『カゲロウデイズ』じん×『月下ノ外レ外道』沙雪 特別対談(前編)

マンガ・アニメ

2015/6/27

「外道」と呼ばれる烏天狗の妖がはびこる世界。唯一、異能力・六道輪廻の門を解放して外道に対抗できる警察組織「六道」。外道でありながら六道に所属する、異端の主人公・五六七の和風戦闘奇譚!!――WEBコミック誌「ジーンピクシブ」にて連載中の『月下ノ外レ外道』は、『ミカグラ学園組曲』『ダブルゲージ』の沙雪が贈るダークファンタジーだ。

 そのコミックス第1巻の発売を記念して、音楽家・小説家の顔を持つマルチクリエイター“じん”との対談が実現。

 沙雪の大ファンと公言する“じん”の熱すぎる作品レビューに加え、最新作『MEKAKUCITY M’s2』(1st PLACE)の制作秘話や二人の作品のルーツなど、同世代のクリエイター同士だからこそ共感できる話が次々と飛び出した。

 

“六道”が仏教の中でどういうものか考えながら読むとさらに面白い

 

――じんさんは以前から沙雪さんの作品を読んでいるそうですね。

じん本当にファンで、前作である『ダブルゲージ』以前にどのような活動をされてたのかなって、沙雪さんのブログの過去記事をたどって追いかけているほどです(笑)。なので、今回の連載開始は本当にうれしい限りで、そうそう!沙雪さんならそう!ってなりながらいつも楽しみに読ませていただいています。

じん
作詞・作曲家、小説家、マルチクリエイターとして活動。2011年より動画投稿を始め、歌詞のストーリーがリンクした楽曲群「カゲロウプロジェクト」の関連動画は1億再生を超える爆発的ヒットに。2012年5月にCDデビュー、2ndアルバム「メカクシティレコーズ」はオリコン初登場1位を獲得。2014年には自身原作のアニメ「メカクシティアクターズ」が放送される。自身執筆の小説、漫画「カゲロウデイズ」シリーズは累計780万部を突破する等、様々なメディアで活躍中。
twitter:@jin_jin_suruyo 公式サイト:http://1stplace.co.jp/artist/jin/

沙雪:すごく光栄です! 前作を読んでくださっていたのは耳にしていました。続けて新作、またそれ以前の作品も続けて読んでくださっているのは、本当に嬉しいことです。

――その『月下ノ外レ外道』、いよいよコミックス発売ですね。じんさんはどのあたりがおすすめポイントなんでしょう?

じん『ダブルゲージ』の時から魅力的だなと思っているのは、沙雪さんの作品はしっかりと王道展開なところ。例えば、主人公がかっこいい。『ダブルゲージ』では主人公が病弱、本作では身内が人の道を外れるなど、生理的・生命的に劣性といった、深刻で分かりやすいテーマに主人公が立ち向かっていくという、みんなが納得できる状態を作ったうえでスタートするんですよね。

ひねくれたことをやろう、ストレートなことをやろう、っていうバランス感覚はすごい難しいと思っていて、僕も自分の曲では「メロディーはわかりやすく、日本に昔からあるようなもので、みんなに気持ちいいって思ってもらいながらも歌詞は今までにないものにしたい」って考えてますが、そんなに簡単にはいかないんですよね。沙雪さんの作品は、間違いなく気持ちよく読み進められるのに、ひとつひとつの能力やアイコンだったりに独特なセンスが散りばめられて、そこに惹きこまれます。

――なるほど、王道と邪道のバランスが大事ということですね。

じん僕ら世代の特徴なのかもですが、呪いのようなものを負っている中で戦っていくっていうのは、主人公に感情移入しやすいんですよ。勝っていってほしいというか、塗り替えていってほしいっていうか。本作の主人公・五六七(みろく)もそういうふうに思えるようなキャラクター。あと表情もいい。悔しいとか泣くとか笑うとか、特に笑うときの天真爛漫な感じがすごい好きです。

――本作には“六道”という仏教の概念も登場しますが、このあたりはどうですか?

じん実は本当に偶然なんですけど、僕も次回作のテーマを仏教をテーマにしたいって思ってた時期があって、そんなときに沙雪さんの作品に“六道”が出てきたんでてびっくりしたんですよ。もともと六道を輪廻転生して解脱してニルヴァーナに入るっていう仏教の考え方にすごい興味があって、以前から六道についていろいろ調べていたのですが、沙雪さんは六道を異能力に当てはめるときのバランス配分がすごいというか、「もうオレできないじゃん!」って思いました(笑)。

これから読む方には、“六道”がどういうものなのかっていうのとも照らし合わせて読んでいただきたくて、そういうところに本作の面白さがあると思います。僕はそういう風に楽しんでいます。本来はバトルに向かないものが能力として存在しているっていうのはすごいなって。

――沙雪さんは今回なぜ六道というテーマを選んだのでしょう?

沙雪:担当編集さんから提案されたっていうのが最初です。『ダブルゲージ』の連載が終わって、新作をどうしようかという話になったとき、「六道どう?」って聞かれまして。

私も、『ダブルゲージ』が洋モノといいますか、外国風といいますか、そういうテイストだったので、それとはまったく違う形にしたいっていうのがあったので、六道というアジアンなテイストで、あ、これかな、という形で決まりました。

●沙雪(さゆき)
漫画家。九州在住。第6回MFコミック大賞にて大賞を受賞。月刊コミックジーンにて『ダブルゲージ』(全6巻)を連載。現在は、月刊コミックジーンにて『ミカグラ学園組曲』(既刊4巻)、ジーンピクシブにて『月下ノ外レ外道』をダブル毎月連載中。
twitter:@ggsayuki ブログ:沙礫@蕎麦屋


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――沙雪さんご自身のおすすめポイントは?

