昭和初期の女郎を描いた衝撃作『親なるもの 断崖』が新装版で蘇る!

マンガ

公開日:2015/6/8

  • 親なるもの

 女性の人権、親子関係、児童虐待、平和を訴える戦争の悲惨さや残酷さ、社会の歪みが弱者に向かう現実…。深い洞察力で、人間の弱さや醜さとも向き合う人間愛に溢れた物語を発表してきた漫画家・曽根富美子氏。1992年に第21回日本漫画家協会賞優秀賞を受賞した『親なるもの 断崖』(宙出版)が、新装版となって2015年7月10日(金)に蘇る。

 1991年に初版本が出版された『親なるもの 断崖』を、戦後70年の節目である2015年4月に電子書籍として発売した結果、作品に対してSNSでの投稿や、出版社への問い合わせなど大きな反響が寄せられた。印刷版刊行の要望も高まり、今回の新装版(第1部、第2部同時)刊行へと至った。

  • 親なるもの

    女郎の苦しみを知りつつも強く望む道子

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激動の昭和初期に強く生き抜いた女性がいるから今がある。

第1部あらすじ
昭和2年4月、北の海を渡り、4人の少女が北海道室蘭の幕西遊郭に売られてきた。松恵16歳。その妹、梅11歳。武子13歳。道子11歳。松恵は着いたその日に客をとらされ、首を吊った。奈落の底で、少女たちの血を吐くような人生が始まった!

第2部あらすじ
白無垢姿で遊郭を抜け出した梅は、母になった。赤い雪が燃え狂う室蘭の断崖で、祝福されることのない母と子は、つらい修羅の途を歩まねばならなかった。生きろ! 生きてゆけ!! 次の時代を生み出すのは女性だ!!

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    幸せを掴んだはずの梅も家族を捨てる決意を…

 『親なるもの 断崖』の舞台は、著者・曽根富美子氏にとって縁の深い北海道室蘭市の幕西遊郭(昭和33年まで政府公認で実在)。昭和2年から昭和33年にかけての戦前・戦中・戦後、現代日本の基となる激動の時代に翻弄された4人の少女たちの悲しくも壮絶な生き様、当時の社会情勢から現代にも通じる人間の本質にまで踏み込んだ作品である。

 本作はどん底に生きる庶民に、目を背けることも美化することもない。しかし、不幸な話であるにもかかわらず、どんな状況でも歯を食いしばり、意思を持って生き抜く女性の力強さが描かれている。最後には、人間の醜さを自然体で受け止められるほど引きこまれ、思わず感動してしまう物語だ。

曽根富美子(そね ふみこ)
北海道出身。女流作家、油絵・水彩画家。画家としての雅号は北乃咲喜(きたのさき)。1975年、第8回りぼん新人漫画賞佳作第二席入選。同年冬、『りぼんお正月大増刊』でデビュー。1985年に女性誌へ転向。社会派の漫画家としての地位を築いていく。1992年、『親なるもの 断崖』で第21回日本漫画家協会賞優秀賞を受賞。その他、代表作として『子どもたち!~今そこにある暴力~』『死母性の庭』『含羞―我が友 中原中也―』『家族再生~心理療法の現場から』『家族に見える虹』『女が叫ぶとき~戦争という地獄を見た』『この星のぬくもり―自閉症児のみつめる世界』『ブンむくれ!!』などがある。2015年2月にスーパーのレジスターを体験したエッセイ漫画『レジより愛をこめて~レジノ星子(スタコ)~』は、2015年度第44回日本漫画家協会賞の最終選考にノミネートされた。2015年でデビュー40周年を迎える。

『親なるもの 断崖』
著:曽根富美子
価格:第1部 980円(+税)/第2部 920円(+税)
発売日:2015年7月10日(金)
出版社:宙出版

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