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開発開始は1987年! Suica誕生までの長い歴史を振り返る

 通勤や通学など、都市部では日常的に電車を使う機会が多い。その昔、駅員さんの前を通り電車へ乗るのが主流だったのが、いつしか自動改札が導入され、現在ではICカードにより、チャージさえすればものの数秒で改札を通り抜けることができるようになった。

 今や必需品となったICカード。当たり前の存在ではあるが、なかでも先駆けだったのはJR東日本のSuicaである。以降、関東の私鉄ではPASMOが導入され、JR西日本のICOCAなども誕生し、現在では順次、相互利用できる地域も広がりつつある。

仙台市交通局発行の「icsca」。全国的にICカードの導入も拡がりつつある。

 誕生から11年経過したSuicaの開発が始められたのは1987年頃。その歴史を解説してくれるのは、書籍『ICカードと自動改札』(交通研究協会)である。著者は、椎橋章夫さん。国鉄時代に入社したのち、JR東日本のIT・Suica事業本部副本部長を務めた人だ。

 利用が検討され始めた当時は、改札に立つ駅員さんへ切符や定期入れを見せるのが一般的だった。その後、自動改札機が徐々に導入され始めたが、乗車券を定期入れやバッグなどから出すのが「いちいち煩わしい」という利用者の声を受けて、構想が生まれたという。

 実質的な黎明期といえるのが1987年から1991年頃。この頃は、ICカード自体とそれを読み取るための装置の開発が進められていった。現在、カード側に組み込まれたコイルを伝わり通信する「電磁波誘導方式」が採用されているが、開発当初は、マイクロ波や中波を使ったものも検討されていた。

 その後、フィールド試験と呼ばれる実地テストが数度にわたり繰り返されることになる。初回は1994年の2月〜3月の期間。東京駅をはじめ8駅で実施されたというが、マイクロ波を使ったICカードによる試験では、瞬時に通信処理が完結せず、自動改札機を通過できない割合が磁気式の定期や切符と比べて20倍以上にもなった。

 大きな原因は、カードと読み取り装置の位置関係である。この時点では双方の通信できるエリアが縦に伸びるよう設計されていた。そのため、通信できるエリアが限られてしまったことで、試験者から「どこにかざしたらよいか分からない」「反応時間が遅い」という声もみられた。

 また、読み取り装置の設計もこの時期に基礎が作られた。試験では今では一般的となった水平にカードを読み取らせる「横置き方式」と、改札のポールへ備え付けた「縦置き方式」の両者を採用。試験後には参加者の約9割が「横置きのほうが好ましい」と答え、現在に通じる設計のコンセプトが固められていった。

現在は主流となった自動改札機の形状。JR東日本の取り組みが私鉄などにも利用されるようになった。

 続く2回目のフィールド試験は1995年4月から10月までの半年間。東京駅をはじめとする13駅で実施された。初回の試験者からの声を受けて、短波帯により読み取り装置周辺の通信エリアを半球状に拡大。さらに、処理が完結されなかった乗客が改札の手前まで戻る必要がないように、その場でカードをかざすのみでやり直せる「振り返り処理」を導入し、改札機の利便性を向上させた。

 そして、1997年4月から11月にかけて行われた第3次フィールド試験では、実用化に向けてさらに大きく動き出した。2回目の試験では、カードに搭載されたバッテリーによる不具合が報告された。そのため、読み取り装置から電力を供給する方式に変更された。

 また、乗車券として使われるだけではなく、ICカードの付加機能もこの試験から導入された。日本特有の「ガラパゴス化」も象徴する電子マネーとしての役割「SF(Stored Fare ticket System)」機能である。乗車駅と降車駅で自動的に運賃を計算、さらに、定期券の場合は指定した区間を超えた場合にチャージされた金額から自動的に運賃を精算するという仕組みは、その後広く普及していったことからも画期的なものだったのが分かる。

 今でこそ当たり前の存在になったが、実用化されるまでには様々な試行錯誤がみられた。先日、あるお店のレジ横にSuicaの読み取り装置を見かけて驚いた記憶もある。駅とはかけ離れた場所にあったためだ。

 販売が開始された当時に「何やら凄いものが出たようだ」とワクワクしたのを思い出すが、現在では、Google GlassやApple Watchなどのウェアラブル端末との連携に期待を寄せる声もある。数年後、数十年後にはどんな進化を遂げているのか、その可能性にも続けて期待していきたい。

文=カネコシュウヘイ



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