書籍も出版! ラーメンに本気過ぎる米国人・ブライアンインタビュー おすすめのお店も聞いてきた

食・料理

2015/7/5

 日本のラーメンをこよなく愛すアメリカ人がいる。いわゆる“ラオタ”。アメリカ人だからと侮ってはいけない。日本に暮らすブライアン・マクダクストンの情熱は本物だ。週4〜5回はラーメンをすすり、巡ったラーメン店は1000軒超。うち900軒以上を自身のブログ「Ramen Adventures」(英語)で発信している。

 カメラが趣味というブライアンによる美しく切り取られた写真と、想像をかきたてる的確なコメントがちりばめられたブログは、ほどなく多くの人の目にとまり、新聞雑誌、TVなど多数のメディアに出演するように。そんなブライアンの初のラーメン本『最強アメリカ・ラーメン男 東京 極ウマ50店を食べる』(K&Bパブリッシャーズ)が出版された。

 そこで著者のブライアンに話を伺い、さらに同書のなかでも選りすぐりの「トップ5」に入るラーメン店をあらためてピックアップしてもらった。

なぜ? 西海岸でIT技術者というキャリアを捨てて日本へ

 生まれも育ちもアメリカのカリフォルニア州というブライアンは、大学でコンピューターサイエンスを学び、卒業して晴れてプログラマーになった。就職先は、サンフランシスコの優良企業。5年ほど働いた。もちろん給料もそれなりに良かったのだが、あまりにストレスの多い仕事に嫌気がさして離職。心機一転の手段として、「日本に渡って英語教師になる」という求人に応募し、2006年に来日した。

「サンフランシスコでプログラマーをしている親友が、この前、勤続12年記念を迎えたんだ。それで5週間の休みがもらえたんだよ。12年働いてやっと5週間の休みだ。僕は今でも休もうと思えば、すぐにまとまった休みがとれる」とブライアンは言う。

 今も英語関連の仕事をする傍ら、ラーメンの食べ歩きに余念がないブライアン。「仕事よりもラーメンにかける時間のほうが圧倒的に多いよね」と笑う。

 週末には、日本の各都市で行われる子ども向けのイベントに英語でショーを行うパフォーマーを務める。だが、これらの出張の先々でもラーメン店を巡っては、ブログに掲載。次々と新たなラーメン店を発掘して、紹介している。

 また、国内外のメディアでその名を知られることになったブライアンは、外国人観光客をラーメン店に案内するという、「ラーメンの個人ツアー」も行っている。

おいしさに衝撃! きっかけは行列店の豚骨ラーメン

 ブライアンをラオタにした最初のきっかけは、日本で食べた人気店の豚骨ラーメン。“人生で一度も味わったことのない鮮烈なおいしさ”に衝撃を受けたという。それまでロサンゼルスやサンフランシスコで暮らしてきたブライアンは、もちろんラーメンを知っていたし、何度も食べたことはある。ここ数年は、にわかにアメリカでもブームが起き、日本のラーメンが進出しているが、当時のそれは日本で食べられるラーメンとはほど遠いものだった。

「向こうでは、たいていは日本食レストランのメニューに並んでいて、ラーメン専門店はない。作る人もラーメン店で修行した人なんていないし。でも日本のラーメンはそうじゃなかった。修行を積んだ職人がいて、ラーメンも材料ひとつに300ぐらいの業者から選び抜いたりして、それを配合して、研究して、完成させるんだから!」。

 ある日、東京で人々が行列をなすラーメン店に興味本位で入ったブライアンは、以来ラーメンの魅力にとりつかれるようになる。それぞれの店の徹底した“こだわり”。知れば知るほどに、ラーメンは多種多様で、奥深いと語る。

 もともと理系のブライアンは、いろいろな本を読みながら、ラーメンの魅力を伝える語彙を増やしたという。丁寧に綴られたブライアンのブログは、今もたくさんの人を惹きつける。同書が出版されたのは必然だったのだろう。

トップ5は?「本当は選べないけど…選りすぐりの店ならこれだ」

 東京版で選りすぐりの5店を選ぶことはできるかと尋ねたら、困らせてしまった。ごめんなさい。同書にも書いてあるが、どれもそれぞれですばらしいのでランキングなどをつけるのも好きではないという。とはいえ、ブライアンと同書の魅力を伝えるため、考え方の断片でもご紹介したい。ということで、本人いわく「それぞれが違ったアイデア」という観点から5つ選ぶよ、とピックアップしてくれた。

