『カゲロウデイズ』じん×『月下ノ外レ外道』沙雪 特別対談(後編)

アニメ・マンガ

2015/6/29

小説やマンガを読みながら聴いてもらえるというのは、僕らならでは。

 
⇒『カゲロウデイズ』じん×『月下ノ外レ外道』沙雪 特別対談(前編)
 

――後編ではじんさんの作品についてと、お二人のルーツについてお聞きしていきます。まずは『MEKAKUCITY M’s2』がどういった作品か教えてもらえますか?

じん:自分が原作・脚本を手がけたアニメ『メカクシティアクターズ』の主題歌や挿入歌をすべて収録したCD4枚組のサウンドトラックアルバム『MEKAKUCITY M’s COMPLETE~メカクシティアクターズ・ヴォーカル&サウンドコレクション~』が4月に発売されたのですが、『M’s2』は、このうちのDisc2と4が収録された廉価版です。『M’s2』にしか入っていない曲を聴きたい方にはお待たせしましたという感じです。

『MEKAKUCITY M’s 2 ~メカクシティアクターズ・ヴォーカル&サウンド コレクション~』
CD2枚組 / ¥2,980 + 税
2014年4月に放送された、アニメ「メカクシティアクターズ」内で放送された、主題歌、挿入歌、BGMの他、このアルバムの為に新規レコーディング曲を多数収録!

(C)KAGEROU PROJECT / 1st PLACE

 

――『M’s2』の元になったコンプリートアルバムの制作はどうでしたか?

じん:大変でした(笑)。自分の人生の中で、こんなにたくさんの、音楽の道を志す人たちと一緒にひとつの媒体を作るっていうのがはじめてで。でも、それぞれが向いている音楽の方向を勉強させていただきながら、こっちを向いてもらうんじゃなくて、こちらからコミットしていけたらと思いつつ、我慢せず思い切った作品づくりができました。五年間作ってきた音楽の最終形態ということで、感慨深い作品となりましたね。

沙雪:曲作りって私の計り知れないところがあります。深いところから生み出す情熱や、それを体現する音楽を紡ぎだすっていうのは本当に素晴らしいです。

じん:そう思ってもらえるとうれしいですね。次ももっとやばいのをつくらないといけないなと思います。僕は、音楽よりマンガを作るほうがずっと大変だと思っていて、それだけリスペクトしてマンガとかにも携わらせてもらっています。絵っていうのは一瞬見ただけで説得力があって、文章よりも何よりもすごいスピードのある、説得力を持っていると思うんです。それを生み出すことってすごいなって。

音楽には音階があって、その組み合わせで作っていくんですが、十二の音階で最初に何を弾こうっていうのは割と決めやすい。一方、絵で、白い紙の上に初めて点をつけて線を引くっていうのは、音楽とは違う緊張感があると思いますし、不思議な感じです。白い紙を前にして、どうやって、何からはじめるんだろうって。本当にすごいと思います。でもだからこそ負けたくないなと。話を考えるときのモチベーションにもなってます。

――沙雪さんは、カゲプロ関係でお好きな曲を選ぶとしたら何ですか?

沙雪:「空想フォレスト」です。本当に好きで。マンガ描きながら聴いています。

じん:それはうれしい!

 

 

――「空想フォレスト」のどの辺が好きなんでしょう?

沙雪:世界観やマリーの心情がすっと入ってきたのが気持ちよくて。私の場合、気に入った楽曲作品って聞きながら脳内でアニメーションが流れるんですよ。それはPVとは違っていて。他の曲もそうなんですが、この曲が一番脳内でぐっときたんですね。カゲロウプロジェクトはキャラクターごとの歌があるっていうのがいいですよね。この曲を聴いてマリーに惚れました(笑)。

じん:僕も好きな曲といったら「空想フォレスト」かも。確実にトップスリーに入ります。長男次男三男で誰が好き?って言われる感じで曲の好きに順位はないんですが、好みで言えば「空想フォレスト」かな。ポップなのが好きなんで。歌詞の方もマリーのイメージ通りに表せかなたと思います。あと、歌詞で敬語を使ったのは初めてだったので、自分の中では「カゲロウデイズ」と並んで特別な曲ですね。

沙雪:曲一つにしても、音や歌詞、さまざまな要素があってそれに常に挑戦されているんですね。もっと大好きになりました。

じん:そういってもらえる曲をまた書きたいなー!(一同笑い)

――じんさんに伺います。『MEKAKUCITY M’s』の聴きどころをぜひ!

じん:質量の大きい作品になっています。ディスク4枚もあるので、通しで聴くとガチンコな感じになってしまうかと。オムニバスな作品になっているので、たとえばランダム再生などして流れを気にせず聴いていただいてもよいと思います。もちろん、曲順で聴くのも楽しいですけど。

聴きどころといえば、サウンドトラックがついてくるところですね。サウンドトラックは、それだけで聴いてもつかみにくいところがあるかもしれないので、たとえば小説やマンガを読みながら聴いてもらえたら、僕らならではの作品の提供方法になると思います。そうしてもらった場合、ぜひ感想も聞いてみたいです。

 

尊敬している人ほど超えていくことが大事だと思う

 

――話はがらっと変わるんですが、お二人は子供の頃はどんな感じだったのですか?

