女の敵は女ではない?「友達ゼロ」のアラサー女子に学ぶ“女の人生論” 『地獄のガールフレンド』レビュー
公開日:2015/6/15
女子の友情を継続させるのは大変だ。特に、アラサーになってからそう感じる方は多いのではないだろうか。
久しぶりに実家に帰省して「地元の友達に会おうかな?」なんて思っても、スマホを持ったまま「やっぱいいや……。今日は一人でゴロゴロしていよう」と思ったことは、一度や二度ではない。
この年代になると、昔からの友達にも違いが歴然と現れてくる。未婚か既婚か。結婚しているなら、子どもはいるのかいないのか。独身でも、仕事は上手く行っているのか。恋人はいるのか……。何気ない会話の中でも、人それぞれに触れられたくない部分はあるだろうし、自分だって触れてほしくない部分はある。そのため、その辺りを気遣うのが面倒になって、友達とはどんどん疎遠になってしまう。
鳥飼茜の『地獄のガールフレンド』(祥伝社)は、そんなややこしい年齢真っ只中の「アラサー女」3人が、わけあって同居を始める漫画である。
「同居人募集! お友達のいない方大歓迎!」の貼り紙のもと出会ったのは、家主であり、服飾デザイナーでもある、美人でモテモテの「奈央(なお)」36歳。不倫歴があり、セカンドバージンであるまじめOL「悠里(ゆうり)」28歳。バツ1シングルマザーのイラストレーター「加南(かな)」31歳。
今まで全く別の環境ですごしてきた女3人が、友情ではなく「利害の一致」により、共に生活することになるのだが、彼女たちが居間のテーブルを囲んで繰り広げる「女の人生論」が、とても的を射ていて、我々の心を打つのである。
例えば「モテる秘訣」だが、これは美人でモテモテの奈央によると「男に自分ほど関心持たないこと」だという。彼女は「男より自分の方が100万倍好き」と断言し、これは自分によほどの自信がなければ、到達できない境地ではあるのだが、なるほど真理を突いているなあ……と思わされる。
また、奈央は「彼氏のいないオバサン」になることを恐れ、自分よりオジサンの彼氏を作るべく、合コンに参加する。そこで小学生の息子を持ち「嫁は女のコっていうより戦友。家を運営する仲間」と言い放つ既婚者男性に出会うのだが、彼女は共に暮らすシングルマザー加南のことを思い出し「こどもとこどもを守る大人が、心から安心して育って育てられるのが、それが家なのに」と思い、批判すると「な…んだよこの ドブスが…!」と、反撃されるエピソードがある。
「ホントのことを言う私は男の人にとってドブスなんだ」
心の中でそうつぶやく奈央に、共感してしまう女子は、恐らくたくさんいると思う。男性にとってブスかそうでないかは、顔ではなく、都合の良さで判断されることが社会ではとても多い。
奈央は、帰宅してから盛りに盛ってこの出来事を2人に話し、思いっきりデトックスして、女友達のありがたさを少しだけ感じるのだが、本来なら交わらなかったはずの3人の「友情」が、これから一体どこへ向かうのかは気になるところである。
タイトルに「地獄」がついている通り、女の友情が油断ならないのもまた事実なので、少々心配ではあるが、ややこしいアラサー女子同士の関係に、一筋の光が指す物語なら良いなあ……と期待している。
文=さゆ