ブスは生きづらい=じゃあ整形して美人になったら絶対に幸せ……って公式は成り立つの?【北条かやインタビュー前編】

暮らし

2015/6/28

 顔に対するコンプレックスを吐露する20代前半のアイドルに対して、女装タレントが「整形したって、あんたはブスっていわれる」といい放つ―6月中旬に放映されたバラエティ番組の一幕だ。そのアイドルは、アイドルにしてはかわいくないといわれることが多いが、「いまよりもっとかわいく、きれいになりたい」というのはアイドルならずとも多くの女性が願うこと。そのために〈美容整形〉という手段があることも、いまや知らない人はいない。整形をして自分の顔に自信をもてるようになれば、いまよりもっと輝けるはず……という整形肯定派の女性の希望をくじく発言だった。外科的処置によって美を手に入れても何も変わらない……果たしてほんとうにそうなのだろうか。

 美容整形の市場規模は2000億円を超えるといわれている。その利用者たちは、ただ顔を変えたいだけでなく、そうすることで何かを得たくて美容クリニックの扉を叩いているのではないか。だが、顔を変えることで、ほんとうに人生は好転するのか。はたまた、その逆なのか……。そんな疑問に社会学の面からアプローチする『整形した女は幸せになっているのか』(星海社新書)が先月、発売された。著者の北条かやさんと一緒に、美と幸福の関係を考える。

―北条さんにとって〈整形〉とは、そもそもどんなものだったのでしょう?

北条かや(以下、北)「私はもともと作家の中村うさぎさんが好きで、2006年ごろから彼女が整形にのめりこんでいくさまを赤裸々につづった文章を、リアルタイムで読んでいました。感化されて自分でも〈実験〉したくなり、頬にボトックス注射を打ったこともあります。うさぎさんがご自身のエッセーに書かれていたとおり、私も自分のフェイスラインが変わっていくことを最終的にはなんの違和感なく受け入れられました。私の顔は元からこうだったんだと、思ってしまうほどでした。うさぎさんはほぼ全身を整形されていて、その体験だけでなく、美醜の問題やコンプレックスとの向き合い方にまで踏み込んだ本を書かれていますから、それを超えるものは書けないと思っていたのですが、これは彼女にインタビューできるチャンスだと思い、整形をテーマに選びました」

―本書では、「それぞれの“ダウンタイム”ストーリー」として、実際に美容整形を体験された女性へのインタビューを行っています。女性たちの第一印象はどんなものでしたか?

北「事前に整形した箇所については情報を得ていたので、まずそこに目が行きましたね。みなさん、目は必ず整形されているのですが、パッと見てきれいなラインだと感じました。涙袋にヒアルロン酸を入れている子は、ほんとうに愛らしい目になっているなぁと感心しましたね」

―この方たちにかぎらず、いきなり一足飛びに整形にいくのではなく、まずメイクでコンプレックスを解消しようとするケースが多いのですね。

北「みなさん、ほんとうに涙ぐましい努力をされています。いちばん多い悩みは、なんといっても一重まぶたですね。いろんな手を尽くして、それを二重に見せようとします。1990年代後半に“アイプチ”が発売され、続いて“メザイク”が大ヒットします。私が高校生のときも、そういったものを使って二重を作っている子はクラスに何人もいました。当時は浜崎あゆみさんや倖田來未さんがブレイクしていて、彼女たちのようなぱっちりした二重がよしとされ、女の子の憧れを集めていたんです。幅広並行二重が理想とされているのは、いまも変わりません。今回取材した女性も“いまは目さえ大きければいいって風潮がありますよね”といっていましたし、私もはげしくうなずきました。隣で聞いていた男性編集者は、ちょっと引いていましたけど(笑)」

―メイクの腕が上がるほど、すっぴんとのギャップが出てきますね。

北「そのギャップが大きくなればなるほど、整形へのモチベーションが上がります。〈メイクをした自分=ほんとうの自分〉と感じるようになり、すっぴんをそっちに合わせたくなるんです。だから整形で元の顔を変えよう、メイクした顔に近づけようというのが、特に若い世代の女性によく見られる考え方です」

―整形とは〈普通〉になるための手段だと解釈される研究者もいるようですね。

北「その研究は2000年前後に行われたもので、当時はいまよりも格段に整形に対するハードルが高い時代でした。だから容姿のことで苦労してきて、“せめて普通に”という強い思いを持った人が整形に踏み切っていたのでしょう。私は“普通になりたい”と願望のなかには、すでにナルシシズムが含まれていると考えます。“この顔は、私のほんとうの顔じゃない”“ほんとうの私はもっときれいなはず”と思っているということですから。そして美容整形が当時よりずっと身近になったいま現在、整形する女性たちを動かしているのは、もっと前向きな動機だと私は見ています」

―韓国における整形観も本書では紹介されていますが、それに近いのでしょうか?

北「はい、韓国では“自信をつけるために整形する”という考えが主流です。“二重にしたら営業成績が上がった”という営業職の男性もいるぐらい、整形が肯定的に語られます。そして、身内同士なら整形したことを隠さなくてもいいんです。近年の日本でも、この傾向が強くなっていますね。友人や彼氏には、自分が整形したことを前向きな行為として打ち明ける。なかには彼氏から“整形してよかったじゃん”といわれた女性もいて、私もこれには驚きましたね」

―かたくなに隠すものではなくなりつつあるということですね。

北「私がもし将来、アンチエイジングの美容整形をするとしたら、友人たちには特に構えずに話すと思うんですよね。絶対に知られたくない、ということはありません。〈美容外科〉が〈美容クリニック〉と呼び替えられるようになったり、大手クリニックがポジティブな印象をあたえるCMを流してイメージアップを図ったりといった動きも、整形の後ろめたさを払拭している要因のひとつです。雑誌『姉ageha』あたりでは、イケメン医師が登場して“僕が全面的にあなたの美を叶えます”と呼びかける。カウンセリングだけでも受けてみようかしら、とつい思っちゃうようなページ作りに抵抗を感じる読者はあまりいないでしょうね」

 後編では、整形によって女性たちは何を得るのか、それは〈幸せ〉につながるものなのかを、引き続き北条かやさんにうかがいます。

後編に続く】

取材・文=三浦ゆえ