「ソラノイロ」

「ここが優れているのは、なんといっても『ベジソバ』。すべて野菜から作られているんだ。日本はたくさんの観光客が来るのに、完全な菜食主義者であるビーガンが食べられるものを出す店を見つけ出すのは至難の業。本当にシンプルな料理ですら、“だし”で調理されてる。日本の料理は“だし”が基本だから、大体はカツオなど魚が使われてしまっているよね。昆布や椎茸だけの“だし”で作られているものがもっとあればいいのだけれど」とブライアン。

「カラシビ味噌らー麺 鬼金棒」

「お気に入りの店のひとつだね。辛い味噌のラーメンなんだけれど、材料のすべてがこの店独特に作られているんだ。その考え方、いわゆる“こだわり”は尊敬に値するよ。味噌ひとつ取っても、選び抜かれたもので、それを考え抜いてブレンドしているんだから。この一杯を生み出すために気の遠くなるような時間がかけられている。本当にすごいよ」とうなるブライアン。同店の“カラ”とは唐辛子のカラさ、“シビ”とは四川山椒のシビれ。これらのスパイスが効いた味噌ラーメンなのだ。

「牛骨らぁ麺マタドール本店」

 同店の看板メニューは、大きなピンク色のローストビーフが乗った牛骨ラーメン。これにはブライアンも、「本当に美しいラーメンだと思う」と嘆息。「これは僕のなかでもトップ5に入るよね」と自分ランクに入ることを認めた!

「肉煮干し中華そば さいころ」

「ああ…これもトップ5だよ」と言って、次にブライアンが指差したのがこちら。チャーシューが丼を覆うラーメンで、「大好きなんだ」とこぼす。「もう、すべての材料が良いんだ」という彼は同書で、「北海道産の栄養価の高い小麦粉を使用、水とかん水が絶妙なバランスを保っている。だしは、イワシ、サバ、カツオなど数種の乾物を使い、スープに重厚感がある」と解説を綴っている。

「金色不如帰」

「Japanese Soba Noodles 蔦」

 この2店のラーメンの特徴は、醤油や塩がベースでトリュフが使われていること。「この2店は店主同士で交流があるんだけど、どちらも甲乙つけがたい。とてもシンプルなんだけれど、衝撃的においしいんだ。僕のラーメンツアーでも、よく連れて行く場所のひとつだよ。みんな醤油や塩といった定番より、味噌や豚骨で衝撃を受けることが多いのだけれど、ここはその定番で感動してもらえる。お金持ちの人なんかも驚かせることができるとっておきの店なんだ」。

「風雲児」

 トップ5といいながら、もう1店あげてくれた!「ここは僕がバケーションから帰ってくると必ず食べに行くところなんだ。自宅からも近いしね」とブライアン。鶏肉と魚介のスープからなるいわゆるWスープのつけ麺が看板メニュー。つけ麺には魚粉も盛られている。「すごく濃厚でインパクトがあるんだ。これは日本でしか食べられないラーメンのひとつだと思う。スープにしても魚粉にしても、ここもかなりのこだわりで選び抜いた材料からなるから、海外ではきっと材料を揃えられないんじゃないかな」。

こだわりはオリジナルの原文を載せたこと。海外の人たちに伝えたいから。

 同書は、持ち歩きに便利なコンパクトサイズ。また、ラーメン店を紹介する文はブライアン自身の言葉である英語とそれを翻訳した日本語で綴られている。同書の企画に尽力した、ラーメン業界サイト「キンキンラーメン道」の中村潤さんは言う。

 「ラーメンは食べ歩くのが楽しいので、持ち歩いてもらえるように、大判にしたくはないと考えました。英語を載せるか載せないかは、実は紆余曲折があったのですが、ブライアン本人も“ぜひ英語は残してほしい”と言っていたので、そうなって良かったです」。

 ブライアンは、1人でも多くの世界の人に日本のすばらしいラーメンを知ってもらいたいと語る。つまり日本のラーメンを世界に伝えるという、“ラーメン伝道師”なのだ。次の本では、東京だけでなく日本中のラーメンを紹介するのだそう。ブライアンの「ラーメンアドベンチャー」は今日も続く。

■ブライアンのブログ「Ramen Adventures」はこちら

取材・文=松山ようこ