白髪が生えてもずっと一緒。猫とじいちゃんの日々から垣間見る、懐かしいふるさとの風景

マンガ

更新日:2015/8/17

 今年の夏も各地で猫に関するイベントやスポットが賑わっていますが、外出するのはちょっと面倒……という方は、本を読んで想像の旅に出てみるのはいかがでしょうか。

 猫島に旅しているような気分になるのが、8/7(金)に発売されたばかりの『ねことじいちゃん』。2年前に妻に先立たれたじいちゃんと猫のタマの日々をつづった本作品、ふたりが過ごす港町の春夏秋冬が、水彩の柔らかいタッチで描かれています。四季ごとに美しく咲く花々。猫たちが集会を開く古井戸。いつまでも見た目が変わらないおじいちゃん先生。犬嫌いの神様を祀っている神社。たくさんの石段を登った先、高台のじいちゃんの家から臨む町並みと海の美しさ。ふと立ち止まり辺りを見渡せば、普段は見落としてしまうような情景がそこかしこに散らばっています。

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 いくつか収録されている食べ物のエピソードも、心がふわっと温かくなります。素朴な「豆ごはん」は、三畳一間のアパート暮らしの学生時代、その後伴侶となるばあちゃんと出会った日につくっていたもの。「茹でタコ」は子ども時代の毎日のおやつ。遠足や運動会には決まってばあちゃんが作ってくれた「おいなりさん」。何の事は無いメニューですが、それぞれに忘れがたい思い出がたくさん詰まっています。淡淡しい思い出が、食べることで鮮明に思い出され、反芻されていくのです。

 本作を読んでいると、ひとつひとつのストーリーが自分自身の遠い日の記憶に結びついていくのを感じます。実体験としての記憶はなかったとしても、「ここに帰りたい」そう思うような懐かしい風景が誰にでもあるかと思います。そんな気持ちを抱かせてくれる、じいちゃんとタマの何気ない幸せな日々をぜひ覗いてみてください。読後、ひとつの旅を終えた気分になるはずです。

春、ぽかぽかの陽気にゆっくりと過ぎていく島の時間

夏、じわじわと照りつける陽を浴びながらじいちゃんと登る石段

秋、じいちゃんとばあちゃんと出会った季節

冬、凛とした寒さのなか 庭に咲く椿の花

ねことじいちゃん

ねことじいちゃん

ねこまき(ミューズワーク)/KADOKAWA

ばあさんに先だたれ、猫のタマと二人暮らしの大吉じいちゃん。ともに白髪の生えるまで、きっと一緒でずっと一緒。ひとりと一匹が繰り広げる、毎日がいとおしくなる四季折々の彩りをお届けします。

電子版は全ページフルカラー
※「初期設定資料集」は電子版には含まれません