人気マンガ家・椎名高志も愛した『ウルトラマンネクサス』! 不遇の時代を乗り越え、今こそ復権の時!!

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更新日:2015/7/22

  7月から新作テレビシリーズが始まるなど、今もなお熱い支持を受ける国民的ヒーロー番組「ウルトラマン」シリーズ。しかし過去を振り返れば、世間に受け入れられず低評価に終わった作品もあった。その中でも特に酷評を受けたのが、2004年に放送された『ウルトラマンネクサス』である。

 この『ネクサス』は2004年12月に公開された映画『ULTRAMAN』と同一の世界観を持ち、映画の後日譚となる。意欲的な仕掛けを盛り込んで製作されたのだが、まず全体の作風が暗かった。プロデューサーが「大人に観てもらいたかった」と語るように、自らの命を削って戦うウルトラマンの姿が、かなり硬派に描かれていた。しかしその代償として物語がシリアスにならざるを得ず、とても子供向けとはいえない作品となってしまったのだ。結果としてクール短縮という形で『ネクサス』は終了するが、製作陣は最後まで妥協することなく硬派なストーリーを描ききった。スタッフのこだわりが満載の作品となったのである。

 そして放送から10年を経て、待望の書籍が刊行された。それが『ウルトラマンネクサス』(椎名高志、円谷プロダクション/小学館)だ。これは「てれびくん」の2004年12月号から連載されたコミカライズ作品を1冊にまとめたものだが、10年の間、一度も単行本化されなかった「幻の」コミックなのだ。その理由のひとつとして、本来は全10話の予定だったものが9話で終了してしまったことがあろう。しかし今回の単行本化にあたって、当時は描かれなかった最終話が描き下ろしで収録されているのだ。この時点で、当時を知るファンならば狂喜乱舞間違いなしの快挙である。

 コミカライズを担当した椎名高志氏は『絶対可憐チルドレン』などのヒット作で知られる人気マンガ家。オリジナルストーリーで十分勝負できる人物だが、本人曰く「歴代シリーズの中で異色であろうとする意欲、世の中の閉塞感を打ち破ろうとする闘志をネクサスの中に感じた」ことで、話を引き受けたのだという。

 椎名氏がコミカライズに際してこだわりを持っていたのは、内容からも分かる。「てれびくん」は子供向けの雑誌だが、怪獣を倒す際の言葉が原作では「掃討せよ!」となっていた場合、わかりやすいように「やっつけろ!」などに変更されることがよくある。しかし椎名氏はあえて原作通り「掃討せよ!」とセリフを言わせているのだ。セリフを変えると「それはもうネクサスじゃないよね(笑)」ということなのである。

 椎名氏の言うとおり『ネクサス』はウルトラシリーズとしては異色だ。主人公である孤門一輝はウルトラマンに変身しない(最終話でようやく変身する)し、「適能者(デュナミスト)」と呼ばれるウルトラマンに変身する人物が、物語中で交代していくのも斬新だった。しかし前述したように、作風が暗かった。孤門隊員の恋人が敵に操られて死亡したり、デュナミストが戦いの度に疲弊していくさまは、かなりハードな印象を視聴者に与えただろう。スペースビーストと呼ばれる怪獣もおどろおどろしく、とても子供ウケを望めるものではなかった。しかしプロデューサーの狙い通り「大人が楽しめる」ウルトラマンだったことは間違いないと断言したい。視聴率? そんなもの知らぬ! 玩具売上? 関係ないわ! 誰が何と言おうと『ネクサス』は素晴らしい作品だったのだ!

 ここらでそろそろ『ネクサス』の復権もあってよいのではないか。椎名氏のコミックで興味を持ったなら、次はテレビシリーズを全話観ていただきたい。きっと作品の魅力がわかってもらえるはずだ。そうやってファンが増えたなら、椎名氏の願う「『ネクサス』コミカライズ、全20巻」が実現するかもしれない。その瞬間を『ネクサス』の主題歌「英雄」を聴きながら、同志たちとの「絆」を信じて待ちたいと思う。

文=木谷誠(Office Ti+)