最終的には森崎さんのもとで―― 安田顕インタビュー

芸能

2015/5/15

  • TEAM NACS

『ダ・ヴィンチ』2015年6月号では3年ぶりにTEAM NACSを総力特集。7月に開催されるTEAM NACS第15回本公演『悪童』では、脚本・演出を、これまでのリーダーの森崎博之を中心にNACSのメンバーで手がけてきたスタイルから離れ、脚本に古沢良太、演出にマギーを迎えて行われる。

 全員が「演じる」ということに集中して行われることになった『悪童』。その決定についてメンバーの安田顕に聞いた。

  新しいTEAM NACSを見せたい。その扉を開けることは、メンバーにとっても極めて重大な決断であり、さまざまな葛藤をともなうものだったであろう。安田はその過程を、『ダ・ヴィンチ』のために明かしてくれた。舞台作りに対する考え方の違いが、一つのポイントとして浮かび上がる。

「古沢さんとマギーさんにお願いしようというのは、もちろんメンバー全員の総意です。その前に食事の場を設けて、前回の『WARRIOR〜』について話し合いました。僕らの公演でいつも問題になるのが本作り。上がってきた脚本に、毎回かなりメスを入れてしまうんです。セリフも構成も結構ばっさり変える。僕は、それはちょっと違うなと思っていて。セリフの句読点は句読点だし、語尾は語尾。脚本を変えることは、個々のエゴが出るし、僕は役の幅を狭めるんじゃないかと思うんです。最初はちょっと違うなと思っても、何度も稽古を重ねるうちに、<ああ、こういう意味だったんだ>と言葉が自分のものになっていく。それが演じるうえでの楽しみでもある。そうやって舞台で光るのが役者じゃないかと僕自身は、思っているんです。自分の感性だけを押し通していたら、しょせん井の中の蛙じゃないか? 受け入れれば、もっと大きな世界が見えるじゃないですか。TEAM NACSは、まだまだ未熟で何者でもない。皆さんに知っていただかないといけない存在なんです。だから“受け入れること”は絶対に必要だし、『悪童』ではそれができるんじゃないかと思います」

 皆で、ああでもないこうでもないと作っていく芝居。札幌で旗揚げした彼らにとって、最初それは楽しい作業だったはずだ。だからこそ、TEAM NACSにしかできない舞台を作れてもいたと思う。しかし成長を遂げたメンバーは、次のステップへ向けて、もっとその枠を広げたいと感じるようになったのだろう。

「やはり、東京に出て経験を積んだことが大きいですね。仕事に向き合って、いろいろなものを見た。北海道で築いたものを一度解体したわけで、5人それぞれに思いを抱いて当然です。それを経て、<じゃあチャレンジしてみようよ>というのが『悪童』です」

 では、『悪童』はTEAM NACSの転機と言えるのだろうか。

「転機ではないです。あくまで“通過点”。僕としてはTEAM NACSは、最終的には森崎さんの脚本・演出でやりたい。TEAM NACSを作った彼のもとでずっと一緒にいたいと僕は思っているし、ほかのメンバーもそう思ってくれているんじゃないでしょうか。だからゴールはもう決まっているんです。今回もそこへ行くための“通過点”です」

 最後は森崎のもとで――再び安田の深い言葉に心打たれた。

「マギーさんに以前聞かれたことがあるんです。<名刺作るとしたら、肩書き、何て書く?>って。これ、意外と難しい。マギーさんは、自分は役者でも脚本家でも演出家でもない。でも<ジョビジョバのリーダー>なら書けるとおっしゃった。僕も同じ。<TEAM NACSのメンバー>なら書ける。<これが僕の肩書きです>って胸張って言えるんです」

 TEAM NACSの本公演は、つねにチケットが即日完売。“日本一チケットが取れないユニット”と言われている。しかし、安田からは人気へのこだわりは感じられない。

「僕たちも年を取るし、人気はいつか落ちるかもしれません。それでも公演は続けたい。今観にきてくださっているお客さんを大切にしたいです。その方たちの前で命懸けでお芝居をして、また来たいって思ってほしい。それで十分なんじゃないでしょうか。確かに、落ちるのは怖いです。でも、そんなときは器を変えればいいと思うんです。僕らは一度、北海道という器が満杯になって、東京、全国という器に変えた。満杯になると人は誰しもキープしたいと思うけど、新しい器になってまた水を溜めればいい」

『悪童』も、TEAM NACSにとってその器の一つなのかもしれない。

「僕らはまだ40歳前後で先が長い。完成されちゃった人たちなんて誰も興味ないでしょう。『悪童』を気に入っていただけるかどうかはお客さん次第です。でも、<新しいチャレンジをしたんだね。この5人でやると、そこに何かがある。これからも続けてほしい。次は何をやるんだろう>、そんなふうに思っていただけたらうれしいですね」

取材・文=松井美緒/『ダ・ヴィンチ』6月号「TEAM NACS」総力特集より一部抜粋

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<公演概要>
TEAM NACS 第15回公演『悪童』

脚本/古沢良太 演出/マギー 
出演/TEAM NACS

廃墟に集まってくる5人の男たち。幼なじみである彼らは、ある計画を企てていた。彼らにはやらなければならないことがあった。それがどんなに恐ろしいことであっても……。彼らは、みな、悪童――。

●TEAM NACS 第15回公演『悪童』公演日程
【大阪公演】7月15日~20日:森ノ宮ピロティホール
【仙台公演】7月22日・23日:電力ホール
【盛岡公演】7月25日・26日:盛岡市民文化ホール
【札幌公演】7月30日~8月2日:わくわくホリデーホール(札幌市民ホール)
【名古屋公演】8月5日~9日:名古屋市公会堂
【新潟公演】8月13日~16日:新潟テルサ
【福岡公演】8月19日~23日:キャナルシティ劇場
【東京公演】8月26日~9月6日:EX THEATER ROPPONGI

詳細は⇒TEAM NACS公式サイト

ダ・ヴィンチ

『ダ・ヴィンチ』2015年6月号

KADOKAWA 定価650円(税込)

・第1特集 TEAM NACS総力特集
森崎博之、安田顕、戸次重幸、大泉洋、音尾琢真
マギー×古沢良太
・第2特集 朝井リョウのいま
高橋みなみ×朝井リョウ