明智光秀は織田信長の“LINE未読放置”に怒り、本能寺の変を起こした? 抱腹絶倒! ネタ満載! 日本史パロディ本

社会

公開日:2015/5/22

 「歴史に“たら・れば”はない」という言葉があるように、歴史を語る上で「もし~だったら」という仮定を持ち込むことは基本的にタブーとされている。

 だが、以下の「もし戦国時代にメールがあったら……」みたいな「たら・れば」なら、歴史ファンも笑ってくれるのではないだろうか。

差出人:黒田長政<nagamasa@kuroda.tkgw>
件名:東軍への参加のご打診
日時:慶長5年7月25日
宛先:小早川秀秋殿<hideaki@kobayakawa.chkzn>

西軍
小早川秀秋様

はじめまして、私は東軍に所属しております
採用担当の黒田長政と申します。

小早川様の略歴を拝見し、ぜひ東軍に参加いただきたく思い、
今回メールを送信させていただきました

……(以下略)

 このようなバカバカしすぎる日本史パロディを50ネタほど収録した本が、『【至急】塩を止められて困っています【信玄】 日本史パロディ 戦国~江戸時代編』(スエヒロ/飛鳥新社)。著書はユーモア妄想メディア「ワラパッパ」編集長で、本書は同サイトに掲載された歴史ネタをもとに作られたものだ。

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 なお上に引用したのは「『関ヶ原の戦い』で小早川秀秋に送るヘッドハンティングメール」というネタ。黒田長政のメアドのドメイン以下が「kuroda.tkgw(トクガワ)」となっていたり、「東軍に所属しております採用担当の~」とわざわざ会社員風に名乗らせたりする芸の細かさが本書の真骨頂だ。

 同じくメールネタの「木下藤吉郎の『一夜城』築城依頼メール」もスゴい。メールの一部分を引用してみよう。

・城の仕様:添付のエクセル参照(sunomata_1566.xlsx)
・プロマネ:木下
・詳細についてはこの後、関係者をキックオフMTGに招集しますのでそこで共有します

 こんな感じの文言が使われていて、非常にイラッとするのだ。本書は「日本史パロディ」と題されてはいるが、カタカナ語を振りかざす業界人もパロディの対象となっているというわけだ。

 ちなみに各武将のメールの署名も見どころで、徳川家康は

===================================
東軍 総大将 ~鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス~
徳川家康
===================================

柴田勝家は

++++++++++++++++++
筆頭家老 / 越前国 / 権六 / 鬼柴田 / 鬼神 / 瓶割り
柴田勝家<k.shibata@echizen.oda>
++++++++++++++++++

 という感じ。家康はいくらなんでもフザケすぎだが、いい具合のタヌキ親父感が出ているし、柴田勝家は「k.shibata」というメアドに組織人としての生真面目さを感じる。しかもバカなネタを作りつつも、勝家の豆知識をしっかり放り込んできているあたり、日本史への愛も感じる。

 なお、ここまで紹介してきたものはすべてメールを題材にしたネタだが、

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ジャンプの巻末コメントが徳川将軍だらけだった場合

黒船の「ファミ通」風クロスレビュー

織田信長のLINEトーク一覧

 などのネタはビジュアルの作り込みの細かさにも注目。我々の知っているジャンプやファミ通のあのページが、相当なレベルの精巧さで再現されているので、ぜひ実物を手にとって確認してほしい。

 なお「織田信長のLINEトーク一覧」は本能寺の変の直前らしく、森蘭丸からは「なんだか外が騒がしいですね。ちょい見てきます~」というメッセージが届いている。そして目を引くのが明智光秀の扱い。彼は信長から通知オフ設定にされていて、46件のメッセージが未読のまま放置されているのだ。LINEを無視されたことがきっかけで、本能寺の変は起こった……と考えると、何だか明智光秀への親近感もグッと湧いてくる。

 このように本書はバカなネタをやりつつも、徹底的に芸が細かく、その芸の細かさの裏には、日本史の確かな知識や愛も感じられる。冒頭で「歴史に『たら・れば』はない」という言葉に触れたが、「たら・れば」もパロディも、対象へのリスペクトと愛に溢れたものは、やっぱり楽しいのだ!

文=古澤誠一郎