僕がギターにハマったように、楽器が好きな若い子たちに読んでもらいたい 野村義男インタビュー

音楽

2015/7/23

  • 野村義男

●野村義男 ギタリスト。1964年東京都生まれ。愛称はヨッちゃん。小学5年生からギターを始める。12歳の時にジャニー喜多川にスカウトされジャニーズ事務所に入る。79年ドラマ『3年B組金八先生』に出演して人気となり、田原俊彦、近藤真彦と「たのきんトリオ」として活躍。83年にTHE GOOD-BYEを結成。90年に活動休止した後は、ソロ活動やユニット、浜崎あゆみのバックバンドなど、ギタリストやプロデューサーとして活動している。現在、50歳を記念したソロアルバムを製作中。

何本あるかわからなかったギター

 並べられたギター、その数なんと352本! その中央で仁王立ちする野村さんという圧巻なビジュアルの表紙が目を引く『野村義男の“思わず検索したくなる”ギター・コレクション YOSHIO NOMURA GUITAR COLLECTION』。その全てのギターに詳細な解説やエピソードが語られており、ギターマニアにとっても資料的価値の高い一冊となっている。しかしその始まりは、食事の席でのノリだったそうだ。

「今から1年半くらい前なんですけど、『ギター・マガジン』の野口編集長(当時)と食事をする機会があって、野口さんに『ギターいっぱい持ってるんですよね』って聞かれて、『ありますよ~』みたいな普通の会話があったんですよ。そしたら『じゃあ写真集でも作りましょう』みたいな話になって、『ギター全部ですか?』って聞いたら『全部です』って。お酒も飲んでる席だったし、ノリから始まったんですよ(笑)。それから僕がちょうど50歳になる前だったんで、記念として作るのはどうですかという話になって、それはすごくいいなと思って、じゃあギター全部持ってきます、って日にちを決めてこういうことになったんですけど、持って行ったら『こんなにあったんですね…』みたいな(笑)。それで何本あるかって聞かれたんですけど、『わからない!』って答えたんです。ホント、感覚的に100とか200とかかなと思ってたら、352本もあって、僕も驚いてるんですけど」

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 ちなみに野村さん、エフェクターも相当な種類と数を所有しており、当初はギターと一緒にエフェクターも撮影しよう、という話になっていたんだとか。

「ギターの本数がどのくらいかわからないから、ページが埋まるかなって思ってたみたいですよ。でもギターを撮った時点でページが足りなくなることがわかって、エフェクターを入れるところがなくなっちゃったんです。だからそれはまた改めてやりたいですね。数ですか? わかんないです(笑)。もし本になることがあれば、その時に数えて頂きたいですね。エフェクターは変なものもいっぱいありますよ。僕は色んな音が鳴った方が面白いなって思ってて、ギターってアナログな楽器で、エフェクターっていうのはそのアナログの音をどう変化させるかというものなんですよ。例えばシンセだったら動物の鳴き声とかすぐ出来るかもしれないけど、アナログでは難しいんです。でもそういう限られた中でエフェクターを考えた人がいたんだ、っていうのがすごい好きだから、エフェクターも集まっちゃいましたね(笑)」

決め手は「こんなギター知らない!」

「僕のギター・コレクションは、芯が通ってないんです」と言う野村さん。確かに写真を見ると、ヴィンテージだけではなく、ビザール・ギターと呼ばれる変なモデルまで幅広く所有している。「ギターは出会い」と言う野村さんだが、購入する際にはいったい何が決め手になるのだろうか?

「すごーく簡単にわかりやすく言うと、知らないギターを見つけた時ですよ。このギター持ってない! からスタートして、このギターには違う色があるってわかって、じゃあ違う色は、あ、出てきた、さらに違う色出てきた、って。だから決め手はそのギター知らない、もしくは持ってない、ですね」

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 野村さんのコレクションの中でも特に異端なギターが、1969年の1年間だけ作られた、カタログにさえ載っていないので正式名称もないという「フェンダー・ミュージックランダー」だ。

