大人だからできる英語力勉強法! 脳科学者が明かす上達への近道とは?

ビジネス

更新日:2017/1/10

 中学卒業レベルの英語で、ある程度の日常会話はできる。そう言われても、英語が口からついて出てこない…。仕事でスムーズなやり取りができるようになりたいけれど、社会人になってから上達するのは難しいだろう…。そんな英語上達を考えながら諦めモードの大人に“処方せん”となる本がある。

 加藤俊徳氏の『脳科学的に正しい英語学習法』(KADOKAWA 中経出版)だ。加藤氏は脳科学者で、英語が堪能だが、もともと英語が大のニガテだったという。大学入学試験は英語が原因で浪人し、大学に入ってからも英語の教材を買いこんで勉強したり、英会話学校に通ったりしたものの、まったくと言っていいほど伸びなかったため、語学コンプレックスのかたまりだったそう。

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 ところが、27歳のときにMRI(磁気共鳴画像)の研究をするため、そこからわずか1年で英語論文を発表できるまでに急成長。当時、まず気がついたのは、「自分のよく知っている分野」であれば、基礎知識もあるため、英語が入ってきやすいということだった。本格的にアメリカでMRIを研究した加藤氏は、脳のしくみから語学が上達するメソッドを見出すように。そのノウハウを著したのが本書だ。

大人はチャンスのとき!人間の脳が大きく成長するのは20代〜40代。

 胎児から高齢者まで1万人を超える人の脳をMRIで診てきた加藤氏によると、人間の脳が大きく成長して個性を伸ばすのは20代〜40代。この時期に語学力をつけるのは、理にかなっているのだ。

 日本では語学は子どものうちに身につけるのが良いと考える人のほうが多いが、それについても脳科学的にみれば、いくらか危ういところがあると指摘する。

 幼い頃に母国語以外の外国語を身につけようとすると、理解をつかさどる脳の発達が遅れるリスクがあるのだそう。一方、大人は脳のそうした部分も十分に発達している。あとは、脳機能の特性やそれぞれの個性を生かしながら、効率よく習得すればいい。

 脳の働きを最大限に活用して学習する。そのしくみについて、加藤氏はわかりやすく脳のエリアごとに「脳番地」と名づけ、大まかに8つの系統に分けて解説する。

 8つの系統とは、理解系、伝達系、思考系、感情系、運動系、聴覚系、視覚系、記憶系に分けられる。語学習得のカギは、伝達系。コミュニケーションを通じて意思疎通を行う脳番地なのだが、これを軸に脳番地と脳番地をつなぐ“ネットワーク”を強化する。このネットワークは鍛えるほど発達するのだそうだ。

 どういうことかと言うと、例えば、感情豊かに話せば、それは感情系から伝達系へのネットワークが使用され、論理的に話せば、理解系から伝達系へのネットワークを鍛えることになる。口を動かして話すことは、運動系。覚えたはずの英単語が口から出てこないのは、記憶系から運動系のネットワークが弱いから。そうならないよう、覚えた段階で口に出すなどの工夫をするといいそうだ。

 そもそも記憶力に難がある…と考える人も方法はちゃんとある。記憶力を高めるには、記憶系脳番地を意識して使えば、鍛えられるのだ。例えば、長い英単語を覚える。また、無意味なフレーズや外国人の名前など、覚えるのにちょっと大変だなというものを覚えれば、筋トレのように記憶系をビルドアップしてくれる。

視覚系? 聴覚系? 自分のタイプを知って、さらに効率アップ

 そもそもなぜ英語を学びたいのか。どう使えるようになりたいのか。当たり前だが、それによって学習法は異なる。英語といえば、受験英語が思い出されるが、それらの復習をしたとしても英会話ができるようにはならないし、仕事で使うフレーズも蓄積されない。

 日常会話ができるようになりたいのであれば、前述したように感情豊かに、たくさん口を動かすなど、伝達系に加えて、感情系や運動系などの脳番地を刺激しながらのトレーニングが効果的だし、仕事でスムーズなやり取りが必要なら、仕事でよく使う単語やフレーズを覚えていくのが近道になる。

 加えて、人の脳はそれぞれ発達している程度が異なり、視覚系と聴覚系のどちらかが得意なタイプに分かれるという。例えば、スポーツやゲームが好きで、観察することが得意、文字や数字は映像で覚えるという人は視覚系。また、人の話を聞くのが好きで、音楽が好き、文字や数字を口ずさんで覚えるという人は聴覚系。

 それぞれの得意分野を生かして学べば、さらに効率は上がる。例えば、語彙力を増やす場合も、視覚系の人は書いて覚え、聴覚系の人は声に出して覚えるのが早いといった具合に。

 興味深いのは、口べたな人は英語でも流暢には話せないため、まずは日本語でスピーチを練習するといいということ。というのも、スピーキングアップには聴覚系と伝達系の番地をつなぐ「フォノロジカルループ」というネットワークの強化が不可欠。日本語でも英語でも同じように使われるので、そもそも上手く話せない人はこのルートが弱いということらしい。

 なりたい自分になった姿を想像してモチベーションを上げるのも大切なポイント。やらされている感のある学習は語学力アップのカギとなる伝達系があまり働かないためだ。自分が興味を覚えること、好きなことと絡めると、脳は活発にいろんな番地が働くので、自然とネットワークも盛んになる。

 映画が好きな人なら、お気に入りの映画を徹底活用するのがオススメ。脳を喜ばせるためには、自分が面白いと思うものを“教材”にするのが一番だからだ。楽しみながら自分の必要な英語を効率よく身につけてみてはいかが。大人の脳は、短期間でも劇的に進化できるのだから。

文=松山ようこ