ゲーム実況者、ついにマンガの主役へ。現役の実況者が語る人気アップの秘訣とは

マンガ

更新日:2015/6/29

  • 今やゲーム実況者はアイドル並みの人気を誇る。写真はニコニコ超会議ゲームエリア

 

 ニコニコ動画などの動画サイト上で人気のゲーム実況動画。今年4月に開催され12万4966人が来場したイベント『ニコニコ超会議』では、ゲーム実況者が登場すると、若い女性ファンから黄色い声が上がるなど、若年層を中心に人気を集め、個人やグループによっては1度のイベントで数百人、数千人を動員するアイドル的な存在になっています。

 この流れは当然、出版業界にも波及、人気のゲーム実況者を紹介するムック本やゲーム実況者自らが書き下ろした小説がリリースされ、ついにはゲーム実況者を主人公としたマンガ『ナカノヒトゲノム』(おそら/KADOKAWA)も登場しました。そこで、実際にゲーム実況をしている側からこういった作品をどう見るか、マインクラフト実況動画などで人気のゲーム実況者・えふやんさんに聞いてみました。

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●えふやん
ニコニコ動画などで活動する男性実況プレイヤー。2011年5月に「マイクラで新世界の神となる」と題した動画シリーズを初投稿。独特な語り口と丁寧な動画編集で人気となり、マインクラフト関連動画だけで再生数2400万回以上にのぼる。その他、旅動画「ぼくらは新世界で旅をする」シリーズなども手掛ける。
twitter:@Fyan_suiiiii_ ブログ:えふやんの新世界Blog

 

動画はテンポ重視で視聴者コメントを意識して作っている

 

――まずはじめにニコニコ動画歴を教えてもらえますか?

えふやん:ニコ動を知ったのは2008年から2009年くらいですね。最初からゲーム実況動画ばっかり見てました(笑)。ちょうど「ゲーム実況」というタグができて、動画が増えていった時期だったんですよ。はじめて見たゲーム実況動画は「幕末志士」さんのものだったと思います。

――どれくらいハマっていたんですか?

えふやん:今までにゲーム実況動画視聴に費やした時間がどれくらいなのか自分でも分かりません(笑)。Part.70まであるような動画を3回通しで見たこともありますし。かなりディープにハマってました。

――それはすごい(笑)。昔からゲームは好きだったんですか?

えふやん:いえ実を言うとそんなにゲームはしてこなかったんですよね。家が厳しくて「1日30分しかプレイしちゃダメ」みたいなことを言われてて、あまりやらせてもらえなかった。なので、ゲームが特別好きだから実況動画を作ったというわけではないんです。「動画」が主体というか、動画で不特定多数の人を面白がらせたいというのが一番のモチベーションでした。

――それは意外ですね。普段はどんなゲームを?

えふやん:流行りのFPS(※主人公視点のシューティングゲームの総称)とかはあまりやらなくて、マリオとか割とほのぼのしたゲームだったり、『逆転裁判』(カプコン)とかゆっくりプレイできるものが好きです。ちなみに、最初に買ってもらったゲームハードはNINTENDO64です。『マリオカート64』(任天堂)のTVCMを見て、これは買うしかないと思い必死に親に頼み込みました(笑)。それ以来、僕は任天堂派でプレイステーションのゲームはあまりプレイしたことがないんですよね。

――ゲーム実況動画をはじめたきっかけは?

えふやん:人がやってて面白そうだったら、自分もやりたいって思っちゃう性質なんですよね。面白いゲームをやったら自分もゲーム作りたい、面白いアニメを見たらアニメーターになってみたい、声優になりたいみたいな感じで。なのでゲーム実況を見て、自分もこういうことができるんじゃないかって思ってはじめました。なんか消費者側でいられないというか作り手側に回りたくなっちゃうんですが、そうなると見る側を自然と意識するようになるので純粋に楽しめないみたいなところはあります(笑)。

 

▼えふやんの記念すべき初投稿動画

 

◆えふやんの動画シリーズ(一部抜粋)
マイクラで新世界の神となる【実況プレイ】
ぼくらは新世界で旅をする【旅動画】
スプラトゥーンで新世界のイカとなる【実況プレイ】

 

―― 最初にマインクラフトを選んだ理由は? またこのゲームの魅力はなんでしょう?

