ゲーム開発にも構造改革を! 日本のゲームメーカーに今必要なこととは?

エンタメ

2015/8/9

 日本のゲーム業界が窮地に立たされている。みずほ銀行のまとめた2014年度のみずほ産業調査「コンテンツ産業の展望—コンテンツ産業の更なる発展のために—」によると、日本国内のコンシューマ(家庭用ゲーム機)ゲームの市場は2012年に4,857億円で、5年連続で減少している。2012年のコンシューマゲームソフトの海外輸出額は2,041億円で、2008年の7,230億円の約1/3まで減少しており、世界市場における競争力低下が続いているという。

 その理由は、PCゲーム開発に特化した欧米メーカーでは3Dグラフィックス技術やオンライン技術が発展し、3Dグラフィックスを駆使したFPS(ファーストパーソーンシューティング)や戦略シミュレーションゲームなどを好む海外ユーザーと、アニメーションを用いたロールプレイングゲームやアクションゲームを好む日本ユーザーとで差が生じ、日本メーカーの海外進出の妨げになっているからだ。この現状を打破するために今の日本のゲームメーカーには、新しいゲームデザインの創造が求められている。『中ヒットに導くゲームデザイン アイデアからチームマネジメントまで失敗しないためのプロジェクト設計』(Tracy Fullerton:著、加藤諒:編/ボーンデジタル)には、南カリフォルニア大学ゲームデザイナー養成コースで教鞭を取ってきた著者によるゲーム開発で失敗しないためのヒントが詰まっている。

ゲームデザイナーはプレイヤーの擁護者であれ

 著者は、まず「プレイヤー視点」の重要性を語っている。日本のゲーム開発の問題で挙げられるのが「プレイテストの甘さ」だ。プレイテストとは一般プレイヤーに試作品をプレイしてもらい、ゲーム評価を得ることである。MicrosoftGamesStudioは『Halo3』の開発では600人以上のテスターを呼んで3000時間以上のプレイテストを行い、ゲームのなにを面白いと感じたか、どこにストレスを感じたか、どこに興味を持ったかなどテスターに詳細な聞き取りを重ねたという。

 ゲーム開発に関して日本はトップダウン方式で行ってきた。決定権を握るプロデューサーやディレクターの独断で機能が決まってしまったり、下請けメーカーなどはクライアントから渡された仕様書どおりにゲームを作るしかなかったりと辛い理由もある。プレイテストの検証が不十分だと、ユーザーが購入して実際にプレイするまで、ゲームバランスが崩壊していたり、極端に難易度が高かったり、インターフェースが使いにくかったりと問題が残ってしまう。

 ゲームデザイナーは、グラフィックやストーリー、新機能の追加などに意識をとらわれて、しばしばゲームを本当に素晴らしいものにするのはプレイ体験であることを忘れてしまうのだという。そうならないためにゲーム開発の初期からプレイテストを繰り返し、テスト評価をフィードバックしていく「プレイ中心アプローチ」を提唱している。

ゲームはどうして「面白い」のか?

 ゲームをしたプレイヤーはどうすれば「面白い」と感じるのか。プレイテストで重要になる「面白さ」はどうやって評価すればいいのだろうか。著者はいくつかの例として、チャレンジさせること、目標を達成させること、スキルを身につけさせること、勝利のために様々なパターンを用意すること、プレイヤーたちに対戦と交流をさせること、コレクションをさせること、現実ではできない疑似体験を与えることなどを挙げている。

 反面、ゲームをつまらなくさせる要因について、達成困難な障害を与えたり、状況を長く停滞させたり、ランダム要素が大きなウェイトを占めていたりすることは、プレイヤーの満足度を下げるために避けるべきだとも言っている。

 海外のユーザーがよく口にするのは「日本のゲームはプレイ時間が長い」という不満だ。RPGなどはクリアまで100時間を超すものも多く、ストーリーが一本道で自由度が無かったり、ランダムでモンスターから獲得できるレアアイテムをゲットするために、単調な戦闘の繰り返しを求められるとゲームがただの作業になってしまい飽きも早い。そんなに長くゲームをやっていられないから、RPGより短いプレイ時間で繰り返し遊べるFPSがいいのだという。

ゲームデザイナーだけがゲームを作るのではない

 またチームマネジメントについて、マーケティングチームやプロデューサーなどの一部のパブリッシャーだけがゲームデザインを支配するのではなく、プログラマーやシナリオライター、グラフィックデザイナーなどの開発現場に深く携わるディベロッパーにこそ責任と決定権を与え、全員がゲームデザインに寄与できる体制を作り上げるべきだと述べている。

 本書ではその他にもマーケティングの仕方、ゲーム開発をビジネスとして考える上で必要なノウハウのすべてが詰まった総合的なゲーム開発の研究書だ。ゲームデザイナーだけでなく、ゲーム開発に携わるすべての人が読んで欲しい一冊だ。

 日本のゲームデザイナーにも優れた技術力や独創的な発想力はある。しかし日本人の職人にありがちな「作るのは上手いが、売るのは下手」という状況に陥っているように思う。ゲームの根本となるゲームデザインから国際競争力を鍛え、再び「ゲーム先進国」としての日本のゲームを世界中の人々に見せて欲しい。

文=愛咲優詩