沙雪:私は、小学生の頃は外に出て遊ぶのも好きだったんですけど、その頃から身近にマンガがあって、ずっと読んでいましたね。うちがゲーム禁止だったというのもあり、他の子たちがゲームをしている間もずっとマンガにどっぷりでした。ある意味、今こうやってマンガを描いて、皆さんに読んでいただいて、気に入っていただけたりして、ということ自体が、私にとっては、小さいころ支えてくれたマンガという存在に対しての恩返しだと思っています。

――絵を描き始めたのはいつごろですか?

沙雪:もう覚えてないです。相当小さいころから、それこそ落書きレベルからずっと描いていました。マンガという形にしたのも、あまり見せられないようなものですけど、小学校の頃から描いたりしていましたし。いつからと言われると、本当にわからないですね(笑)

――じんさんの子供時代はどうでした?

じん:僕は北海道出身なんですが、父親が教職員をやっていたので、いろいろなところに転勤するような幼少期でした。生まれたのが北海道の利尻島という、離島のようなところだったんですが、父の転勤で北海道本土に住むようになった時も村みたいな場所で。人口何千もないような、小学校全校生徒10人のような場所で育ちました。後ろに山があり目の前は海、というような場所でした。マンガもないし、テレビも天気が良ければ4チャンネル映る。ゲームも売っているところまで2、3時間かかったので、遊び道具が全然なくて。なので、妄想していました。「こうだったら面白いのに」「こういうのがあったらいいのに」みたいな感じで。キーボーディストのおじさんにもらった鍵盤だけがあったので、そのキーボードでひたすらテレビのCMの曲を弾いたりして遊んでました。

――作曲活動はいつごろから?

じん:高校の頃からです。作曲活動と呼べるかどうかなんですが、中学三年生の時に初めてロックバンド(THE BACK HORN)を聴いて、そこから音楽をやりたいと思いギターを弾き始めました。18歳ぐらいになって、初めてオリジナルの、歌モノ、になりきれなかったんですけど、もがき、みたいなのを作りました。ちゃんとアレンジまで完成させて、曲として歌モノができたのは「人造エネミー」が初めてです。

 

 

――音楽活動と同時に物語の創作活動などもされていますが、こっちの方のルーツは?

じん:小さいころから妄想するのが好きで、絶対に曲を書いたらストーリーを入れようと思っていました。でも自分で歌うのは気持ち悪いというのがあって。ボーカロイドがいいきっかけで、これだったらストーリーっぽい歌詞を言っても、説得力が生まれるのではと思いました。今の作品には、幼少期から布団の中で妄想してたストーリーなどが出てきたりします。「目を~する」という日常でも使う慣用句が、そのまま能力のアイコンとして使うのを思いついて以来、ずっと「目を~する」能力者たちの話を考えていました。

沙雪:あの技名、能力名は初めて見たとき衝撃でした。私からしてみたら、目の能力は、たとえば邪気眼のように目だけの能力になってしまうんですが、そこに慣用句を使い、関係性を描くのがすごいなと。

――特に影響を受けたマンガ作品を3つ挙げるとしたら、何ですか?

沙雪:挙げだしたらきりがないんですが、一番にまず挙げたいのは藤崎竜先生の『封神演義』。それから、私が女の子を描くきっかけになった、今井神先生の『NEEDLESS』。それまで少年誌系ばっかり読んでいたので、女の子は基本的に守られるヒロインの扱いでしたが、『NEEDLESS』を読んで、戦う女の子、熱血な女の子を描くのに目覚めました。それまで女の子のキャラというのを描いたことなかったんですが、それを読んでから認識が変わり、描くようになりました。

『月下ノ外レ外道』に絡めて言うと、外道をイメージしたきっかけになったのは、久米田康治先生の『さよなら絶望先生』。最初はもっと、あれぐらいの大正ロマンな話でいこうかと思っていたんですが、それよりも前の話になりました。『絶望先生』の世界観や雰囲気が好きで、あれに衝撃を受けました。

  • 『封神演義』
  • 『NEEDLESS』
  • 『さよなら絶望先生』

 

――『絶望先生』は予想外でしたね。

じん:『るろうに剣心』とか、『サクラ大戦』とか、そういうスチームパンクな感じかと思っていたら、『絶望先生』でしたか。

沙雪:いえもう、挙げだしたらきりがないので(笑)。

――じんさんはいかがですか?