えふやん:動画をはじめて投稿したのは2011年だったんですが、ニコ動を見はじめた2008年から、自分はどんな動画を投稿して人気実況者になろうかと日々画策してたんですね(笑)。マインクラフトはどなたかの生放送を見てはじめて知ったんですが、一目見てなんだこの面白そうなゲームは!と感じました。しかもフィールドが地球8個分と聞いて、次の日には製品版を買ってました。少しプレイした後、このゲームで実況やらないと、俺は人気実況者になれねえ!と一念発起したのがきっかけです。ゲームを買って1週間後には動画を投稿してましたね。マインクラフトは自由度が高いのが魅力です。

――動画投稿されてから割とはやく人気出ましたよね?

えふやん:はじめてアップした動画にニコニ広告をつけてくれた方がいて、それがきっかけで再生数が伸び、投稿翌日のカテゴリランキング100位圏内に入ることができたんですね。ゲーム実況動画はPart.1が再生数伸びる特徴があるので、ランキング入りできたのが大きかったです。そこからじわじわ再生数が伸びていきました。

――動画のタグに「全カットの人」とありますが、確かに大胆にカットしますよね。

えふやん:トークに自信がない人間なんで、普通に撮って出しのような動画にすると、間延びしちゃって見てられない感じになるんですよね。だったら見せなくたっていいじゃないかという割り切りで、全部カットしてしまいます。結果だけ見られればいいじゃないかと(笑)。

――なるほど(笑)。動画編集やイラストはどこで学んだんですか?

えふやん:小学生の頃から家にPCがあったので、GIFアニメとか遊びで作っていたりしていました。また、当時Flash動画も流行っていて見まくっていたので、自分もいつか作りたいという思いは昔から持っていましたね。絵を描くのも幼少時から好きで暇さえあれば描いているという人間だったので、そういった技術を学校で特別に学んだということではないです。確かに編集ソフトに関しては大学時代に知ったものを今でも使っていますが、ほぼ独学です。

――「好きこそものの上手なれ」ですね。動画を制作する中で、心がけていることや、大切にしていることは?

えふやん:テンポというか、だれるのが一番いやなので、そうならないよう気をつけています。あと、ニコニコ動画向けに作っているつもりなので、視聴者コメントを意識して作っています。例えば、動画がだれるとコメントで会話が始まり、それがきっかけで視聴者同士のケンカがはじまったりするんですよ。それが見てらんなくて。だったら2~3分に1回くらい画面が「www」で覆われるような爆笑できるシーンがあれば、ケンカしているコメントなんか流れてしまうので、そういう状況を作っちゃおうという感じです。ギャグマンガの1ページに何個ギャグを入れろ、みたいな感覚と同じですね。

なので、動画を撮る前にそういった構成をかなり意識します。特にマインクラフトに関しては、行き当たりばったりでは動画を作れません。それこそ2時間撮ったものがお蔵入りするなんてこともありますから。本当に考えてやらないと。

――テンポって大事なんですね。ところでいま注目しているゲームってあります?

えふやん:ちょうど先日開催されたE3で発表のあった任天堂のwii_U用ソフト「マリオメーカー」は注目してます。これは買わなきゃいけないなーという感じです(笑)

 

ゲーム実況者は十人十色。基本的に変わっている人が多い

 

――さて次は『ナカノヒトゲノム』についてお聞きします。この作品は主人公がゲーム実況者という設定ですが、ゲーム実況者の立場から見てどうですか?

『ナカノヒトゲノム【実況中】』

おそら/KADOKAWA

ネットで話題の8人のゲーム実況者たち。彼らがある日目を覚ますと、そこは謎のゲーム「ナカノヒトゲノム」の世界。彼らに課せられた条件は、数あるリアルゲームをクリアして、再生数1億を達成すること!! かくして8人の男女が挑むのは、危険で謎がいっぱいの探索型リアル脱出ゲームコミック!!
第1話を試し読みする

えふやん:時代を感じますね。ゲーム実況者がともすればアイドル視される中で、この作品のようにゲーム実況者が美少年、美少女に描かれたマンガが世の中に出ていくというのはとても面白く感じます。

僕は、ゲーム実況厨であり、ゲーム実況者でもあるという2つの側面があるので、2つの視点で作品を読めるのが楽しかったですね。

――『ナカノヒトゲノム』に取り込まれたら自分はどういう行動をとると思います?

