「22時~午前2時は睡眠のゴールデンタイム」説に根拠なし! 睡眠の正しい知識とは

健康・美容

公開日:2015/5/21

 なかなか眠れない、早朝に目が覚める、日中に眠くなる…など、睡眠に関する悩み事を持つ人は多い。『睡眠障害のなぞを解く 「眠りのしくみ」から「眠るスキル」まで』(講談社)によると、日本人の約5人に1人が眠りに何らかの問題をかかえており、「日々の心配事やストレスが、本来ならばそれらを解消してくれるはずの睡眠にまで悪影響を及ぼしている」と、著者・櫻井武さんは本著の中で語っている。そしてそれが日常生活を送る上で障害になるほど大きなものになったとき、「睡眠障害」と呼ばれることになるという。

 著者の櫻井さんは、医師・医学博士であり、覚醒をつかさどる神経ペプチド「オレキシン」を発見した睡眠と覚醒のスペシャリスト。本著では、睡眠と覚醒の仕組みとそれに付随して起こる症状を分かりやすく解説したうえで、睡眠を悪化させる心理的要因についても説明している。

代表的な睡眠障害は「不眠症」と「過眠症」の2つ

 人は、睡眠不足なら翌日は眠いし、失恋した時や悲しいことがあった時などに眠れない夜を過ごしたり、楽しい予定の前日にワクワクして寝付けなかったりすることだってある。それらは健康な人にでもよくあること。しかしそれが毎晩続いたり、また日中にいつも眠いといった症状があったりしても、なかなか病気だとは気が付かないことが多く、医療機関で受診するまでに比較的長い時間を要するのが「睡眠障害」という病気の特徴の1つだという。

 また、睡眠障害の症状には様々あるが、代表的なのは「不眠症」と「過眠症」の2つで、睡眠中に異常行動がみられる「睡眠時随伴症」(夢中遊行症、夜尿症、レム睡眠行動障害など)がこれに加わるそう。またほかに、睡眠と覚醒のタイミングに問題がある「概日リズム障害」もあるという。

 夜眠れない「不眠症」の基準としては、以下の4つのうち1つ以上当てはまり、それが週3回、3カ月以上続いた場合とのこと。
(1)入眠障害(寝るまでに1時間以上かかる)
(2)中途覚醒(一晩に2回以上覚醒して、その後なかなか寝つけない)
(3)早朝覚醒(朝の目覚めが普段より2時間以上早く、目覚めた後眠れない)
(4)熟眠障害(ぐっすり眠ったという実感がなく、寝足りなさが常に残る)

 一方の「過眠症」は、日中に仕事などの作業に支障をきたすような眠気を感じるもので、原因として「ナルコレプシー」(睡眠・覚醒パターンの乱れにより、強烈な眠気を感じる)、うつに伴うもの、「睡眠時無呼吸症候群」の気道の閉塞によって睡眠が妨げられた結果として起こるものなどがあるという。

眠りにまつわる俗説は、ウソが多い?

 本当に「よい睡眠」を取るために、言わば“眠りのスキル”を上げたいと考えている人のために、本著では眠りについての俗説の数々を科学的に検証しているので、いくつか紹介してみよう。

【多くの人の体内時計は、平均24時間】

 「1日は24時間なのに、人間の体内時計は25時間なので、そのままだと毎日1時間ずつずれてしまい、やがて夜型にシフトしてしまう。しかし朝になって体に光を浴びるとリセットされ、ずれるのを防げる」という話を聞いたことがあるのではないだろうか。随分と長い間、まことしやかに流布されてきたが、近年になって検証した結果、多くの人の体内時計は平均して24時間だということが分かったそう。ただし、夜中に室内で光を浴びる生活をしていると、常に光に対応するためにシフトした状態となり、体内時計が25時間になることもあるという。ちなみに、体内時計は朝に光を浴びると前にずれ、夕方に光を浴びると後ろにずれるそうだ。

【何時間でも、翌日スッキリ過ごせるだけ眠れればOK】

 世の中には、「7時間半が理想の睡眠時間」「8時間睡眠がベスト」「睡眠不足も身体に悪いが、長く寝すぎるのもよくない、寿命が短くなる」などといった情報が、科学的根拠があるかのように語られているものの、「結論から言ってしまえば、どれも正解ではありません」とのこと。いわく、必要な睡眠時間は個人差が大きく、大部分が6.5~8.5時間だが、4時間で十分という人や、10時間以上眠らないとダメという人も100人に1人程度は存在するという。よって必要な睡眠時間は、「翌日、眠気を感じずスッキリ過ごせるだけ眠ればよい」ということなのだとか。また、60歳以上になると7時間眠れる人は少なくなるそうだ。

【午後10時~午前2時は「睡眠のゴールデンタイム」ではない】

 午後10時から午前2時は成長ホルモンが分泌される「睡眠のゴールデンタイム」で、この間に寝るとお肌に良い!…などとよく聞く。しかしこれも特に根拠があるものではなく、眠りについてから最初の睡眠単位(ノンレム睡眠とレム睡眠のサイクルで、通常、一晩に4~5回繰り返す)で深いノンレム催眠に入れば、何時に眠りについても同じように成長ホルモンが分泌されるのだそう。つまり肝心なのは時間帯ではなく、日中にきちんと覚醒しておき、最初の睡眠単位でいかに深いノンレム睡眠を得られるか、ということになる。

 眠りの質を良くしたいからといって、インターネットで断片的に拾った情報を鵜呑みにすると、自分を追い詰めて「不眠恐怖」の状態に陥ることになりかねないという。もしこの記事を見て自身の睡眠が健全でないと感じたら、ぜひ本著を手にとってほしい。そしてそれでも改善の糸口が見つからない時は、一度専門家に相談してみることをおすすめする。

文=増田美栄子