“毒親”に悩む男性は少ない!?『母がしんどい』×『ゆがみちゃん』、話題の毒親マンガ家対談

コミックエッセイ

2015/8/11

 子どもにとって害となる親を指して“毒親”と呼ぶようになった昨今――。2012年には毒母との過去を描いた『母がしんどい』(田房永子)が発表され、毒親という存在が浸透しはじめている。そんな中、自身の毒家族との壮絶な体験をネット上で綴ったマンガ『ゆがみちゃん』(原わた)が書籍化され、話題を集めている。今回、『母がしんどい』の作者・田房永子さんと『ゆがみちゃん』の作者・原わたさんの対談が実現した。

原わた
漫画家。webコンテンツ「note」で連載していた、実体験にもとづいて毒家族から脱出するまでの戦いを描いた『ゆがみちゃん』が、ネットで多くの共感を得る。2015年7月には同作を書籍化した『ゆがみちゃん』が発売された。noteでは、ゆがみちゃん本編以外にも、映画やドラマアニメを“毒家族”視点でレビューする「毒レビュー」を連載中。

田房永子
漫画家・ノンフィクションライター。母との壮絶な過去を題材に描いた漫画『母がしんどい』が注目を浴び、その後も『うちの母ってヘンですか?』など、“毒親”関連の漫画を手がける。一方で、『ママだって人間』では、自身の妊娠体験を漫画にした。現在は、『キレる私をやめたい』を漫画雑誌『本当にあった愉快な話』にて連載中。

――お二人がお会いするのは今回が初めてとのことですが、お互いの作品を読んでの第一印象はいかがでしたか?

田房永子さん(以下、田房):『ゆがみちゃん』はウェブで話題になっていたし、知っていました。単行本になって改めて読ませていただいて、主人公のゆがみちゃんのターニングポイント的なことに自分の漫画がからんでいるっていうシーンが、やっぱり自分としては衝撃でした。『母がしんどい』を読んだ人から「意識が変わりました」とか「書いてくれてありがとう」っていうのはたくさん言われるんですが、その瞬間をこうして漫画で見ることができた、というのは、本当に嬉しいし、こそばゆいような感じ……感動しました。

原わたさん(以下、原):ウェブでご覧頂いていたとは…ありがとうございます!

田房:作品もそうですが、原さんに対しては“仲間”という意識は今もずっと持ってます。親のことで悩んでる人はみんな仲間です。

:私は、何度も『母がしんどい』を読みました。田房さんのおかげでこの本が出せたと言っていいくらいです。田房さんのマンガや文章からは、これまでの価値観を一掃してアップデートしていく威力を感じていて、そういう意味でも『母がしんどい』にすごく影響を受けてると思います。昨日は緊張して眠れませんでした(笑)。

田房:恐縮です……! 実は『母がしんどい』を描こうと思ったキッカケは、ネットの毒親体験談なんです。私や原さんのように毒親がいる人達の体験談を読んでると、すっごく癒されるんですよね。「私も誰かに読んでもらいたい。この人たちの仲間に入りたい」というのが、原動力でした。

:私の場合は『母がしんどい』を読んで癒やされたので、もしかしたら私の体験談を読んで、同じように新たなステップへ踏み出せる人がいるかも、と思ったのがはじまりです。私自身、ウェブに助けられたことが多い人生だったこともあって、子どもも読めるウェブで発信しました。昔から趣味でマンガを描いたりしてたんですけど、初めて完結できたのが『ゆがみちゃん』。何度か挫けそうになりましたが、必要とする人に届けたい気持ちでなんとか完走できました。

――共通体験の“癒し”がキーワードなんですね。実際、作品を発表されてから読者の反応はいかがでしたか?

田房:『母がしんどい』を出した2012年は、今ほど“毒親”が認知されてなかった時期なんですよね。こういうジャンルのコミックエッセイもなかったから、「こんなことで親を捨てるなんて甘い!」みたいな批判がたくさん来ると思ってたんです。でも、全然そんなことなく、共感してくれる読者がすごく多かったのが印象的でした。

:私も共感してくれる人がたくさんいましたね。みなさんの反響をみていると「同じだ!」って思うことが本当にいっぱいあるんですよ。

田房:そうそう、私のところにも「親にこう言われましたセリフ集」みたいなメールが読者さんから送られてきたんだけど、私が母から言われたのと一語一句同じ?って感じのセリフがバーっと書いてあったんです。そういう人が一人だけじゃなくて、大勢いるんです。“毒親”と子どもから呼ばれる人たちの吐いてきたセリフがまったく同じっていうのは単純に不思議だし、これは個人的な問題では済まされない社会的な問題なのかもしれないって思うようになりました。

:みんな、判を押したように同じことを言うんですよね……! 私自身の経験とみなさんの反響をみてると、一貫して子どもの「NO」を受け入れないのが毒親の特徴のように思います。そもそも、子どもに人格があることを認めていないんです。アナタは私が産んだんだから、私の言うとおりにしないさい、みたいなところがあるんでしょうね。

――そのほかに、何か共通点はありますか?

:田房さんも『うちの母ってヘンですか?』で書かれてましたが、毒親に苦しんでるのは女性が圧倒的に多くて、男性にはあまりいないっていうのは実感してます。感想をくれるのも女性のほうがとても多い。

田房:私の読者さんも9.5割くらいが女性ですね。男性よりも女性が多いのは最大の特徴かも。それに、「私だけがいじめられて、お兄ちゃんや弟は可愛がられてた」っていう人がすごく多いんですよね。その兄や弟がニートや引きこもりになっている、っていうのも、すごくよく聞きます。これは、『ゆがみちゃん』にも共通してますよね?