「人気の無いギターって、30年くらいすると『あのギターって実在するの?』っていうことになるんですよ。そこですよ! ミュージックランダーは世界で300本くらいしかなくて、そのうちの8本がウチにあるんです。今でも色違いを探してますよ。キリがない? だからいいんじゃないですか!(笑)」

 そうした「何だこりゃ?」というギターを探すのがとても楽しいと言う野村さん。

「レスポールの何年製とか、その辺のヴィンテージ・ギターに関しては全部出会いですね。今買わないと手に入れることが出来ないって思ったら手に入れます。でも僕のコレクションは高級ギターよりも、何だこりゃギターの方が多いですよ。全体で言うと、60%くらいじゃないですかね。そんなに高級尽くしで埋めてないですから、『どうだ!』みたいなのは全然ないです! 表紙の写真でも、キティちゃんが一番目立つねって言われているくらいなんで(笑)。たいていの人は『え? キティちゃん?』って言うんですよ。『僕が見て欲しいギターはそれじゃないのに!』と思うんだけど、ギターを知らない人は、こういうのもあるんだって思うみたいですね。でもコレも今はもう発売してないものなんで、逆にコレクションに入れていいんじゃないかな、って」

 そしてもうひとつ、ギターに詳しくない人から指摘されるのが、向かって左下に写っている「やかん」だそうで…

「あ、やかんも楽器なんですよ。それは本を見て頂けたらわかるんで!」

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    このギターは1961年製のリイシューモデルである2000年製「ギブソン・レスポール/SGスタンダード」。しかもストラップは、ジミー・ペイジがSGのダブルネックギターを持つ際に使用していた柄と同じものを手に入れたそうだ。そんな話もあり、レッド・ツェッペリンの『ハートブレイカー』を爪弾きながらの撮影となった。途中、レッド・ツェッペリンの『グッド・タイムズ・バッド・タイムズ』の出だしのコードを「ジャジャ!」と鳴らし、「このコードだけ弾いても全然カッコ良くない。でもこのパターンを見つけたってのが悔しいし、すごいよね〜!」と笑う野村さんでした。

この本でギターを好きになってくれたら

 本書の「野村義男 HISTORY」の中でも触れられているが、野村さんが梶浦裕二役で出演していた1979年に放送されたドラマ『3年B組金八先生』では、担任の坂本金八(武田鉄矢)に受験の不安を相談する電話で、レッド・ツェッペリンの『天国への階段』を弾くシーンがある。恐らくこのシーンこそ、野村さんが初めてテレビでロックギターを弾いた瞬間だろうと思われるが、なぜこの曲を?

「ちょうどあの時期に、学校の同級生の中島くんが僕に『天国への階段』の弾き方を教えてくれたんです。撮影の一週間前くらいだと思うんですけど、それからあればっかり家で弾いてたんですよ。それでこのシーンで『何かギター弾いてよ』ってスタッフの人に言われたんで、今一番弾いているのは『天国への階段』だから、と思って。だからあれは中島くんのおかげです(笑)」

 当時15歳だった野村さん。その頃にエレキギターの魅力に取り憑かれ、楽器屋によく出入りするようになったそうだ。本書はそんな当時の自分のような、ギターが好きな若い人たちにぜひ読んでもらいたいと言う。

「僕と同世代の人は、同じような楽器を見て、ミュージシャンが持ってたギターに憧れて、と同じ道を通ってるんで読んでくれると思うんです。だから僕としては若い、楽器が好きな子たち、高校生とか中学生とかに見てもらって、ギターを好きになってくれたらいいなって思いますね。そうすると、たぶん20年、30年後には、その子のギターを集めた本が出来るんじゃないかと(笑)。そういう人のスタート地点として、この本が辞書になればいいなと。僕がギターにハマったようにね」

 取材前に行われたイベントリポートはこちら!
⇒欲しいギターは借金してでも手に入れろ! 野村義男ギター写真集イベントレポート

ギターコレクション

■『野村義男の”思わず検索したくなる”ギター・コレクション YOSHIO NOMURA GUITAR COLLECTION
編集:ギター・マガジン編集部
価格:2,200円(+税)
発売日:2015年6月25日(木)
仕様:B5判/144ページ
出版社:リットーミュージック

取材・文=成田全(ナリタタモツ)