「スマホはトラブル発生装置」 母が娘にあてたアドバイス集

暮らし

更新日:2015/7/30

 一人暮らしを始めるときは緊張する反面、解き放たれた嬉しさもある。この春、進学や就職で新生活を始めたあなたは、そろそろ慣れてきただろうか。

 『「ありがとう」がエンドレス』(田口ランディ/晶文社)は、大学進学のために春から一人暮らしを始めた作者の娘さんにあてたTwitterでのアドバイスを、まとめて本にしたものだ。140文字以内のツイートがまとめられているので、とにかくすぐに読みやすい。

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 大学に入ると、たくさんの人と新しく出会うことになる。その中には当然、苦手な人も出てくる。できるだけ近寄らないに越したことはないが、接触が必要な場合、「社交術」を使え、と作者はアドバイスする。「最高の笑顔でガン飛ばす(笑)」と言い切るさまは痛快だ。大学でのグループ作りや、教授とよい関係を作るためのアドバイスもある。まだ大学生活にうまくなじめず、悩んでいる場合は効果がありそうだ。営業や接客業のように、多くの人と日々接する仕事に就いている人でも、きっと元気が出る本だと思う。

 また、作者は「スマホはトラブル発生装置」「現代版の修行の道具」と説いている。

「ネット上で人をけなすことは、魅力的じゃないよね。続けていれば、この感覚が体に染み出して、目つきや態度を損なうよ。自分の見た目を下げてまで人をけなして損はない。若いうちに気づいてね。」

 若いうちに気づかない人が多いからこそ、今、多くのトラブルが発生しているのではないだろうか。特にTwitterの場合、匿名であれ本人を特定するのは容易だ。バレないだろう、内輪だから大丈夫だろう、と口汚い言葉を吐いていると、結局自分自身がどんどん悪い方へと向かってしまうように感じる。

 悩んだときは強制的に体を動かす、というアドバイスも参考になった。気分のスイッチの切り替えはどんな職業でも必要になるスキルだと思う。ウジウジといつまでも悩みやすい人は、本書を読めばポジティブに悩めるようになる。今やるべきことを本気でがんばれば、少しずつ自分が好きになれる。それで疲れたら、夜はぐっすり眠れるだろう。

 もしも、この本の「母から娘に生き方を伝える」という設定を複雑に感じる人がいるのなら、個人的には『大人になるっておもしろい?』(清水真砂子/岩波書店)を今、オススメしたいと思う。若い友人へ手紙を書く体裁をとりながら、どう自分らしく生きていくかを述べている。180度異なるように思えるアドバイスもあるが、自分らしい生き方を説く点で2冊は共通している。

 シンプルな短い言葉で、精神のもち方からよりよい暮らし方を述べる本書『「ありがとう」がエンドレス』をひとことで評するのは難しい。浅くも深くも、自分に合う考えも、今は受け入れられそうにない考えも、気楽に読める点がありがたい本だ。

 特に、ついズルズルと物事を後に伸ばしてしまう人が、テキパキと動きたいと願っているとき、最適な本のように思う。また、人間関係に悩みやすい人が手にとれば、より物事をシンプルに考えることができるようになりそうだ。形からでも「なりたい自分像」に自分を近づけていけば、より自信をもって生活することができるかもしれない。

文=川澄萌野