12色のクレヨンたちが代弁する世の労働者の声―絵本『クレヨンからのおねがい!』が人気

文芸・カルチャー

2015/8/7

 経営者、プロジェクトリーダー、監督業など…人を使う仕事は神経をすり減らす。コイツを重用すればアイツがしょげかえり、アイツに大役を任せれば誰かが陰で文句をこぼす。適材適所を心がけているつもりでも、他者からはどこか好みで人をつかっていると見られる。

 今、『クレヨンからのおねがい!』(ほるぷ出版)という絵本が人気だ。『ニューヨーク・タイムズ』のベストセラーリストで1位を獲得し、昨年9月の発売にもかかわらず、amazonの「絵本・児童書の売れ筋ランキング」で、いまだ上位につけている。12色のクレヨンたちが、それぞれ「働かせすぎだ」「もっと使ってほしい」などと、ケビン少年に手紙で訴えるユニークな作品である。「青少年読書感想文全国コンクール」小学校低学年の部(1、2年生)の課題図書として学校の図書室などにも置かれているので、小学生の子どもをもつ親なら知っているかもしれない。

 クレヨンたちはまるで「人気者なのはいいけれど忙しすぎる」「もっと活躍したい」「自分のほうが、この仕事に向いている」など、実社会の労働者の声を代弁しているかのようだ。さて、あなたなら経営者として、12人の訴えをどのように捉え、どのように個性を生かすだろうか。クレヨンたちの声をごく簡単に紹介しよう(※それぞれ矢印以後は「部下の声」に意訳してみたもの)。

【あか】
消防車、イチゴ、ハート…働かせすぎ。祝日のクリスマスだってサンタクロースを描かせる。
(→休みをくれ)

【むらさき】
せっかく美しい色なのに、線からはみ出して描くから台無し。
(→せっかくの良い仕事を台無しにするな)

【おうどいろ】
スズメや小麦以外にも描けるものがいろいろあるのに…。
(→大きな仕事をやらせろ)

【はいいろ】
好きなゾウ、でっかいサイ、巨大なカバを描くのはいいんだけど、もうくたくた。
(→ノルマが重すぎる)

【しろ】
白い紙だと、私がどこにいるか気づいてもらえないんですが…。
(→私の仕事、意味あんの?)

【くろ】
自分より目立つクレヨンたちのために線を引くのに飽きちゃいました。
(→僕に主役をさせてみろ)

【みどり】
ワニ、恐竜、カエル…いろいろ描いてくれてありがとう。
(→やり甲斐あって幸せ)

【きいろ】
僕こそが、おひさまの色。
(→あの顧客の担当は僕が適任)

【だいだいいろ】
私こそが、おひさまの色。
(→私が適任だって)

【あお】
広い海、みずうみ、川、青空、雨…体がとても小さくならないか心配。
(→最近よくゲッソリしてきたと言われるんですが…)

【ももいろ】
一年に一度は使って。
(→仕事ちょうだい)

【うすだいだい】
着ていた紙をはがしてすっぽんぽんだから恥ずかしい。
(→デスクが無くなっているんですがこれは)

 自分勝手に主張するクレヨンたちだが、ケビン少年はみんながハッピーになれる解決策を思いつく。世の労働者は働きすぎだ。一人ひとりの声に耳を傾け、個性を生かすことができるリーダーが、本書を読んだ子どもたちから誕生することを望みたい。

文=ルートつつみ