:そうですね。うちもですが、男きょうだいが優遇されるケースは多い気がします。

田房:かたや、子育て系の取材をしていると、「正直、娘より息子のほうがかわいい」っていうママの本音を聞くことがあるんです。私は娘一人しかいないからわからないけど、話を聞いてると、そういうこともあるんだろうなと思う。人類の一つのパターンみたいなものという感じです。こういう話では「父親(夫)」が登場しないのも特徴的だし。
 一方、教育者主催のセミナーとか育児本では、“子どもをニートにさせないためには”とか“毒親にならないために”とかがよくうたわれていて、「母親が表向きの言動を変えればなんとかなる」みたいなことになってる。だけど私は、この「母親は女児より男児のほうがかわいいと思いやすい」っていう根っこの問題なんじゃないかと思うんですよね。教育者の人たちはそっちを研究したほうが手っ取り早いんじゃないかと思うときがあります。大きなお世話なんですけど(笑)。

:田房さんは毒親作品を通して、そういう男女の問題にまで切り込んでるのが、本当にすごいなって思ってて……。私は、男女の問題についてそんなに意識してなかったけど「兄と比較されて、すごくイヤな思いをした」と発言をしたら、男性の方から「女性はすぐ親のこと悪く言うよな」って言われたりして、もしかして男性は甘やかされる方が多いから、毒親という発想がないのかも? と、考えるようになりましたね。そういえば、田房さんの『うちの母ってヘンですか?』に登場する男性も「母親のこと別に全然嫌じゃないよ」って感じで、あっさり終わってましたよね。

田房:女の人とは「私も同じ~」「いやだよね~ つらかったよね~」って話になったらそのまま盛り上がって終わるんだけど、男性は「同じだね~」ってとこまでいっても、「ん~、まあそんなつらくもなかった。お母さんは俺を愛してただけだし」みたいな感じでバツーンってシャッター降ろされちゃうのはよくあります。

:母親が毒だなんて思いたくない! みたいな感じですか?

田房:そういうのもあるのかもしれないですね。あと、「女々しい」みたいな感じに思うのかな。

:たしかに『ゆがみちゃん』がネットで叩かれているときに「そんなの俺のほうがツラいよ。でも、親だから感謝しなきゃダメじゃん」みたいな、男性からの批判があったんですよね。もしかしたら、「親のことを悪く言っちゃいけない」っていう意識が、女性よりも強く働いてるのかも。

田房:男も、女とは違った抑圧がすごくあるんでしょうね。「男は泣くな」みたいなのも未だにあるし、思ってることを口に出しちゃいけないとか感情を感じてはいけないとか、無意識に自分で禁止してる人も多いと思います。

:そうですね。声に出したとしても、「いろいろ言ったけど、親には感謝してる」っていう和解の道に進むというか。男性の場合、毒親から逃げることは少ない印象があります。

田房:「母は僕を愛していた」っていうのが軸にあるからかな。私とかは「マジでなんなのコイツ?」ってとこから始まって、「じゃあ、お母さんは私を愛してたの愛してなかったの」ってのは途中で出てきましたけど、そこが着地点にはならないんですよね。

――男性には “毒親”と向き合わない傾向があるんでしょうか?

:どちらかといえば、向き合うキッカケがないのかも。ただ、なかには毒親本に対して過剰に反応する人がいるんですよ。本当に興味がない人は「へー! 大変そう!」って感想だけでスーッと流れていくんですけど、何かしら心当たりがある人ほど大きい声で「違う!」って言ってしまうのかな、と思います。

田房:どっかで引っかかってるのかもしれないですね。

――毒親から男女の問題まで踏み込んできましたが、最後に毒親に悩む読者に解毒のためのアドバイスをいただければ。

田房:私の場合は、とにかく同じ境遇の人に会いました。毒親で悩んでいる人の自助グループに参加したりセラピーに通ったりして、とにかく毒親を持つ人に会うようにしたんです。同じような体験をした先輩に「母親が亡くなってからのほうがスッキリしてるよ」と言われたときはホッとしました。

:私は、自分と他人の境界線を意識するようにしています。「親は大切にしろ」っていう世間の声と自分の間にもです。そう思えるキッカケになったのが『母がしんどい』の中にある「自分の中に100%味方の小さい自分がいる」っていう表現。このページを読んだときに、目が覚めたんです。田房さんの“世間が親の味方なら、自分で自分を救い出さなきゃいけない”という表現は、私にとって自分と他人の間に境界線を引くことかな、と思ってます。

田房:自分が思っていることを自分自身で否定したり抑圧してると、知らない内に他人を攻撃したりしちゃいますからね。小さい頃から自由な発想や素直な気持ちを禁止されて育つと、大人になっても自分自身に“禁止”しつづけるのが癖になっちゃう。この禁止を解くことが、解毒につながると思います。「親を大切に」みたいな世間の声も禁止を解くのを邪魔する存在なんだけど、自分が生きていく上で世間っていうのは完全に無視できるものでもない。だからいつも世間に沿いながら自分に優しくする、という難しい作業なんだけど、生きるってそういうことなのかなっていう気持ちになってきました。

:世間の声で言えば、テレビドラマで毒親を扱っても、結局「親子だから」で解決しちゃう番組が未だに多いのが気になっています。そんな魔法は存在しないってことを、たとえばマンガを通して少しずつ広めていかないと、根本的な解決にはならないですよね。

――たしかに、“家族はいいもの”的なドラマは多いですよね。某家族アニメが放送されている日曜6時枠で『ゆがみちゃん』と『母がしんどい』のアニメを流しましょう!

:各方面から批判が来る(笑)!

田房:それは大革命ですね。

――でも、救われる子どもたちがきっといるはずですよ。本日はお二人ともありがとうございました!

文=不動明子(清談社)

 

<おまけ>

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