【夏に起きやすい】足がむずむず・イライラして寝られない…! それ「むずむず脚症候群」かも

健康

公開日:2015/8/5

 「疲れが溜まっているな」「コーヒーを飲みすぎたな」などという日の夜、寝ているとなんだか脚に不快感が。ジワジワときて、どうにも抑えられない。脚がだるい、むずがゆい、イライラする…なんと形容していいのかわからないが、とにかく脚をじっとさせられず、ゴソゴソしてしまう。ときには、眠いのに起きて歩きまわらないと治まらない。

 こんな奇妙な症状に悩む人たちが、じつは国内に推定200~400万人もいるといわれている。いわゆる「むずむず脚症候群」、正式な病名は「レストレスレッグス症候群」(下肢静止不能症候群)。年に数回、症状が起きる人もいれば、慢性的に表れるため睡眠障害まで誘発するような要治療の人まで、さまざまなケースがあるらしい。日本人の5人に1人といわれる不眠症の中でも、薬を服用して改善しない「難治療」の患者の10~20%は「むずむず脚症候群」が原因ともいわれる。それにもかかわらず、適切な治療を受けている人はわずか5%というデータがある。近年、テレビや雑誌、新聞などでしばしば取り上げられたため、この症状を知っている人がいるかもしれないが、まだ認知度は低い。

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 「むずむず脚症候群」を取り扱った本は世にそれほど多くはないのだが、『脚がむずむずしたら読む本―眠れない…イライラする…』(井上雄一/メディカルトリビューン)では、症状の原因、治療方法、医療機関のかかり方までが詳しく紹介されている。そう、この症状には効果的な治療法が存在するのである。心当たりがある人にとって、ありがたい限りだ。

 「むずむず脚症候群」は、人間の体温が最も低い夕方から夜にかけて症状が強くなる特徴がある。また、症状が月に2回以上起こる人は、慢性化しやすくなるという。まずは、その症状がどのようなものかを知っておくことが重要だろう。夜、脚に次のような表現が当てはまる不快感がしばしばあるなら、「むずむず脚症候群」を疑ったほうがよいかもしれない。

【「むずむず脚症候群」の症状】
□むずむずする
□虫が這っている感じがする
□ほてる
□だるい
□炭酸が泡立っている感じがする
□ちりちりする
□引きつる
□うずく
□電流が流れているようだ
□痛い
□かゆい
□脚のなかに手を入れて掻きたい
□熱い
□脚を切ってしまいたい
□足踏みをしていないといられない
□じっとしていられない
□ズキズキする

 主な原因は、鉄欠乏症、腎機能障害、妊娠、末梢神経障害、パーキンソン病、脊髄圧迫(麻酔などによる)、ドパミン阻害薬・抗うつ薬・抗ヒスタミン薬など症状を引き起こす薬の服用によるもの、などいくつか考えられている。

 重度になると薬物療法がとられる場合が多いが、非薬物療法も存在する。原因のひとつに鉄欠乏症があるが、食生活の偏りを見直し、鉄分に配慮することで解消できる場合もある。ちなみに、性ホルモンの関係で鉄分が不足しやすい女性は、発症例が男性に比べて1.5倍多い。妊婦の10%以上は「むずむず脚症候群」にかかるともいわれる。

 また、子どもがかかるケースもあるという。多いのは、とくに幼児や小学生など低年齢層。大人との違いは、昼間でも症状が出る場合が多いことで、しばしばADHD(注意欠陥・多動性障害)と間違われることもあるらしい。「じっとしていない(夜はとくに)」「学校や勉強に集中できない」「人と話していてなぜかイライラしている」などの様子があれば、「むずむず脚症候群」を気にする必要があるかもしれない。

 ちなみに、個人差こそあるが、夏は激しい体温調節で血管が拡張するため、1年の中で最も症状が出やすくなるという。暑い夏の寝苦しい夜、体の異常を気温や冷房のせいにしてしまいそうだが、ここでも「むずむず脚症候群」に疑惑がかかる可能性がある。

 治療法としては、先に挙げた「食生活の見直し」のほか、「カフェイン・アルコールなどの嗜好品や刺激物など症状を悪化させるものを避ける」「安定した睡眠を取る」「脚のマッサージをする」「日中に適度な運動をする」などが挙げられているが、軽度の場合に限られるので、不安ならとりあえず医者に診てもらうことをお勧めしている。かかる際には注意が必要だ。「むずむず脚症候群」を知らない人は、なんとなく皮膚科や整形外科、内科などを受診して、似たような症状のある各専門領域の病気と間違えられてしまうことがあるという。たずねるのは睡眠障害の専門医に。近くにいない場合は、睡眠外来を開設している病院や、精神科、神経内科の医者に相談するとよいそうだ。

 適切な治療を受ければ、90%以上の患者(潜在患者)が回復するという。「むずむず脚症候群」を正しく知り、暑い夏の夜を乗り切ってもらいたい。

文=ルートつつみ