まさかの有害図書認定!? 女性器を擬人化した『あいこのまーちゃん』の衝撃的な内容とは?

マンガ

公開日:2015/5/27

 昨年、アーティスト・ろくでなし子氏が、自身の「女性器」の3Dデータを配布した容疑で逮捕された。この衝撃的なニュースは、まだ記憶に新しいことだろう。そしてほぼ同時期に、「女性器」をテーマにしたマンガということで、連載2日前にして、突如掲載中止に追い込まれてしまった作品がある。『あいこのまーちゃん』(やまもとありさ/笠倉出版社)だ。

 本作は、元々単行本化を前提に、Web上での連載を予定していたマンガ。ところがあるとき、「有害図書にあたる可能性がある」との理由から、単行本化の話が白紙になり、それにともない連載までもが立ち消えになってしまったという。

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 ところが、やまもと氏は諦めなかった。クラウドファンディングにて制作資金を募り、途中まで進めていた物語を見事に完結させ、なんと単行本化までこぎつけたのだ!

 そんな、いわくつき(?)の作品は、いったいどのような内容なのかというと…。

 物語の主軸となるのは、「思春期の女の子の成長(性徴)」。初潮や初恋、セックスなど、10代特有のモヤモヤした悩みが、つまびらかに描かれている。そして、なによりも特徴的なのが、「女性器」が擬人化されているということ。ある日、突然しゃべりだした、主人公・椋野あいこの女性器“まーちゃん”。少し天然でぼんやりしているあいこは、この“まーちゃん”から大人になるためのアレコレをレクチャーされるのだ。

 おしゃべりが大好きな“まーちゃん”は、性に疎いあいこに、さまざまな知識を授ける。タンポンの使い方、毛が生えることの意味、そして“敏感な部分”の取扱い方。あいこは恐る恐るも、一歩ずつ大人への階段を上がっていく。

 そんなあいこと“まーちゃん”のほんわかした日常は、とあるきっかけにより、一変する。そのきっかけというのは、兄のセックス現場を目にしてしまったこと。兄とその彼女がなにをしているのか、あいこにはその意味がよくわからない。けれど、見ちゃイケナイことだというのはわかる。そしてあいこの耳に届く、兄の彼女の“まーちゃん”があげる、「痛い痛い痛い!」という悲鳴。あいこのなかに芽生える、セックスへの嫌悪感、大人になることへの拒否感、(自分を含んだ)女性の体を理解できないことへの恐怖感…。

 終盤、あいこは、行き場のない怒りを“まーちゃん”にぶつける。「好きでもないのに、いやらしいことを考えさせて。あいこになにをさせたいの?こんなのが立派な大人なの…?」。

 マンガ的表現を多用しているため、ある程度はマイルドになっているとはいえ、本書で描かれているテーマは、あまりにも衝撃的。特に男子からすると、知ってはいたけれど見てはいけない、まるで禁断の花園に足を踏み入れた気分になるだろう。けれど、子どもから大人への過程は、誰もが通る道。「大人になんてなりたくない」というあいこの叫びは、誰しもが抱いたことのある、焦燥感だろう。

 性的なものごとは、タブー視されがち。けれど、本書はまさに思春期まっただ中の子どもたちにこそ読んでもらいたい。これは有害図書なんかではない。悩み多き思春期をサバイブするための、バイブルにこそなり得るだろうから。

文=前田レゴ