サッカー女子W杯が開幕!! 今こそ読みたい女子サッカーマンガとは

スポーツ

2015/6/6

 なでしこジャパンが2連覇をかけて挑む、FIFA女子ワールドカップ2015カナダ大会。連覇と共に注目される我らが10番・澤穂希選手の6度目のW杯出場。連日、メディアで取り上げられ、バイブスも上がる! だが…「正直、連覇は厳しい」と感じているサッカーファンは少なくない。澤選手の代表復帰を喜ぶ反面、澤選手から10番をもぎ取る選手が現れていない、世代交代が進んでいないという現実があるからだ。

 この状況を打破するカギを握るのは「女子サッカーマンガ」だ。『キャプテン翼』(高橋 陽一/集英社)がイニエスタやデル・ピエロ、F.トーレスなどのスーパープレイヤーを生み出したように、女子テニスマンガ『エースをねらえ!』(山本鈴美香/ホーム社)が松岡修造選手を生み出したように(違うか)、女子サッカー選手すべての憧れとなるようなマンガが、今こそ必要なのだ。

 人気も実力も確かなものとなったなでしこサッカーなのに、女子サッカーを題材にした作品は、過去数十年にさかのぼっても、20タイトル程度しかない。しかも、ほとんどが青年誌での連載作品であるせいか、男キャラとの恋愛やお色気場面が多く、肝心のサッカーも「女子サッカーならでは」の場面があまり見られない。「男子目線」の印象がとても強い。

 そんな中で、女子サッカーマンガの可能性を感じたのが『さよならフットボール』(新川直司/講談社)だ。

 藤第一中学校のサッカー部員・恩田希(ノン)は、戦術眼もテクニックもあるが、女子ゆえに公式戦に出場させてもらえない。ある日、再会した幼馴染みから「サッカーはフィジカルだ。男の俺に、女のお前が敵うわけがない」と挑発され、来たる新人戦での雪辱を誓う。弟になりすまし、ノンは試合に強行出場するが――(※日本サッカー協会のルール上では、中学生の女子は男子の試合に出場可能)。

 サッカーの上手いヒロイン、幼馴染みが3人もいて、試合の相手はその一人で…と、あらすじだけだと「女子サッカーマンガによくある設定」に見える。しかし、本作が他と違うのは「女子サッカー選手の目線」で描かれている点だ。

 まず、主人公のデザイン。男子目線のマンガでは、「超ロングヘア」で派手な美少女が多いが、本作のノンは、短めなポニーテール。プレーの邪魔にならない長さと可愛らしさのバランスに女子のリアリティがある。

 また、男子目線の作品では、お色気要素として、巨乳キャラだったり、ユニフォームがかなりピチッとしていて、ボディラインが強調されがち。しかし、実際にスポーツをする女子は、体型があからさまに分かるような着こなしは避けたいと思うものだ。

 本作では、ノンが「貧乳」であることに物語上の意味があるのだが、それを抜いても、ノンの練習着やユニフォームの着こなし方・着崩し方が、実にリアルで女子らしい。

 男女問わずサッカーマンガなのに、ユニフォームや用具の扱いが雑な作品が多い。用具類の描き方で「作者のサッカー好き度とこだわり」が分かる。サッカーマンガはユニフォームを見て選ぼう! 表紙詐欺もあるので、本編を見るべし!

 話を戻して、プレー中の動きも、本作では男女を描き分けている。ノンの指先の感じや、ハイボールを競って落下する時に内股気味になっているコマなど、「女子サッカー選手」の描写が繊細で丁寧だ。

 そして、一番重要なことが、物語の前半で描かれている。それは、ノンと佐和の部活後の帰り道の場面だ。

フィジカルゴリ押しのサッカーなんてつまらないわ。ノースペクタクルよ!!(中略)誰にも真似できない技術とファンタジー。ノンちゃんのフットボールには夢がある

 フィジカルの男女差を感じ、男子に「嫉妬を感じるわ」とつぶやいたノンに、佐和が返した言葉だが、これは物語のいちセリフに留まらない。「男子サッカーのほうが速いし激しいし、面白いよ」と、女子サッカーを見ようともしない人々への反論でもあるのだ。

 かつて男子サッカーに存在した「ファンタジスタ」が蘇るとすれば、それは女子サッカーだ。女子テニスや女子バレーは、ラリーが続くからこその、女子だからこその面白さが確立されている。女子サッカーの未来もそこにある。

 というわけで、女子サッカー版『キャプテン翼』を生み出すために、筆者の独断で3つの条件を提示して、本稿を終わりたいと思う。

(1)女子目線の女子主人公の物語
「サッカーマンガ」ではなく「女子サッカーマンガ」を描こう! お色気不要、恋愛要素薄めで!!

(2)ユニフォームや用具にこだわろう
実際にプレーする人たちは、必ずお気に入りポイントやこだわりがあり、それはキャラの趣向や性格にもつながる。読む人が「これと同じ練習着欲しい」と思える丁寧な描写を、女子選手らしさをもって描こう。

(3)女子サッカーのリアリティと理想の両立
女子サッカー選手の現実的な能力を踏まえた上で、男子サッカーとは別競技として「女子サッカーの魅力」が伝わる「理想のスタイル」を追求しよう!

 そんな女子サッカーマンガが生まれ、世界中で読まれる日が訪れるとき、第二、第三のレジェンドがなでしこジャパンの10番を背負っているはずだ。

 でも今は――戦え!! 澤選手!! 勝て!! なでしこジャパン!!

<文=水陶マコト