歌で『ねないこだれだ』のトラウマを吹っ飛ばす! 史上最年少・0歳児による絵本レビュー(?)

出産・子育て

公開日:2015/7/2

 せなけいこ先生といえば、『ねないこだれだ』『おばけのてんぷら』『にんじん』など、誰もが読んだことのある名作絵本の生みの親として知られている。特に1969年発売の『ねないこだれだ』は、夜おそくまで起きているとおばけに連れ去られるというショッキングな内容で、多くの子供の心に消えないインパクトを残した。その衝撃から、「トラウマ絵本」と言われることもある。

 筆者も、子供を産んだことにより、ふたたび“せな絵本”のお世話になるターンがまわってきたようだ。その手始めとして選んだのが『せなけいこの音のでるどうようえ・ほ・ん』(ポプラ社)である。

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 そもそも普通の絵本でなく、「音の出る絵本」を選んだ理由は、保育園の先生におすすめされたからだ。わたしは未婚で出産したため、家では基本的に娘とふたりきり。休日ともなると、間が持たないことがしばしばある。一緒に遊んであげたいのだが、いったい何をしたら楽しんでくれるのか。それを相談したところ、長く使えて一緒に楽しめる遊び道具として、「音の出る絵本」なるものの存在を教えてくれたのだ。

 今回は、本書を娘(2015年1月生まれの満6ケ月)に読み・歌い・聞かせてみて、その反応をもとに内容をご紹介していこうと思う。本書には、童謡全6曲が収録されていて、それぞれの歌詞に関連したせな先生の絵本の挿絵があわせて掲載されている。

さすがせな先生。表紙を見せたとたん、娘の食いつきがすごい

1曲め:おばけなんてないさ
しょっぱなから本命のおばけものが登場。うちの娘にはまだ「おばけが怖い」という概念がないため、泣くこともなく興味深そうにおばけの絵に手を伸ばしていた。予想外に、曲が歌声入りだったためまずわたしが驚いた。

2曲め:おふろのうた
初めて聴く曲で、作詞がなんと秋元康氏。「パパとはお風呂に入りたくない」という子供の心情を歌った曲だ。うちではパパとはドラえもんのような想像上の生き物ということにしておこう、と思った。娘の反応は、じっと絵を見ているものの特に大きなリアクションもせず、可もなく不可もなくというところ。

3曲め:ねこふんじゃった
あらためて歌詞を見て、自分が「ねこふんじゃった」というフレーズ以外の部分を知らなかったことに気づく。この本のなかでは一番アップテンポなナンバーで、娘もニコニコしながら腕を振っていた。

4曲め:コンコンクシャンのうた
これも初めて聴く曲。イントロから木琴やトライアングルのような打楽器系の音が使われていて、意外にも娘の反応が一番よかった。目を見開き、腕を激しく上下に振って腹に打ち付けながら興奮している(たぶん、彼女なりに音楽にノッている)様子が見てとれた。

5曲め:うさぎのダンス
娘はうさぎがたくさん並んでいる絵が気に入ったようで、懸命に手を伸ばして絵を触ろうとしていた。母的にはもう少しテンポが速くてもいいかな、という感想。

6曲め:ハッピー・バースデイ・トゥー・ユー
誕生日じゃないときにあらためて歌ってみると、この曲の持つウキウキ感はすごいと感じさせられる。ミドルテンポの曲ながら、娘もニヤニヤと楽しげにしていた。

 全体的な感想としては、歌声が入っていることにより、知らない曲も一緒に歌えるようになるところが利点である反面、2番以降や、歌詞をアレンジして歌うというようなことができないところがやや残念ではあった。

 娘が生後半年ということもあり、まだ自分でボタンを押して音を鳴らして遊ぶというところまではいかないが、月齢ごと、そして1歳、2歳と年齢を追うごとに違った楽しみ方ができそうだなと感じた。特に、言葉を知り、おばけの恐怖を知ったあとでの『ねないこだれだ』からの「おばけなんてないさ」の反応が、今からとてつもなく楽しみだ。

文=本宮丈子