「全米はそんなに泣かない」 筋金入りの親日家ボビーが語る日本人&米国人の“思い込み”

海外

更新日:2015/6/4

 「電車が時刻表通りに来る」「道端でティッシュを配っている」「100円ショップのクオリティが高い」――外国人から見た日本のステレオタイプはそんな感じなのだろう。「日本には今も侍がいる」と思っている人もいるとかいないとか。しかし、“日本のステレオタイプはそんな感じなのだろう”ということが、逆にわたしたちの外国人に対するステレオタイプなのかもしれない。『世界が日本に夢中なワケ』(ボビー・ジュード/宝島社)を読むと、そんな気がする。

 日本へ来て9年になるアメリカ人、ボビー・ジュード。イケメンタレント、モデルとして活躍中のボビーは、筋金入りの親日家である。禅に興味を持ったことがきっかけで日本文化にのめり込んだボビーの日本愛が爆発したのがこの本。「ええ!? 日本の…そこ!?」という驚きと、「逆にアメリカって…そうなの!?」という二重の驚きに、思わずニヤリとしてしまう。いくつか事例を紹介したい。

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外国人は「お疲れ様」が好き

 日本では英語の授業で、「アメリカ人は“頑張って”“お疲れ様”とは言わない。“Good luck.”や、“Do your best.”」と習う。確かに英語には「お疲れ様」という概念がないため、英訳するのは難しい。しかしボビーは、お疲れ様が好き。「がんばりを認められた喜びを感じるし、とってもいい言葉だなと思う」のだそうだ。

「過労死」「ひきこもり」が英語の辞書に載っている

 寿司(sushi)、豆腐(tofu)、カラオケ(karaoke)などが英語として使われているのは有名だが、最近では「過労死」「ひきこもり」も辞書に載っているという。……それは載せないでほしい気がしないでもないが、日本文化がそれだけ海外に浸透している証拠だろう(過労死は日本文化?)。

全米はそんなに泣かない

 「この春、一番泣ける映画」「全米が泣いた!」といった宣伝コピーが日本では多く見られる。しかし、ボビーは物申す。「全米はそんなに泣かんから!」。アメリカ人はそんなに簡単には泣かない。とくに男性は人前で泣くのを恥じるらしい。甲子園で負けた球児たちが号泣するシーンは、アメリカ人からすると「放送したらマズくないか?」と思うのだとか。

アメリカ人はSEXのあとにティッシュを使わない

 日本では街中でティッシュが配られている。家にもやたらとティッシュが置いてある。ホテルのベッドの側にも置いてある。これは何に使うのか? え、もしかして…!? 「セックスの後、ティッシュを使うなんて、日本に来て初めて知った」というボビー。アメリカ人はティッシュを使わない。どうするかと言うと、そのままシーツに……だそうだ。

日本語の「好き」をなめんな!

 日本での滞在歴が浅い外国人Aさんが、「I love you. は日本語で何?」と聞かれ、「愛している、とか、恋している」と答えた。これに対して、ボビーはモーレツに反対。「I love you.の訳は、好き!」。英語のlove と like はハッキリと区別される。しかし日本語の「好き」は曖昧だ。深い愛を表現するときも「好き」と言うし、「これいいね」程度の軽さで「好き」と言う場合もある。この日本語の曖昧さが、ボビーは大好きだ。「“好き”って言葉をなめんな!」とムキになるボビー。

 本書のタイトルは、『世界が日本に夢中なワケ』だが、「ボビーが日本に夢中なワケ」でもある。ボビーは本当に日本が大好きなんだな、というのがヒシヒシと伝わってきて微笑ましい。「日本人はマナー良すぎ」「話の途中で割って入ったりしない」「外国人に優しい」「べっぴんさんが多い」……この辺りは、「ごめんよ、ボビー。それは幻想というものだ」と申し訳なくもなるのだが、これだけ愛される日本という国に生まれたことを誇らしく思える。なんともハートウォーミングな一冊である。

文=尾崎ムギ子