「ネガティブなことに敏感」だから? 松岡修造が熱い理由を「修造ドリル」に読む

芸能

更新日:2015/5/25

 夏なのに寒かったり、冬なのに暑かったり、おかしな天気の日は、インターネットでは決まってある人物の居所が話題になる。松岡修造である。いち早く修造の居場所を突き止めた輩が、天気図と修造の居場所を図示したものをTwitterに投稿。それを見て皆、異常気象に納得する、といった様式美があるのだ。今年4月、桜が咲いているのに雪が降った日は、松岡修造の公式HPがアクセス集中により落ちていた、なんて噂もある。

 どういうことかというと、修造人気を支えている一つである、彼が誰かを応援する際によく発する「もっと熱くなれよ!」などのフレーズ。この、修造特有の“熱さ・パッション”が、日本の天気をも左右させている、といったロジックだ。ご丁寧にも暑すぎる日は実際に修造が日本にいて、寒すぎる日は修造が海外にいたりするものだから、皆が皆、修造の居所に釘付け。なお、修造が日本にいるのに寒かった日は、「分かった! 修造が日本にいるのに今日こんなに寒いのは、修造が体調を崩してダウンしているからだ!」といった趣旨のツイートが出回っていた。念のため、真面目に付け加えておくが、もちろん松岡修造氏自身と日本の天気とは一切無関係で、科学的根拠もない。さらに本人は、今年4月都内で行われたイベントで、「世界では天候による残念なニュースもある。それに関してはコメントを差し控えています」と“天気ネタ”に関してNGの姿勢を見せている(『日めくり まいにち、修造!』感謝祭、日清食品CMイベント等)。

advertisement

 そんな修造が、ドリルを発売したようだ。『解くだけで人生が変わる! 修造ドリル』(アスコム)と題したその本は、人生を良い方向に向かわせる“習慣”を、ドリル形式で指南してくれるらしい。さっそく解こうと意気込むも、一問目からよく分からない。二文字の穴埋め問題のようだが……。

(編注:以下の問題では、□□の中に入る語を考えながらお読みください)

彫像マーライオンは□□が変わる

 答えは「表情」だそうだ。なんでも、シンガポールにあるマーライオンを初めてみたとき、その思った以上の小ささにガッカリしたという修造氏。だが、二度目に見たときには、「この小ささがいいな」「かわいいな」と感じ方が変わったのだとか。このように、見る側の状態次第で変わる“感じ方”を鍛えましょう、といった趣旨の問題のようだ。本書全体を通して、松岡修造自身が今までに経験してきたこと、感じてきたことから得た教訓を、ドリルの解説で語ってくれている。マーライオンひとつでここまで熱くなれる修造氏にしょっぱなから舌を巻きながらも、読み進め、解き進めていく。

失敗を□□する

答え:失敗を「練習」する(練習の時点で失敗も経験しておけば怖くない)

自分を応援してくれる最も身近な存在は□□である

答え:自分を応援してくれる最も身近な存在は「自分」である(自分だけは、自分が頑張っていることを知っている)

 思わず感銘を受けるような格言が飛び出したかと思いきや、「□□□□に開き直る(GOODに開き直る)」「次につながる□□□反省会(次につながるホット反省会)」など、雑だろう! と言いたくなるような問題まで、実に振れ幅が大きい。そんな中、ひときわ“らしさ”を放っているのがこれ。

ラーメンに□□□は使わない

 答えは、「ラーメンにレンゲは使わない」。曰く、

「相手が本気なら本気の自分が自然に出てくるからです。僕にとってラーメンは、まさにその本気がぶつかり合うものです。料理人と僕の1対1の勝負。だからこそ、席に座ったら上半身だけアンダーウェアになって箸を握り、食べる瞬間までイメージトレーニングするわけです」。

……嗚呼、これです、これ。これ以上ないくらいの、修造イズム! このひたむきさ、生真面目さ、その対象が何であろうと真っ直ぐに向き合う“修造精神”。だから人はみな、修造のことが好きなんです!

 興奮して解きながらも、ひとつ、松岡修造という存在に対して印象が変わった点がある。読み進めていくと、

「僕は、ネガティブなことにとても敏感なタイプです」
「メンタルの弱かった僕は、現役時代にいろいろなメンタルトレーニングに取り組んでいました」

 など、暗さや弱さが文章から見え隠れする部分が多いことに気付く。人一倍、様々なことに敏感だからこそ、人、物、現象、何に対しても、熱く真面目になれるということか。弱くて暗かったからこそ、プロテニスプレイヤーとして生き残るために確立したのが、「熱くなれよ!」の修造像、なのだろう。修造は、生まれたときから“修造”ではなかった。修造がマーライオンを複数回見ることで“感じ方”が変わったように、私はこの本を通して、今まで見ていた松岡修造への“感じ方”が変わったのだった。

取材・文=朝井麻由美