“TEAM NACSを変える”という密かな野望 音尾琢真インタビュー

芸能

2015/5/18

  • TEAM NACS

 第15回本公演『悪童』を7月に行うTEAM NACS。『ダ・ヴィンチ』2015年6月号では3年ぶりに彼らを特集している。メンバーからメンバーへの推薦本の紹介のほか、メンバー全員へのインタビューも敢行。

 ここでは現在39歳、TEAM NACS最年少の音尾琢真のインタビューを一部紹介しよう。

 メンバー最年少の音尾は、自他ともに認める末っ子体質だ。5人で話をしている時でも、率先して意見を述べることはなく、いつも静かになりゆきを見つめている。しかし、中身は違う。心に熱いものを秘め、“いつかNACSを変えていきたい”という野望も持っている。

「先ほどの吉田松陰の言葉(※人は何をするために生まれてきたのか)じゃないですけど、やるからには何かのためになりたいなという思いがあります。NACSの公演をただの娯楽で終わらせるだけじゃつまらない。見ていただく人の心にしっかりと残るものを作れるユニットにしていきたいんです」

 だが、「現状は、そこに向かっていける準備がまだ整っていない」と冷静に分析する。

 その準備とは……?

「言葉にするのは難しいのですが、分かりやすく言えば、個々の心構え、かな。僕が目指したい方向にみんなが向かいたいかどうかはさておき、その前にまず、全員の心が一つにならなければいけない。もちろんこれは僕自身にも言えることなんですけどね。そのためには、今までのやり方だけではなく新たな引き出しになるようなトライをしていかなければならないのかなって」

 他のメンバーからも語られていることだが、NACSは稽古中、よく脚本の内容に対しての議論を重ねる。それはもちろん、作品をより良くするための作業だ。NACSには、いわゆる絶対的な力と世界観を持った座付作家や演出家がいるわけではない。だから5人がフラットに意見を交わし合うことが、彼らの舞台の基本的な作り方となっている。ただ、経験を重ねた彼らの思いは強くなり、長い討論となる時もある。

「稽古自体の時間が割かれてしまうことになりますから、あまり脚本会議に時間をかけたくないという思いがありますし、そもそも僕は脚本をいじることにも抵抗があるんです。僕は『ホンに納得がいかなくても、まずはやってみりゃいいじゃん』って考えるタイプなんですよね。役者が動いて、脚本を3D化させることで見えてくるものもきっとあるはずですし。ホン読みをし、そこで見つけた粗をすぐさま直していくよりも、そっちの方が演劇的なんじゃないのかなと僕は思うんです」

「それぞれの役者が考える芝居の作り方に違いがある、というただそれだけの話なんですよ」と音尾。

「脚本主義の人がいて、僕みたいにとにかく実践主義の人がいる。5人の役者がいれば、5通りのやり方があるのは当然。ただNACSは、5人それぞれが時間の使い方が不器用(笑)。だから、余計に時間がかかっちゃうんですよね」

 ただ、そうしたなかで、「僕は安田さんと芝居の作り方が似ている気がしますね」と自己分析する。「例えば誰かが脚本に書かれたセリフを指して、『ここ繋がらないんじゃない?』と指摘したとします。だから、変えた方がいいんじゃないかって。なるほどな、と思うんです。確かに初めて見るお客さんのことを考えたら、その方が伝わりやすいよなって思う。でも、同時に僕は、脚本を書いた人の気持ちも考えてしまうんですよね。そのセリフの流れも意図があってのことじゃないのかな?って。僕は、極力変えることをせず、自分の演技で同じセリフでも成立する方法を考えていくタイプなんです。その作業が大好きですし、芝居の醍醐味の一つでもあると思っているので」

 しかし、ここである疑問が。それなら、稽古中の長い話し合いは彼にとって苦痛なのではないのだろうか?

「黙っていることも多いし、元々そんなに話さない、そういう性格なんです。ですが、たま〜に、ストレスに感じることもありますよ(笑)。こう見えて、実はすごく短気なんで。ちょっとしたことでイライラしてしまうこともあります。でも、そのイライラをぶつけても話し合いの発展に繋がらないし、僕の意見をより分かりやすく言葉にしてくれる人が周りにいますから。だから、それほど苦じゃない。

 それに、僕はどうも、ほかの人と引っかかる場所が違うらしくて。周りが『ここ、おかしいぞ!』と話し合ってるところが全然気にならなかったり、逆に僕が変だなと感じる場所が、メンバーにすれば『どこがだよ!?』っていうことだったりする(笑)。要はさっき言った“それぞれの役者の違い”なわけですが。そう考えると、まぁおあいこかなって(苦笑)」 なんとも見事なまでの引きの姿勢。

「そこは末っ子、最年少という体質を最大限に発揮してます(笑)。それに僕は立ち居振る舞いが特別上手なわけでもないんですよ。NACSって、分かりやすい個性とはっきりとした主張を持った人間ばかりですから(笑)。ほんのちょっと引いて見るだけで、どうしたいのか、どうすればいいのかが何となく見えてくるんだと思います」

(※)『吉田松陰の名言 100変わる力 変える力のつくり方』野中根太郎 アイバス出版/発行 サンクチュアリ出版 より

取材・文=倉田モトキ/『ダ・ヴィンチ』6月号「TEAM NACS」総力特集より一部抜粋

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<公演概要>
TEAM NACS 第15回公演『悪童』

脚本/古沢良太 演出/マギー 
出演/TEAM NACS

廃墟に集まってくる5人の男たち。幼なじみである彼らは、ある計画を企てていた。彼らにはやらなければならないことがあった。それがどんなに恐ろしいことであっても……。彼らは、みな、悪童――。

●TEAM NACS 第15回公演『悪童』公演日程
【大阪公演】7月15日~20日:森ノ宮ピロティホール
【仙台公演】7月22日・23日:電力ホール
【盛岡公演】7月25日・26日:盛岡市民文化ホール
【札幌公演】7月30日~8月2日:わくわくホリデーホール(札幌市民ホール)
【名古屋公演】8月5日~9日:名古屋市公会堂
【新潟公演】8月13日~16日:新潟テルサ
【福岡公演】8月19日~23日:キャナルシティ劇場
【東京公演】8月26日~9月6日:EX THEATER ROPPONGI

詳細は⇒TEAM NACS公式サイト

ダ・ヴィンチ

『ダ・ヴィンチ』2015年6月号

KADOKAWA 定価650円(税込)

・第1特集 TEAM NACS総力特集
森崎博之、安田顕、戸次重幸、大泉洋、音尾琢真
マギー×古沢良太
・第2特集 朝井リョウのいま
高橋みなみ×朝井リョウ