4度目の実写化が決まった『南くんの恋人』。何度もリバイバルされる作品の共通点とは?

テレビ

更新日:2015/7/24

  • 『南くんは恋人』
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 今年の夏ドラマは、『DEATH NOTE』や『ど根性ガエル』など、漫画を原作としたタイトルが並び、巷ではさまざまな反響をよんでいる。そんななか、過去に三度もの実写化を果たした伝説の漫画『南くんは恋人』(集英社)が、またしてもドラマになるという。

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 1986年に月刊『ガロ』で連載されていた同作は、主人公の南くんと、16センチに縮んでしまった南くんの恋人・ちよみの奇妙な同棲生活を描き、今も根強いファンを持つ人気作品だ。そして、1994年を皮切りに、1995年、2004年、そして新作の2015年版は、『南くんの恋人 ~my little lover~』というタイトルでドラマ化。漫画が原作の実写は数あれど、これほどまでに年代を超えて愛されるのは珍しい。

 このように、時代を超えて幾度も実写化される作品には、一体どんな特徴があるのだろうか?

「何度もリバイバルされる作品には、いくつか共通点があります。テーマとしては恋愛モノや学園モノ、謎解きなど、何年経っても変わらない普遍的な題材の作品が多いです。また、漫画そのものにはページ制限があるため、少ない登場人物で、読者の共感を得なければならない難しさがあります。その中でも最小限の人数で魅力的な人間模様を描きつつ感情移入しやすい作品が、リバイバルされる漫画の条件なんです」

 そう語るのは、『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)の著者でドラマ解説者の木村隆志さん。たしかに、『金田一少年の事件簿』や『GTO』、『イタズラなkiss』など、リバイバルの条件に当てはまる作品がいくつか挙がる。また、キャスト面にも、リバイバルドラマならではの役割があるとか。

「実は、人間関係がシンプルで、心の葛藤もしっかり描かれている作品は、若手キャストの登竜門になりやすいんです。ヒットすれば出世作となってタレント事務所やテレビ局もオイシイし、ヒットしなかったとしても演技の勉強になります。その反面、すでに名のある俳優が演じても旨みがないので、あまり抜擢されないのも特徴です」

 まさに今回の『南くんの恋人』でも中川大志や山本舞香など、まさに次世代を担う若手俳優陣が名を連ねている。このほか、同作ならではの魅力もまた、リバイバルが多い理由につながっているとか。

「単純ですが、『南くんの恋人』はヒロインが可愛く見える最高の図式です。小さいだけでも可愛いのに、胸ポケットに入ったり困っているところを助けてもらったりと、ちょっとした可愛い仕草がたくさんありますよね。そういった見た目のおもしろさに加えて、“隠れているだけで、どこかに小さな女の子が存在しているかも……”なんてリアルな妄想を掻き立てる、絶妙な設定なんです」

 また、主な登場人物が南くんとちよみの2人だけ、という本作は、閉じられた世界で変化する2人の関係など“本質的な部分”を描かなければならず、脚本家は腕の見せどころ。事実、岡田惠和や中園ミホなど、今や超売れっ子の脚本家を起用したドラマでもあるのだ。

「製作側も、原作や前作を超えるという意識を持ってドラマ作りをするので、決してクオリティが低いものにはならないはずです」

 クオリティにも期待できる『南くんの恋人 ~my little lover~』。本作をより楽しむコツとは?

「本来ならば、原作や過去作品などの先入観を持たずにみる一番ですが、それが難しい場合、あら探しは禁物。穿った見方をするとドラマがつまらなくなってしまうので、設定やキャラクターの変化を“楽しむ”方向で比較してみましょう。たとえば、11年もの歳月で変化した学校生活や、演出家がもっともこだわる名シーンには注目してください。過去作と同じ撮り方はしないので、視聴者も“ここを変えてきたか!”というように、作り手の意図を感じ取るのがポイントです」

 そして、原作の『南くんの恋人』といえば、ちよみが死んでしまう衝撃のラストが話題になったが、今回はすでに原作と異なる結末を迎えることが報じられている。「結末を曖昧にするのがこのドラマの基本スタイル。今回のラストも、何かしらの遊び心を効かせてくるでしょう」と、木村さん。

 不死鳥のごとくリバイバルされる『南くんの恋人』。見どころを“楽しく比較”しながら、ドラマの世界に浸るのも一興かもしれない。

文=不動明子(清談社)