「昔と天気が変わってきた」「災害が増えている」は本当? NHK天気キャスターが解説する天気本

科学

2015/6/14

 最近、テレビの気象情報だけでなく、ニュースとして天気の話題を扱うことが増えてきた。また身近な人との会話でも、「昔の夏はここまで暑くなかった」とか「竜巻を間近で見た!」というように、通常とは違った天気についての話題が多くなっている。これは「昔と天気が変わってきた」、「災害が増えている」と感じている人が多いためだと思われるが、その感覚は正しいのだろうか。周りの意見に感化されて「異常気象だ」と思ってしまっているだけなのではないか。

知識ゼロからの異常気象入門』(幻冬舎)は、私たちの生活をとりまく天気に何が起きているのか、そして今後どうなると予想されているのかを、NHKの気象キャスターとしておなじみの斉田季実治さんがたくさんのイラストや図表を交えて解説してくれる天気本だ。本著の中から、特に知っておきたい情報をいくつか紹介しよう。

「異常気象」の基準は「30年に1回起こるかどうか」

 本著によると「異常気象」という言葉の定義は、日本・世界ともに「同じ場所で30年に1回起こるかどうかの非常にまれな気象現象」を基準にしているという。この30年という区切りは、0歳児なら働き盛りの30歳になり、30歳の会社員なら現役を退く60歳になる…という年月。「このくらいの間隔に1回であれば“まれ”に感じるだろう」という頻度であり、「生きることに不都合を及ぼすイレギュラーな気象現象」が異常気象の本質なのだ。

 ちなみに2010年以降、世界中で熱波・寒波・集中豪雨や洪水など数多くの異常気象が観測されており、もはや「異常気象が頻発していることそのものが異常」なのだとか。そう、やっぱり異常気象は近年、顕著に増えているのだ。

 しかし人間の一生で見れば“まれ”な頻度でも、46億年という地球の歴史から見れば頻繁に起こっているこうした気象状態は、もしかしたら「異常」ではなく単なる「バランス調整」なのかもしれない、と斉田さんは語っている。

「異常気象」は地球温暖化の弊害のひとつ

 「異常気象」と対をなすかのように、「地球温暖化」という言葉もよく耳にする。「暖かくなったら過ごしやすいのに、なぜ問題なの?」と思う人も一部にはいるかもしれないが、もちろんそう単純な話ではない。温暖化の弊害によって人間が地球上で生活していく上で命にかかわるような不都合が多発してくるというのだ。

 代表的な懸念の例を挙げるだけでも、水不足(蒸発量が降水量を上回って干ばつに)、海面上昇(氷河や南極の氷が解けて沿岸の低地が水没)、食料不足(農作物の収穫量減少、漁獲量減少)、健康への影響(熱中症の増加、病原体媒介昆虫の生息域増加で熱帯病流行)…など深刻なものばかりである。

 ちなみに日本国内13カ所で記録した猛暑日の平均日数は、1990年半ばから極端に多い年が頻発しており、またアメダスが1日400ミリ以上の降雨量を観測した日数も、まるで連動するように1990年半ばから極端に多い年が増えているそうだ。こうしたことから、異常気象は地球温暖化の弊害のひとつと言えるだろう。

気象災害から身を守るために、前兆や生活する場所の特徴を知っておく

 毎年必ず発生している「気象災害」から身を守るには、まずその特徴を知っておくことが大切、と本著では警鐘を鳴らしている。

 例えばここ数年、集中豪雨に伴う被害が相次ぎ、梅雨や台風のシーズンを迎えると危険が増す土砂災害について。山がちな日本では、都会でも地すべりやがけ崩れが起こる場所があちこちにあるため、「まずは自分の生活する場所がどういう場所か、ふだんから認識しておくことが重要」だという。具体的に例を挙げると、「○○台」や「○○が丘」といった地名は斜面を宅地造成した場合が多いそうなので確認しておこう。また、家の裏手に急傾斜地がある場合は、斜面の上から小石が落ちてくる、斜面に亀裂が入る、斜面から濁った水が出る、地鳴りや木の根が切れるような音がする…といった崩壊の前兆を知っておき、気付いたらただちに避難できるようにしておきたい。

「雷の常識」は、間違いだらけ!

 また、夏の外出時には急な雷雨にも気を付けたいもの。すぐに建物の中に入るのがベストだが、いつも駆け込める場所があるとは限らない。そんな時、一番してはいけないのが「木の下に逃げる」こと。もし雷がその木に落ちた場合、電流が近くにいる人に飛び移る「側撃雷」という現象に巻き込まれる可能性が高いそう。「金属を体から外せば安心」というのも、雷は金属・非金属に関係なく落ちるため間違い(金属に電流が集中するため、つけていたほうが体に流れる電流が減るという意見もあるとか)。また「ビニールのレインコートやゴム長靴で絶縁る」というのも、約1億ボルトという雷の電流の前には無力だという。雷は雨とは無関係に落ちるため、晴れてもすぐには警戒を解かず、なるべく身を低くして、避難できる建物を探そう。

 天気は私たちにとってとても身近なもの。しかし、地球全体を見渡しつつ何十年も蓄積したデータを解析しなければ解けない課題がたくさんあるようだ。毎日何気なく見ているテレビの気象情報も、本著を片手に視聴すればその奥深さに気付き、より面白くなること請け合いである。

文=増田美栄子