各世代の“ふろく観”を繋ぐ ―『りぼんの付録 全部カタログ』の読み方

マンガ・アニメ

2015/8/7

 最初は、「ふろく」のことが全然好きではなかった。図画工作の授業では決まって人よりワンテンポ遅れて居残りしていた私が、『りぼん』の付録をつまずくことなく組み立てられるわけもなく、いけ好かない奴、と思っていた。付録が好きになったのは、『りぼん』の連載作品に熱中するようになってからだ。好きな作品のキャラクターのイラストが付録に描かれているから、というよりも、『りぼん』に掲載されている漫画すべてをすみずみまで読み尽くしてしまった後のガッカリ感を、付録が解消してくれていた。ああ、まだ、付録があったぞ、と。“今月の『りぼん』を楽しむ時間”が終わらないように、組み立てるのが難しい複雑な付録も、じっくりと山折り、谷折りした。

 『りぼんの付録 全部カタログ ~少女漫画誌60年の歴史~』(烏兎沼佳代/集英社)は、『りぼん』の創刊号から60年間のすべての付録を紹介している本である。本書が執筆された時点で、創刊から1号もかかさず付録がつき、全720号、総数は約3700点とのこと。漫画の種類やヒット作の多さでは、少女漫画は少年漫画に敵わない。『ジャンプ』の作品と『りぼん』の作品では、前者のほうが認知度が高いだろう。だが、「ふろく」だけは少女漫画誌特有の文化であり、今なお脈々と受け継がれている。

「“もったいなくて使えなかった”ほかのことばをあれこれさがしたのですが、やっぱりこれしか言いようがありません」の文言で始まるレターセット類に、シール、トランプ、ノート、バッグなどの人気付録を写真つきで紹介。付録の世界で脇役が多かったシールが、一躍トップポジションにいったきっかけとなった付録など、それぞれの歴史や解説についても読みごたえがある。

70年代の付録リスト。バッグにシールにノート、その後の時代で“目玉付録”と呼ばれるものはこの頃からあった

 そして、本書の価値をただならぬほどに上げているのは、なかなか本人の口から語られる言葉が表に出ることがないとされる、漫画家さんのロングインタビューだろう。昨今、SNSやブログで発信する漫画家さんは増えたが、それでも貴重であることに変わりない。それも、掲載されているのは吉住渉先生、一条ゆかり先生、竹本みつる先生、巴里夫先生。この、ほぼ全方位網羅っぷりよ。特に、吉住先生と一条先生は、それぞれ8ページにも渡って付録について語ってくれている。中でも、一条先生のタブーなき思い出話は必読。付録の「人気まんが家ディスクジョッキーレコード」のために「はーい、みなさんごきげんよう。あたし通称“ゆか”こと一条ゆかりでございます」とDJのように録音したのが一番嫌だった、という話に、金に目がくらんで『りぼん』でデビューしたものの、描きたいテーマが「背徳」と「ピカレスクロマン」だったため、小学生が対象の『りぼん』では書けなかった話。そして、大忙しのときに、さらに別冊付録の仕事を引き受けたのは、こういった本誌では描けないタブー作品に挑戦するチャンスだったから、とも。実際に、一条先生は、別冊付録でなんと“近親相姦モノ”と“レズビアン愛憎劇”を描いている。このことについて、「あのね、自分の本当にやりたいことを実現するためには、こちらから先に相手を満足させて黙らせることが大事なのよ」と一条先生。強い。

90年代になると紙製の組み立て型付録が増える

 ところで、本書を買ったら、自分の読んでいた年代の付録リストを眺め、作品を読んだことのある漫画家さんのインタビューを読み、あとは読まずに本棚へ、ではもったいないことも申し添えておきたい。筆者が『りぼん』を買っていたのは90年代だが、この本でほかの年代の付録を見るまで、「付録といえば紙の工作」、「付録のカレンダーと言えば人気作品のイラスト」と思っていた。だが、カレンダーを飾るのが山口百恵や美空ひばりなどの歌手が当たり前だった時代もあれば、皇族ご一家のアルバムが付録になったこともあるという。「90年代のりぼんのふろくは、まるで紙へ挑戦しているようでした」と著者の烏兎沼氏も書いているように、自分の思い浮かべる付録と、ほかの世代の思い浮かべる付録は思っている以上に違っている。その人の年齢によってまるで異なる“ふろく観”を、共通して好きだった『りぼん』で繋いでくれる、そんな役割も本書にはあるのだ。

取材・文=朝井麻由美