日本一の少年マンガ誌『少年ジャンプ』は、いったいどのように作られているのか?
公開日:2015/7/28
マンガ好きの男性ならば、一度は通ってきたであろう、『週刊少年ジャンプ』。『ドラゴンボール』『スラムダンク』『ONE PIECE』…数々の名作を世に送り出し、いまもなお、次世代のヒット作を生み出し続けている、少年マンガ誌の代表格だ。
そんな『週刊少年ジャンプ』は、はたしてどのように作られているのか。全国の少年たち、そして元・少年たちの積年の疑問に迫ったのが、『ジャンプの正しい作り方!』(サクライタケシ/集英社)だ。本作は、元マンガ家志望だったサクライタケシ氏と、ジャンプ編集部で働くM山氏とが、その謎に挑んだルポマンガ。ジャンプがどのように印刷・製本されるのか、表紙はどのようにデザインされているのか、編集部のなかはどのようになっているのか…。ジャンプファンならば一度は考えたことがあるであろう疑問が、次々と明らかにされている。
ジャンプはどのように製版されているのか
製版とは、簡単にいうと、マンガ家の原稿を「印刷の一歩前」の状態に整える作業のこと。それを行っているのが、全国13カ所に工場を持つ印刷会社・共同印刷株式会社だ。こちらで原稿をスキャンし、手書きのセリフを打ち込み合成し、それらを印刷するハンコ・樹脂版を作成するのだ。
ちなみに、製版で一番大変な作業は、作者の手書きのセリフを解読すること。なかには非常に読み取りづらいケースもあるという。現在も連載されている作品のなかで一番解読が困難なのは…、『銀●』だとか。
ジャンプはどのように印刷・製本されているのか
樹脂版ができあがったら、いよいよ印刷・製本に進む。印刷紙は巨大なロール状になっており、一本あたり約400kgの重さがあるそう。それを輪転機と呼ばれる機械にセットし、印刷していく。一本あたりで、約1万折(32万ページ)も印刷できるのだが、ジャンプの場合、1台の輪転機では間に合わないため、常時複数の輪転機で印刷しているという。ジャンプ1号あたりに使用するのは、ロール3700本ほど。約1554トンの重さにもなる。さすが、日本一のマンガ誌だ。
ちなみに、ジャンプでは再生紙を使用しているが、もしもそれを使わなくなったら、日本は余った再生紙であふれてしまうとか。
ジャンプの表紙はどのようにデザインされているのか
雑誌の顔ともいえる表紙。これはマンガ家ではなく、専任のデザイナーが考えているという。毎号、数人のデザイナーがラフ案を出し、副編集長の判断をもって、表紙デザインが決定されるのだ。デザインの方向性としては、『僕のヒーローアカデミア』のように新しい作品や新連載が表紙になる場合は、そのマンガのイメージを打ち出すように、逆に『ONE PIECE』のような知名度の高い作品の場合は、季節ネタを取り入れるなど、比較的遊び心をもってデザインされている。
そうそう、『NARUTO-ナルト-』が最終回のときに、なぜ『暗殺教室』が表紙を飾ったのかというと、それはジャンプが「常に新しい作品を大切にしているから」なのだとか。ジャンプはいつだって、未来を見据えて作られているのだ。
本作では、上述のような、「ジャンプが作られる基本の流れ」のほか、読者から寄せられたジャンプに対する素朴な疑問もつまびらかにしている。たとえば、「ジャンプの掲載順は人気順なのか」。読者ならば誰もが気になる疑問だ。これは、「基本的には人気順だが、絶対ではない」とのこと。同じジャンルの作品は続けて掲載しないようにしていたり、編集部が推したい作品は前のほうに掲載したり、読者アンケートの結果を踏まえつつ、掲載順を慎重に考えているそうだ。
また、「ジャンプのテーマである、友情・努力・勝利は、誰がどのような思いで考えたのか」という疑問。実は、こんなテーマは存在しないというから驚きだ! 基本的には、おもしろければなんでもアリ。ただし、少年マンガを作るうえで、この3つのテーマは自然発生的に出てくるという。
そのほか、各作品の「ロゴ」を手掛けたベテランデザイナーへのインタビューや、『僕のヒーローアカデミア』の作者・堀越耕平氏の仕事場拝見など、本作でしか読めないよう「ジャンプの裏側」が目白押し。まさにジャンプファンにとってのバイブルともいえる、ルポマンガだろう。
文=前田レゴ