「私は芝居がうまくない」女優・吉瀬美智子を成功に導いた信念と覚悟

文芸・カルチャー

2015/7/29

 吉瀬美智子が、どんどんいい女優になっている。彼女の初エッセイ『幸転力』(小学館)によると、プライベートでもよい家庭に恵まれ、幸せな女性になっているようだ。初めて彼女のことを知ったのは、ドラマ『LIAR GAME』だった。元美容モデルのクールビューティーで、“32歳の遅咲き”というセンセーショナルな女優デビュー。ショートカットがお似合いで、謎多きオトナの女・エリー役がはまっていた。

 しかし、正直に言うと、デビューから数年は“元モデル”の印象が抜けなかった。映像は美しいけれど、演技のほうは今ひとつ…という作品もあるにはあった。それでも、出演作が途切れることはなかった。

 驚いたのは、『Dr.倫太郎』で、あの堺雅人と肩を並べていたこと。周りは蒼井優、高畑淳子、小日向文世ら演技派ぞろい。いま絶好調の堺雅人の主演作とあって、選ばれた役者だけが出演している印象があった。

 知らないうちに? というより、驚くほど自然に“元モデル”から“女優”へと見事な転身を遂げた吉瀬美智子。本書には、女優を始めたきっかけや、これまで何を感じて何を実行してきたのか、その信念とも言える言葉が、まるで分かりやすい哲学書のように並べられていた。

人一倍の努力をして、32歳の新人女優から芸能界に選ばれる女優へ

正直に言って、私は女優にむいていません。芝居もうまくありません。
(中略)だからこそ、私は、人一倍練習をします。不器用だけど一生懸命最後までやり切る

 大人の女性のファッション誌『Domani』や企業CMなどで美容モデルの道をのぼりつめた彼女は、次に進むべき道を模索。そして、「動いてしゃべっているほうが魅力的だから」と仲のよい編集者にすすめられ、女優に転身すると決めたのは32歳のとき。

 自分で決めた道に“逃げ場所”を作らないために、モデルの仕事を一切断って女優の仕事に専念した。一部からは非難の声も上がったそうだ。さらに「女優不適格」という壁にもぶつかったけれど、女優の道を外れることはなかった。

 その堅実さが功を奏したのか、彼女には仕事の依頼が次々と舞い込んだ。本来は、芝居のうまくない30歳越えの女優に、次から次へと仕事を提供するほど芸能界は甘くないはず。それでも彼女へのオファーが途切れないのは、デビューから8年経った今でも、変わらず人一倍の努力を続けているからに違いない。

“幸転力”を身につければ、よきパートナーにも出会える!?

 モデル時代から、家族旅行の費用を一手に担い、実家の建て替え費用まで負担したしっかり者。でも、経済的に自立心が強い女性は、往々にして恋愛ベタだったりする。想像するに、「男性とのデート代をよく支払っていた」という彼女は、幸せな恋愛ができていなかったのでは?

 多くの男性は支配欲が強いため、経済的に優位に立てる女性に愛情を注ぐ、と聞いたことがある。そんな男性たちにとって、レストランで財布を出したがる女性に、愛情を注ぎ続けるのは難しいことかもしれない。

 しかし、彼女の前には、そんな振る舞いを叱ってくれる人が現れた。それが、今のご主人。本書にあるように、「誰かに幸せにしてほしい」ではなく「誰かを幸せにしてあげたい」という健気な心がけが、彼女に幸運な出会いをもたらしたのかもしれない。

誰かと一緒にいる時間が、こんなに心地いいとは思わなかった

 自立した女だって本当は甘えたい、しかも特別な人だけに。今は、ひとりより2人でいるときのほうが、自然体でいられるそうだ。

これからの時代は、吉瀬美智子のように“自立した女”が選ばれるべき

仕事も人生も、選ぶのではなく選ばれる人になる

理想は“運がいい人”

 自分から、できる限りのことを相手に差し出す。そんな風に、毎日を本気で生きているからこそ、やがて巡ってくるチャンスを逃すことがないのだと彼女は語っている。壁にぶつかった時は、じっくりと悩む。そして自分なりの答えを見つけたら、然るべき努力を怠らない。それが、仕事でもプライベートでも選ばれる人になるための “幸転力”のサイクル。

 本書を読んで、「吉瀬美智子のようになりたい!」という女性は多いと思う。幸転力を身につけて、よきパートナー探しをするのもいいかもしれない。これからの時代はパートナーと共に稼ぐ時代と言われている。仕事では自立心が強くて頼もしく、プライベートでは特別な相手だけに思いっきり甘える――そんな女性は、男性にとっても魅力的だと思うのだけれど。

文=麻布たぬ