日中を人として豊かに過ごし、夜にリラックスするかにあるようだ。アルコールは覚醒作用があるとはいえ、楽しくおしゃべりして適度にたしなむのが良いとも言い換えられる。そういえば、寝る前のコーヒーは嫌いではない。これも自分にとってリラックスできるからなのだろう。

文=松山ようこ