じん:一番に挙げたいのが『金色のガッシュ!!』。あれが本当に好きで、泣いたし、笑ったし、熱くなったし、成長したなと思えた作品でした。戦いもかっこいい、かけひきも熱い、友情の繊細さも分かりやすくて、涙のシーンがちゃんと泣けて。最終巻でちゃんと終わった、堂々とした作品でした。呪文もかっこよかったですしね。「ザケル」など。

沙雪:耳残りがいいし、叫んでかっこいいし、語呂がいいですしね。

じん:パワーアップすると「ガ」がついたり、ちゃんと形式化しているところに呪文へのリスペクトを感じました。新しい呪文が出るたびにその最上級に期待したりして、その余白感もよかったです。あとは、キャンチョメが強くなっていくようなのがマンガで一番すきで。『ワンピース』のウソップがかっこよくなっていったり、『MÄR』でいうとこのジャックが頑張る瞬間もいいですし。

あとは、乙一先生の『失はれる物語』にすごい影響を受けました。交通事故に遭った主人公が、手の甲と指先を少し動かせる以外の感覚をすべて失ってしまう。手の甲と、指先をトンと動かすだけで、奥さんや娘との意思疎通を取る主人公の主観で描かれた物語は、小説ならではの表現でした。小説として、こんなに小説ということをリスペクトした作品があったかというぐらいの。小説であることをしっかりと考えさせられました。

三つ目は、映画の『サマータイムマシン・ブルース』。「サマータイムレコード」のタイトルは、これのリスペクトです。内容は違いますけど。高校生たちがタイムマシンを見つけて、昨日と今日を行き来する話。壊れたエアコンのリモコンを過去に取りに行くなど、やっていることが小さいけれど、結構ハラハラする。一回目にタイムマシンに乗るまでの間にあった、一瞬で済ますようなやりとりの裏で、未来の自分たちが大変なことをしていた、というところに感銘を受けました。なんであのキャラがあの時こう言ったのか、あのキャラは何故こうだったのか、あのキャラがこうだったらドキッとするな、など、時系列を見渡せる構成とコメディには影響を受けましたね。

  • 『金色のガッシュ!!』
  • 『失はれる物語』
  • 『サマータイムマシン・ブルース』

 

――ルーツをたどるとお互いの個性がはっきりと出ますね。さて、最後の質問です。スケジュールや予算など気にしないで好きにしていいとしたら、どんな作品を作ってみたいですか?

沙雪:そうですね、漠然としたことではあるんですが、じんさんと共同で作品を作れたら楽しそうだなと。

じん:あー! そういってもらえるなら何でもやります!(笑) ずっと前から、いつか沙雪先生がやりたい!と言ってくれるようなアイディアとかが、できたらいいなと思っていました。「こういうの作ってみたいって思うんですけど面白くないですか?」みたいな話をしたいですね。

沙雪:制作前の、「こういう話を作ろう」って話しているときが一番楽しいですしね(笑)。

じん:一番楽しいですね! その段階で終わればいいのにって思うぐらい楽しいです(笑)。

――二人の共同作品はぜひ見てみたいですね。では締めに、読者の皆様に一言!

沙雪:『月下ノ外レ外道』一巻が発売されるということでこの対談を企画していただいて、実行することができ、本当にありがたく思っています。この作品は、今まで描いていた作品とは全く毛色が違うものとして作っているので、本当に私自身が楽しんで描いています。今までとは違う見せ方をしようだとか、こうしたらもっと面白くなる、とか。じんさんに好きだといっていただいた『ダブルゲージ』を超えるよう自分自身に挑戦して自分の全力を込めています。それが皆さんに伝わるようにひたすらノンストップでがりがり描きまくってるので、一読していただきたいなと思っています。よろしくお願いします。じんさんと対談できて、本当に嬉しかったです。

じん:沙雪先生のファンなので、僕も対談できて良かったです。じんという名前で、『カゲロウデイズ』の小説・コミック、それ以外に音楽を制作したりしていますが、ちょうど沙雪先生の『月下ノ外レ外道』の連載開始とクロスする感じで僕は音楽のほうでひと段落ついたので、これから新しい作品をもっと作っていきたいなという感覚があります。新しい作品を作るということは、過去の作品がある以上、その過去の作品が新しい作品に怯えてしまわないようにしなくちゃなという時期です。より一層多くの作品を世に発信していきたいと思っています。成長しながら突き進めていきたいと考えています。新しい作品をやりたいというのも漠然としかなくて、沙雪さんに一緒にやりたいですと言っていただいてキュンときました(笑)。

沙雪:お互い負けないように頑張りたいですね。こういう職に就いた以上、負けないぞという気持ちがある一方、そう思っている相手と仕事をできる楽しみもありますから。

じん:尊敬している人は高いところにいるものと思ってしまいますが、尊敬している人ほど超えるのが大事ですね。

――お二人ともありがとうございました!

 

⇒『カゲロウデイズ』じん×『月下ノ外レ外道』沙雪 特別対談(前編)

 

『月下ノ外レ外道』

沙雪/KADOKAWA

正に悪そのもの。「外道」と呼ばれる烏天狗の妖がはびこる世界。唯一、異能力・六道輪廻の門を解放して外道に対抗できる警察組織「六道」。外道にして六道に所属する、主人公・五六七の和風戦闘奇譚!!『ミカグラ学園組曲』、『ダブルゲージ』の沙雪が贈る、ハイクオリティダークファンタジーコミック!!
第1話を試し読みする

 

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