「僕はもう通り魔みたいなもの。悪口を言えれば誰でもいい」小野ほりでいインタビュー

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/19

インターネットには何かとお作法が多い。振る舞い方を間違えると、自分のあずかり知らぬところで後ろ指をさされ、最悪の場合、炎上することもある。例えば、有名なネット用語で「半年ROMれ」というものがある。ROMとは、「Read Only Member=書き込まずに閲覧するだけのユーザー」。ネット上の空気を読んだ書き込みができるようになるまで、半年くらい閲覧だけしていろ、という意味である。

今ではライトなネットユーザーも多く、何も気にせずともネットライフを送れることもあるかとは思うが、基本的には今も昔も、インターネットの世界は他者を見る目が厳しい。こういったネットの世界、特にTwitterのお作法についてを解説しているのが、小野ほりでい氏の『ツイッターくらいはモテさせろ! ゆるカワWeb女子入門書』(一迅社)だ。氏が紹介するネットユーザーには例えば以下のようなものがある。

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・Twitterでモテようとして自撮りを投稿したがる女子
・自らの失恋や恋の始まりについていちいち騒がしく投稿する「蝉ガール」(蝉が繁殖期に騒ぐことにちなんでいる)
・他人の何でもない発言を“自慢”だと勝手に受け取って絡む「繊細チンピラ」
・サブカルなどのニッチなジャンルのことを叩く「サブカル叩き」や「ふかん中毒」

このように、小野ほりでい氏は、ネット上で“間違った行動”を取る人に対して、本書で警鐘を鳴らしている。

インタビューにこたえる小野ほりでい氏

悪口を言えれば誰でもよかった

小野ほりでい氏(以下、小野) いや、全然警鐘なんて鳴らしてないんです。提唱もしていないですし。本のもととなったのは『トゥギャッチ』というサイトの連載ですが、これも枠をもらえたから、Twitterをテーマにしたものなら書けるかな、と思った程度のものなんです。一つ一つのコラムを通して何かを主張したい、なんてまったく思っていないですし、世の中に対して通したい意見もない。このまま地球が滅びたとしても知ったこっちゃないって思っているくらい、何もかもがどうでもいいんです。

――インターネットに自撮りを公開する人や、“サブカル叩き”をしている人への怒りがある、というわけではないのでしょうか?

小野 本の中だったり、ネットで書いたコラムだったりの中で、色々なことに対して怒っているように見せているけど、本当はそんなに怒ってないです。自分の中に小さく存在していた怒りの種を見つけてきて、憎悪を増幅させて書いています。何かを書くときは、何らかの意見があるフリをしなきゃならないので……。辛いです。

――怒りをひねり出してきているんですね。

小野 そうやって無理矢理ひねりだして書いたものをネットで叩かれると、何なんだ、と思うこともあります(笑)。基本的にどれも“自分の立場”としては書いていなくて、ある主張を書いたら、別の記事ではその真逆の主張を書くなどしているので、この本一冊の中に掲載されている11本のコラムのうち、よく読んだら矛盾しているものもあるんです。例えば、本の前半部分の「蝉ガール」や「Twitterでモテたい女子」などは、あまり何も考えずにTwitterしている人たちのことをバカにしている内容のコラムです。ですが、本の後半の「繊細チンピラ」や「ふかん中毒」は、そういう何も考えていないような人たちをバカにしている人のことをバカにしている構造のコラムなんですよね。つまり、「ふかん中毒」の人は、「Twitterでモテたがって自撮りをする女子」や「恋愛ポエムを投稿する“蝉ガール”」の悪口を言っているわけです。

小野氏の「トゥギャッチ」の連載から。
エリコちゃん(茶髪)とミカ先輩(黒髪)の掛け合いで進む

――なるほど。片方だけバカにするのではなく、もう片方もバカにしたコラムも書いておく、という。

小野 そうです。どの方面のこともバカにしているわけですから、僕もう、通り魔みたいなものですよ。悪口を言えれば誰でもよかった、っていう。

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