沙雪:やっぱり一番は、第一話です。一話が物語のカギというか、主人公・五六七(みろく)が外道として戦っていくきっかけの話なので。ここを飛ばすとその先の話が何も伝わってこないってくらい詰め込んだので、ぜひ読んでいただきたいです。

じん主人公の未熟さが業となり身近な人に災いがふりかかるっていう、作品を通して仏教精神というか、外道に落ちるっていう業と主人公がずっと戦っている作品なんですよ。罪、自分の弱さ。腕力じゃなくて、精神的な弱さ。そしてそれを妹に気づかされてはっとして戦いに向かう。未熟な部分を修行して人間に戻ろうとする精神。このあたりの描写がほんとにすごいなあと。

沙雪:ありがとうございます!細かいところや深いところを読んでいただいて、本当にうれしいです。読者の方から直接こういった意見を聞く機会はないのでありがたいですね。

――実際、『月下ノ外レ外道』を作る上で苦労したところってどこですか?

沙雪:一話に苦労しました。内容的にもですけど、背景的に苦労しました。私、背景苦手で(笑)。『ダブルゲージ』はファンタジーだったので自由に描いていたんですけど、『月下』はアジア、日本という大前提があったのでお寺や神社だったりを細かく描いていくのが本当に大変でしたね。

――――資料は集めてらっしゃるんですか?

沙雪:今回は資料集めに行きました。五六七(みろく)と一二三(ひふみ)の兄妹が住んでいた白峯神宮は京都に実在してまして。主人公たちの敵キャラである崇徳院のモデルとなった、実在するほうの崇徳院が祀られている神宮です。崇徳院を敵キャラにするって決めた時に、現在の崇徳院はどういう状態なのかと調べて、白峯神宮に祀られていると知って取材しに行きました。物語でも崇徳院が封印されているのが白峯神宮で、主人公と敵キャラの関係性を深めるため、ここを兄妹の家にしようと。

――そういう発想が世界観にリアリティを生んでいるのかもしれないですね。

じん現実から受ける影響で、自分の都合に合わないものってすごい使いにくいなって思うんです。町並みは好きだけど、冬を書きたいのに雪の降らない地域だったとか。オリジナルで変えてしまおうかってするんですけど。現実のものをそのまま世界観に落とし込めると説得力が全然違って。自分にはそういうジレンマがあるので、そのままの形で生かせる沙雪さんの才能に憧れます。

沙雪:すごいべた褒めで、こんなにいいのかってくらい(笑)。恐縮です。そうですね、実在のものをファンタジーに混ぜると必ずと言っていいほど不都合が起きるんです。けれどそこは我侭に、ある意味「ファンタジーだから」を言い訳に盛り込んでいっています。

――お好きなキャラクターはどのキャラクターですか?

沙雪:女子でいうと一二三(ひふみ・主人公の妹)が好きなキャラクターですね。ある意味特別なキャラです。『ダブルゲージ』からなんですけど、私が描くと女の子が基本強いんですね。

じん強いというか、ポジティブな要素というか。

沙雪:ポジティブな、ぐいぐい来るかんじの女の子たちばっかりなので、大人しいタイプはこの子が初めてで。すごい毎回描いてて楽しいです。このおどおどした感じとか。

 

一二三は崇徳院の呪いで鬼にされてしまう

 

――守ってあげたいって感じですかね。

沙雪:そうですね。そんな感情も含めて、性格は似ていない兄妹共通の太眉に「つながり」を感じていただければと。男子側だと崇徳院です。描いていて楽しいです。キャラを作るにあたって、気味の悪いキャラを作ろうと思っていたので、崇徳院は一挙手一投足に気味の悪さを出すようにしています。

じん敵として、底の見えない何かがありますよね。気味が悪いって一番怖いというか、得体がしれない。最初に封印から出てきたときのぞっとする感じ。あと僕は、文月ちゃんが気になってます。作者的に彼女どうなんでしょう?

沙雪:文月は若干頭がおかしい子です(笑)。彼女の能力に関係もしているのですが、食べることが彼女にとって大事な存在意義で。大好物である漬物の話題になると、より狂ったキャラになっていきます。

じん大好きです(笑)。ごはんいっぱい食べるみたいな子大好きです。文月ちゃん、今後のエピソードが楽しみなキャラです。

沙雪:頭おかしいエピソードしか考えてなかったので、良いのを考えておきますね(笑)。

 

⇒【対談企画 後編】じん、沙雪、二人の創作のルーツを探る

 
 

『月下ノ外レ外道』

沙雪/KADOKAWA

正に悪そのもの。「外道」と呼ばれる烏天狗の妖がはびこる世界。唯一、異能力・六道輪廻の門を解放して外道に対抗できる警察組織「六道」。外道にして六道に所属する、主人公・五六七の和風戦闘奇譚!!『ミカグラ学園組曲』、『ダブルゲージ』の沙雪が贈る、ハイクオリティダークファンタジーコミック!!
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