画家を目指す少女・アルテに、思わず感情移入。『アルテ』第3巻が発売!

アニメ・マンガ

2015/7/5

 6月20日、『アルテ』待望の第3巻が発売された。
 『アルテ』は新進気鋭の女性漫画家、大久保圭の初長編作品で、現在『月刊コミックゼノン』に連載中。2014年の「NEXTブレイク漫画RANKING」では、15位に選ばれた。

 芸術など文化活動が花開いた、16世紀初頭(ルネサンス期)のフィレンツェ。あまり裕福でない貴族の娘として生まれたアルテは絵に魅せられ、絵を描くことにのめりこむ。男に気に入られ、結婚して「まともな生活」を送ってほしいと望む母に反発し、家を飛び出したアルテは、「画家になり、自分の力で生きていく」ために、町じゅうの画家工房をまわる。当時、画家(美術職人)になるためには、工房の親方の下に弟子入りし、修業するしかなかった。「女だから」という理由で断られ続けたアルテだが、彼女の熱意と根性を認めた画家・レオの元で働くことになる――。

 以上が、『アルテ』序盤のあらすじである。この後も女性ゆえに差別されたり、初めての恋に戸惑ったり、さまざまな困難がアルテを待ち受ける。
 本作品の魅力は、なんといってもアルテのキャラクターにある。負けず嫌いで頑張り屋。目をきらきらさせ、夢に向かって突き進んでいく。いささか「朝ドラのヒロイン的」ではあるが、そんな彼女が、持ち前の明るさと負けん気の強さを発揮して、立ちはだかる壁を乗り越え、徐々に理解者を増やしていくさまは、やはり痛快だ。

 アルテをとりまく人々も、個性的で愛しい。無口で強面で厳しいが、男女の隔てなく、一人の人間としてアルテに接し、育てていこうとする親方のレオ。美しさと知性を武器に男たちを惑わせるが、アルテの率直さやひたむきさを愛し、かわいがる高級娼婦・ヴェロニカ。他の工房で働く徒弟職人で、少しずつアルテに惹かれていくアンジェロ。レオの昔なじみの客で、偏屈な大金持ちのウベルティーノ。それぞれのバックグラウンドが丁寧に描かれ、キャラクターに対する作者の温かいまなざしが感じられる。

 「工房の職人たちが漫画家やアシスタントに似ているように思え、親近感を抱いている」という作者の、ルネサンス期の人々に対する並ならぬ愛情と熱意から生まれた『アルテ』。膨大な資料や取材を基に描かれているだけあって、当時のフィレンツェの町並みや工房の様子などがリアルに伝わってくる。細部まで緻密に描きこまれた絵には迫力と説得力があり、ストーリーやキャラクターの魅力ともあいまって、読み始めればたちまち、その世界観に引き込まれてしまう。また、各話の最後に登場する「パラレルストーリー」には、本編のエピソードの後日談や、登場人物たちの別の側面などが描かれており、物語をより深く楽しむことができる。

 第3巻では、レオの過去が描かれ、アルテの徒弟生活に新たな危機が発生する。ラスト近くでは、物語の大きな鍵を握るであろう新たなキャラクターも登場し、今後の展開からますます目が離せない。

文=村本篤信

■『アルテ』(大久保圭/徳間書店・ゼノンコミックス)