守りたい男子の正体は、オレ様肉食獣? 『小悪魔カレシ』に見る肌色職人の技!

更新日:2015/8/6

 「守ってあげたい」「守られたい」、あなたはどちらになりたいだろうか。か弱い小動物系の男の子と思っていたら、実は超肉食系だった。そんなギャップに胸キュンしてしまうのが『小悪魔カレシ』(コアマガジン)である。作者は『ブサメン男子♂~イケメン彼氏の作り方~』(ソフトライン 東京漫画社)で、大好評を得た、野々宮ちよ子氏。鬼畜エッチが衝撃的だった前作同様に、今作も勢いのある“攻め”が楽しめる。

 男×男を描くBLといっても、裾野が広がり個性的な作家も数多く見受けられる。“萌え”る対象も多様化しているなか、野々宮氏は、職人的作品づくりに撤しているのだ。なぜなら一見可愛らしい絵柄だけど、“肝”のシーンはしっかり描く。抑えるところを抑えている作家なのだ。よって、少女マンガのような表紙に騙されてはいけない。一部が「白線」で消されている箇所もある。うっかり家族の前に放置しては、いけない。取り扱い用注意な作品である。今作も野々宮氏お得意の、鬼畜攻めは健在。ただし、ブサメンやぽちゃといったフェチ要素が消えたため、読みやすさがアップしている。

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 見せ場はやはり下克上。物語は高校の卒業から始まる。普通の男の子・亮太は、高校3年間、同級生のハルに思いを寄せるも、それを心のうちに隠していた。なぜなら、ハルはケンカもできない超かわいい小動物系だからだ。オレが守ってあげなくては……。

 草食小動物系に見えていたハル。それが見事な鬼畜っぷりを見せるから、あら大変! いきなりねちっこいディープキスを交わし(しかも手慣れた風情で)、肌色展開はさながら肉食獣のようである。

 職人的と思えるのは、野々宮氏の書き込みのタッチ。全体的に可愛らしい絵柄なのだが、大事な部分ではシズル感満載で見ごたえがある。ハルのキスでトロ顔になる亮太。そしてそそり立つ亮太の大事なところ!! けれども生々しく思えないのがこの作品の不思議さ。読後も尾を引かない、エンターテインメント作品になるよう徹底しているのだ。

 ニッチな世界ゆえに個人の趣向が反映されることの多いBL作品だが、今作は作り手よりも、読み手にフォーカスを置いている。BLに望むものが満足のいくかたちで盛り込まれている。BLにズブズブの人も、お久しぶりの人も手にとってほしい一作である。

文=武藤徉子