悪女にならなきゃ恋は勝ち取れない! 『ヒロイン失格』は恋テクがいっぱい

マンガ・アニメ

2015/6/19

 想像してみてほしい。例えば、大好きな彼氏に可愛い幼なじみがいたら。例えば、その幼なじみが何かと自分たちの仲を邪魔してきたら……。というのは、いわゆる少女漫画にありがちな設定。普通なら、強い絆によって2人の愛は守られ、“脇役”である幼なじみは、人のものを横取りしようとしたしっぺ返しをくらって終了する。

 ところが、『ヒロイン失格』(幸田もも子/集英社)ではこの邪魔な“脇役”こそが主人公。あの手この手を使って、“王道カップル”の愛をぶち壊そうとする、とんでもない女なのだ。もし、こんなのが自分の恋敵だったらと思うと心底ゾッとするが、“恋にルールはない”を地で行くその姿勢には、少しだけ見習うところがあると思う。特に恋に消極的な女子にとっては。

「だって利太がヒーローの少女マンガがあるとしたら、あたしほどヒロインにふさわしい子っていないもん」とは、主人公の女子高生・松崎はとりの言葉。彼女は小学校の頃からある信念 を持っていた。それは、幼なじみの利太といつか恋人同士になること。自分以外の女はすべて脇役と決めつけていたある日、利太に足立という彼女ができる。脇役だと甘くみていたはとりだったが、足立のスタンスや振る舞いは王道ヒロインそのものだった。ヒロインの座を奪おうとするはとりは、足立に数々の攻撃を仕掛ける。

 足立に対して「利太はどんな女にも本気にならない」とネガキャンをしたり、幼なじみという特権を活かして、足立を仲間外れにする。さらには、トイレで足立の悪口を言いふらすという古典的な嫌がらせも行う。とにかく非道い。

 挙句の果てには、足立の短期留学の隙を突いて利太をデートに誘いだすことに成功。驚くべきは、これをきっかけに利太の気持ちがはとりに傾いてしまうのだ。なんならこの男も少女漫画の“ヒーロー失格”である。

 できれば王道ヒロインになりたい。ただ、実際問題、多少のしたたかさがなければ恋を勝ち取ることはできない。そんなことを教えてくれる教科書のような漫画だ。はとりのように、彼女持ちの男に無理やりキスしろとは言わないが、ときにはそれくらいのアグレッシブさがあってもいいのかも……いや、ダメだけど。おりこうさん向けに書かれた恋愛指南書よりは遥かにタメになる作品。本作は実写映画化され、9月に公開予定。はとりを演じる桐谷美玲の“ヒロイン失格ぶり”は今から楽しみだ。

文=中村未来