えふやん:1巻の最後の方にある女性キャラ(路々森ユズ)が別の女性キャラ(更屋敷カリン)を連れてお風呂に行くシーンがあって、彼女は入浴という行為で再生数をかせごうとするんですが、僕はこのキャラに一番共感できました(笑)。再生数をかせぐためなら何だってする、といった姿勢がよいです。
 

路々森ユズはパズルや迷路、やり込みゲームが十八番のゲーム実況者

 
この作品の面白いのは、ゲーム実況者の個性がちゃんと物語の中に反映されているところですね。ゲーム実況者には、ゲームそのものを楽しもうとする人がいたり、どうやって再生数を伸ばそうか画策している人がいたり、動画を投稿するモチベーションは人それぞれなんです。僕なんかは、自分が楽しむのは二の次で、視聴者が動画で楽しめればいいじゃないかという立場ですし。

――実況するゲームジャンルによって実況者のタイプも変わりますか?

えふやん:最近、イベントやニコ生などで他のゲーム実況者の方とお会いする機会が増えたので迂闊なことは言えませんが(笑)、基本的にゲーム実況者の方って変わっている方が多いんですよね。個性が強いというか。ジャンルによってマンガほど性格が分かれるわけではありませんが、たとえば鬼畜系のプレイ動画の実況者の方なんかは、実際にお会いしてもストイックな印象があったりします。

――それは面白いですね~。同作のキャラのように同じゲームの実況者同士だと親近感が湧くものなんでしょうか。

えふやん:マインクラフトでいえば、実況者同士すごく仲が良いです。マインクラフトは、ゲームの中でマルチサーバを立ち上げてゲーム内でゲームを作ることも可能なんです。そういうので個人的にイベントを開いたりするので、そこに呼んだり、呼ばれたりしているうちに自然と仲良くなっていく感じ。マルチプレイできるのは大きいですね。

 

同作に登場する8人のゲーム実況者たちはいずれも個性的

 

――『ナカノヒトゲノム』のクリア条件は再生数1億回突破。動画再生数を伸ばすマル秘テクニックを教えてください(笑)

えふやん:僕は「全カット」が秘訣と思っているのですが、この作品のキャラには当てはまらないですね(笑)

――その他、作品を読んだ感想などあれば。

えふやん:普通にSFファンタジーとして面白かったです。あとアルパカの顔をしたゲーム運営者の正体は気になりますね。やることえぐいんですけど顔はかわいいんで。

 

――では、最後にゲーム実況者として今後チャレンジしてみたいことはありますか?

えふやん:動画あげて4年くらいになるんですけど、マインクラフトとスプラトゥーン以外の新しいゲームやってみたいですね。

――「マリオメーカー」期待してます(笑)。旅動画のようにゲーム実況以外の動画を制作する構想は?

えふやん:前々からいつかやってみたいと思っているのは、ボカロPVですね。自分で描いたイラストを動かしたりしたいです。

――それはぜひ見てみたいです。動画制作以外の活動をしていく予定は?

えふやん:やりたいことはいっぱいあるんです。ミニドラマとかスマホゲームとか、自分で作ってみたいと思うこともありますし、あとは舞台とかもすごい興味があります。ラーメンズの小林賢太郎さんがすごい好きなので、ああいう舞台を作ってみたいなって。舞台って動画と違って一発勝負なわけじゃないですか。そういうとろでやるのも面白いだろうなあと。ま、全般的に言えば、なんか楽しませられることをやっていきたいです。とはいえ僕はあくまでゲーム実況者なので、ゲーム実況を中心に活動したいですね。

――これからの活躍を楽しみにしてます。ありがとうございました!

 

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